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2019年1月 6日 (日)

株券が発行されていない株式に対する強制執行手続で配当表記載の債権者の配当額に相当する金額が供託され、その支払委託がされる前に、債務者が破産手続開始決定を受けた場合

最高裁H30.4.18      
 
<事案>
執行裁判所が、株券が発行されていない株式に対する差押命令に係る強制執行の手続が破産法42条2項本文により破産財団に対してはその効力を失うことを前提として、職権により前記差押命令を取り消す旨の決定⇒前記強制執行手続に同項本分の適用があるか否かが争われた。

破産法42条2項本文による失効する強制執行手続等は、破産手続開始の決定時に係属中のもの(未だ終了していないもの)に限られる⇒前記強制執行手続が債務者に対する破産手続開始の決定時に既に終了しているものといえるか否かが問題。
 
<事実>
債権者であるXは、平成27年12月、債務承認及び弁済契約公正証書の執行力ある正本に基づき、債務者であるAに対する貸金返還債務履行請求権等を請求債権とする株式差押命令申立て
⇒A保有の株式(「本件株式」)に対する差押命令

Xのほかに3名の債権者(B、C、D)もそれぞれ本件株式に対する差押命令を得てろ、債権者Bに関しては、Bから請求債権を譲り受けたB’が債権者の地位を承継。 
売却命令による売却⇒平成28年11月、本件株式の売却代金(8315万円)について開かれた配当期日で、配当表に記載されたX及びB’の配当金につき、Cから異議の申出があり、所定の期間内にX及びB’に対する配当異議の訴えが提起

執行裁判所は、配当異議の申出のない部分につき配当を実施した上、X及びB’の配当額に相当する部分については、執行裁判所の裁判所書記官が前記配当額に相当する金額の供託(配当留保供託)をした。

Aは、前記供託の事由が消滅する前の平成29年1月11日、破産手続開始の決定⇒同月13日、その破産管財人が執行裁判所に本件差押命令の取消しを求める旨の上申書。
 
<規定>
破産法 第42条(他の手続の失効等)
破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産に対する強制執行、仮差押え、仮処分、一般の先取特権の実行、企業担保権の実行又は外国租税滞納処分で、破産債権若しくは財団債権に基づくもの又は破産債権若しくは財団債権を被担保債権とするものは、することができない。
2 前項に規定する場合には、同項に規定する強制執行、仮差押え、仮処分、一般の先取特権の実行及び企業担保権の実行の手続並びに外国租税滞納処分で、破産財団に属する財産に対して既にされているものは、破産財団に対してはその効力を失う。ただし、同項に規定する強制執行又は一般の先取特権の実行(以下この条において「強制執行又は先取特権の実行」という。)の手続については、破産管財人において破産財団のためにその手続を続行することを妨げない。
 
<原々審>
平成29年1月16日、職権により本件差押命令の取消しを求める旨決定。 
   
Xが執行抗告
 
<原審>
本件差押命令に係る強制執行手続には破産法42条2項本文の適用がある
⇒執行裁判所は職権により本件差押命令を取り消すことができる
⇒執行抗告を棄却 
   
Xが許可抗告
 
<判断>
株券未発行株式に対する強制執行の手続において、当該株式につき売却命令による売却がされた後、配当表記載の債権者の配当額について配当異議の訴えが提起されたために前記配当額に相当する金銭の供託がされた場合において、
その供託の事由が消滅して供託金の支払委託がされるまでに債務者が破産手続開始の決定を受けたときは、当該強制執行の手続につき、破産法42条2項本文の適用がある。 
 
<解説> 
●破産法24条2項:
同条1項に規定する強制執行の手続で、破産財団に属する財産に対して既にされているものは、破産財団に対してはその効力を失う旨を規定。

破産債権者及び財団債権者間の公平・平等及び破産手続の円滑な進行を確保するという同条1項と同様の趣旨から、破産手続開始の決定があった場合における個別執行手続の失効を定めたもの。

同条2項本文により失効するのは、破産手続開始の決定時に係属中の個別執行手続に限られ、既に終了した個別執行手続に同項本文の適用はない。 

個別執行手続の失効後、破産管財人が形式的に残存する執行処分の取消しを求めることができるか:
近時の有力説と実務:
破産管財人の上申がある場合には、破産手続開始の決定がされたことを理由として執行処分(差押命令等)を取り消すことを認めている。
第三債務者が供託⇒執行裁判所の支払委託の方法により、破産管財人が供託金を受け取ることができる
 
●一般に、個々の強制執行手続は、その手続の最終段階に当たる所定の行為が完結した時点に終了すると解されている。
債権強制執行手続において売却命令に基づく債権の換価⇒配当手続が終了した時(民執法161条、166条1項2号)に終了。 
 
●株券未発行株式に対する強制執行手続(売却命令による換価が行われる場合):
①差押え⇒②差押えに係る株式の換価⇒③売却代金の配当等という各段階を順次経て進行する手続。
③の売却代金の配当等においては、配当の実施がされた時点が「開始された手続の最終段階に当たる所定の行為が完結した時点」。

民執法は、配当異議の申出がされた場合の配当手続について、
①配当異議の申出のない部分⇒その限度で配当を実施して終了させる(民執法89条2項)一方、
②配当異議の申出に係る部分⇒配当異議の訴えの提起を条件に、その配当等の額に相当する金銭を供託させ(配当留保供託。民執法91条1項)、その供託の事由が消滅する、すなわち配当異議の訴えの結論が出るのを待って当該金銭(供託金)の追加配当を実施(民執法92条1項)。

配当留保供託は、強制執行の1つの段階として、執行目的物の売却代金の管理と権利者への払渡しとを供託手続により行うもの(執行供託)。

最高裁H27.10..27:
担保不動産競売の手続で配当留保供託がされた後、配当表記載のとおりに追加配当が実施される場合における供託金の充当方法に関し、法定充当の時期を供託金の支払委託(民執規則173条1項、61条、供託規則30条)がされた時点を判示。

前記の場合における執行裁判所による配当手続が当該支払委託によって終了することを前提とするものであり、株券未発行株式に対する強制執行手続における配当手続に関しても同様に解することができる。 
 
●Xの主張:
株券未発行株式に対する強制執行手続が形式的には終了していないとしても、実質的には、換価財産が換価手続の完了時点で差押債務者の一般財産から分離されたとして、当該強制執行手続が差押債権者との関係では既に終了したとみるべき。

売却命令による売却がされた場合の配当等を受けるべき債権者が、売却命令により執行官が売得金の交付を受けた時までに差押え、仮差押えの執行又は配当要求をした債権者に限られており(民執法167条1項、165条3号)、
そのような定めが設けられた趣旨として、差押えの目的物が金銭に転化し、債務者の一般財産から分離して配当財産として特定される時点をもって配当要求の終期としたとの説明。
vs.
民執法は、いわゆる優先主義(執行手続が開始された場合に、申立竿権者に優先的権利を与える主義)を採用せず、債権者平等主義(執行手続が開始された場合には、申立債権者か否かを問わず、債権者を平等に取り扱おうとする主義)を基本としたものとされており、
民執法165条は、その文言等に照らし、配当手続において配当等を受けるべき債権者の範囲を画する基準を定めたにとどまり、実体法上、換価財産からは配当等を受けるべき債権者のみが優先的に弁済を受けられるとすることまでは予定していない
民執法165条のみを根拠として、差押えに係る財産の換価手続が完了した場合に、換価財産が配当財団として差押債務者の一般財産から分離され、当該配当等を受けるべき債権者に帰属したものと解することはできない。 

判例時報2385

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