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2019年1月24日 (木)

障害者雇用枠の契約社員の障害等級が問題となった事案

東京地裁H30.3.14      
 
<事案>
障害者雇用枠の契約社員として就労しているXが、知的障害により、20歳に達した日に障害等級に該当する程度の障害の状態にあり、国年法(「法」)所定の障害基礎年金の支給要件を充足している⇒障害基礎年金の支給の裁定を請求⇒厚生労働大臣から、障害等級に該当する程度の障害の状況にあるとはいえないとして、障害基礎年金を支給しない旨の処分⇒同処分の取消しを求めた。 

<規定>
法30条の4第1項:
初診日において20歳未満であった者が障害認定日後の20歳に達した日又は20歳に達した日後の障害認定日(「基準日」)において障害等級に該当する程度の障がいの状態にあること障害基礎年金の支給要件とする。

法30条2項は、障害等級を障害の程度に応じて重度のものから1級及び2級とした上で、各級の障害の状態は政令で定めるものとし、これを受けた国年法施行令は、障害等級の各級の障害の状況につき、別表を定め、その上で、厚生労働大臣による障害等級の認定の基準として、「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」(「障害認定基準」)を定めている。
 
<争点>
Xの基準日における障害の状態が障害等級2級に該当するのか、具体的には、障害認定基準において、知的障害に関し、障害等級2級に該当する障害の状態の例示として挙げられている「知的障害があり、食事や身のまわりのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため、日常生活にあたって援助が必要なもの」に相当するかが争われた。 
 
<判断> 
障害等級2級に該当するかは、特段の事情がない限り、障害認定基準を参酌して判断すべきで、知的障害に関しては、前記の例示又はこれと同等程度の障害の状態にあると認められるか否かで判断するのが相当。

その際には、障害認定基準自体が定めるとおり、知能指数のみに着目することなく、日常生活の様々な場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断するべきであるし、
就労をしている者も援助や配慮の下で労働に従事していることが通常であることを踏まえ、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、
現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認した上で日常生活能力を判断
すべき。

判断の資料となる精神障害に係る所定の診断書の記載を踏まえ、日常生活能力の判定に当たっては、対象者が単独で生活することを仮定して判断すべき。
 
●Xから提出されている医師の診断書における日常生活能力の判定の各項目(適切な食事、身辺の清潔保持、金銭管理と買い物、通院と服薬、他人との意思伝達及び対人関係、身辺の安全保持及び危機対応、社会性の7項目)及びその程度の記載の相当性について、
Xから提出されている病歴状況申立書や、Xの母や中学校時代の担任教師の供述等の他の資料も踏まえて検討し、
前記診断書は、Xの日常生活の能力の判定のうち、いくつかの項目においては日常生活能力をやや過少に評価しているきらいがないではないが、全体的な記載内容としてはおおむね相当であり、その内実に照らせば、原告の日常生活能力の程度について、診断上の所定の選択項目のうち「(4) 知的障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。(たとえば、簡単な文字や数字は理解でき、保護的環境であれば単純作業は可能である。習慣化していることであれば言葉での指示を理解し、身辺生活についても部分的にできる程度)」を選択した前記診断書の判断は相当

判例時報2387

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