違法な政務活動費の支出について、市長に返還請求をすることを求める住民訴訟
神戸地裁H30.4.11
<事案>
兵庫県尼崎市の住民である原告らが、同市議会の会派であるA及びB(「本件各会派」)が市から交付された政務活動費を会派が発行している広報紙(「本件各広報紙」)に係る支出に支出したところ、これが違法⇒市に対してその支出額に相当する金員の不当利得返還の義務を負うにもかかわらず、市の試行機関である被告(尼崎市長)がその行使を怠っている⇒地自法242条の2第1項4号に基づき、被告に対し、本件各会派に対して前記支出額に相当する金員及びこれに対する遅延損害金の支払を請求するよう求めた住民訴訟。
<争点>
本件各広報紙に係る費用に政務活動費を支出することが違法となるか。
<判断>
・・・・
当該広報紙の全体の趣旨、目的に加え、紙面における議員個人情報等の割合等を総合的に考慮し、
広報紙面が専ら会派活動報告等を内容とするものであった場合⇒その費用全額につき政務活動費の支出が許される
議員個人の広報目的が混在⇒議員個人情報等に相当する部分は目的外支出⇒かかった費用をその割合で按分した金額については、違法な支出となる。
各広報紙ごとにその記載内容から、会派活動報告等が記載されている面積と、議員個人情報等が記載されている面積をそれぞれ割り出し、
いずれの広報紙も専ら会派活動報告等を内容とするものではなく議員個人の広報目的が混在。
~
それぞれ掛った費用につき、議員個人情報等が記載されている面積比で按分した金額については目的外支出であって、不当利得返還請求権が発生。
<解説>
地自法100条14項は、政務活動費を充てることができる経費の範囲等については条例で定める旨規定しており、これを受けて各自治体がそれぞれ条例及び規則を制定し、同論点について争われた裁判例はいずれも条例及び規則の解釈適用という事例判断としての側面が強い
裁判例での判断手法:
広報紙の記載を、法令により支出が許可されている目的との合理的関連性が認められている部分と認められない部分に分け、
その割合等に基づき紙面全体の目的を判断し、
①後者が無視できるほどに少ない⇒全体として支出目的に沿った支出と評価。
②無視できない分量⇒それに応じた割合の返還請求を認める。
③専ら支出が認められない議員個人の宣伝等を目的とするもの⇒全額の返還を求める。
政務活動費は、地方議会の活性化を図る趣旨から、議員の調査活動の基盤を強化する等の目的で制度化されたもの⇒議員個人としての政治活動・選挙活動等に係る費用に支出することはできないというのが、地自法の姿勢。
判例時報2385
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