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2019年1月 8日 (火)

信用取引が違法な過当取引に当たるとされた事案

東京高裁H29.10.25      
 
<事案>
個人投資家であるXが、証券会社Y1及びY1の担当者2名(Y2、Y3)に対し、Y1において行っていた信用取引(本件信用取引)に係る損害賠償を求めた事案。
Xは歯科医師として歯科医院を開業。
Y1の担当者による訪問営業⇒Y1に取引口座を開設、平成21年5月から約2年半の期間にわたり本件信用取引⇒1億3466万円余の差引損が発生

①適合性原則違反、②実質一任売買、又は③過当取引に当たる違法なもの⇒不法行為に基づく損害賠償請求。
 
<原審>
Xの請求を一部認容(過失相殺6割)
 
<判断>
●過失相殺の点を除き(過失相殺7割)、原審の判断を是認。 
 
●適合性原則違反 
最高裁H17.7.14を参照。
信用取引はリスクが高く、その仕組みも特有のものがある。
but
Xの社会的地位や判断能力、投資経験、投資意向、Yらによる説明の程度等

Xが信用取引の仕組みやリスクを理解できず、およそ信用取引を自己の責任で行う適性を欠き、取引市場から排除されるべき者であったということはできない。

同原則違反には当たらない。
 
●一任勘定 
本件信用取引において、Xが自らの意思と判断により積極的に取引を行ったことはなく、Y1の担当者の意見に従うことがほとんどであった
but
Y1の担当者によって個々の取引や取引方法がXに無断で決定されたというものではない点を重視
本件信用取引が一任売買や実質一任売買に該当する違法なものであったとはいえない。
 
●過当取引 
顧客の投資経験、証券取引の知識、投資意向、財務状態等に照らし、銘柄数、取引回数、取引金額、手数料等において、社会的相当性を著しく逸脱した過当な取引を行わせたときは、当該行為は不法行為法上違法となると解するのが相当
①本件信用取引のほとんどが、Y1の担当者の提案によって行われたこと、
②X自らの意思と判断により積極的に注文や決済を行ったことがないこと
③Y1の担当者の提案の合理性やリスクについて、Xが十分に理解し検討した上で、取引について承諾を与えていたともいい難いこと

本件信用取引は、全体を通じて、Y1の担当者が主導したものとして、Yらの行為の違法性を肯定。
 
●損害 
差引額から配当金を控除した金額を損害

原審の認定に加え、
①Xには、投資者として当然行うべきであったリスク管理を行わなかった点において落ち度があり、
Y1の担当者に強く損害回復を迫ることでハイリスク・ハイリターンの取引を誘発し、自ら損害の拡大を招いた面があること、
③Y1との取引を開始した直後こそ数百万円規模の取引であったものの、1年もしない間に預託金を1億8900万円まで増額させ、少なくとも本件信用取引を開始した時点では、積極的な投資意向を有していたこと等

7割の過失相殺
 
<解説>
過当取引の判断基準:
①取引の過当性
②口座支配(証券会社等の取引の主導性)
③悪意性
の3要件があげられていたが、
本件では①②につき認定し、③については特段の言及なし。

①②から③が推定されることも多い。 

判例時報2385

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