大崎事件の第三次請求即時抗告審決定
福岡高裁宮崎支部H30.3.12
<事案>
原審の再審開始決定⇒検察官の即時抗告⇒即時抗告を棄却
第一次再審第一審:再審開始の決定⇒即時抗告審:再審請求棄却⇒特別抗告審:即時抗告審を維持「なお、記録によれば、申立人提出に係る新証拠の明白性を否定して本件再審請求を棄却すべきものとして原判断は、正当として是認することができる
第二次再審:第一審、即時抗告、特別抗告も棄却
第三次再審請求
<原審>
「法医学鑑定」(A鑑定)⇒死因を頚部圧迫による窒息死と推定した①旧鑑定の証明力を減殺、
供述心理学鑑定(捜査官が録取したDの供述調書を鑑定資料として実施したB・C新鑑定)⇒Dの目撃供述の信用性判断においては慎重な判断をする必要があることを明らかに⇒D供述によって補強されていたF、Gらの供述の信用性評価に影響を与える可能性
~
新旧全証拠を用いて(FGHの各供述の信用性判断を改めて行うことを含めて)事実認定全体の再評価を行うもの。
<判断>
●検察官の即時抗告を棄却
B・C新鑑定(供述心理学鑑定)の明白性を肯定した原決定の判断は、何ら合理的根拠を示さない不合理な判断。
B・C新鑑定は、その鑑定手法及び鑑定内容も不合理⇒B・C新鑑定の明白性を否定。
A鑑定(法医学鑑定)につき、「頚部圧迫による窒息死であることを積極的に認定できる所見がない」という限度で肯定した原決定につき
A鑑定は①旧鑑定をいささかも左右しないのに、①旧鑑定の証明力を減殺したものと評価している点において不合理な判断。
●A鑑定の証明力につき、「『Kの死因につき窒息死と推定し、頚項部に作用した外力により窒息死したと想像した』とする①旧鑑定が誤りであり、『タオルで頚部を力いっぱい絞めて殺した』とする確定判決の認定事実とKの解剖所見は矛盾しており、Kの死因は転落事故等による出血性ショック死の可能性が高い」としたA鑑定の結論部分は、十分な信用性を有している。
A鑑定が旧証拠に及ぼす影響につき詳細に検討し、さらに、確定一審判決の心証形成の過程も具体的に検討して、
A鑑定が確定審において取り調べられた場合には、確定審におけるF、G、Hらの供述は、信用性を基礎付ける客観的根拠が喪われることにより、その信用性には重大な疑義が生じる。
⇒A鑑定の明白性を認める判断。
<解説>
本決定:
「新証拠の証明力評価」を先行させ、「新証拠が旧証拠に及ぼす影響」を検討し、「確定審の心証形成の過程」を確認した上で、新証拠が旧証拠に及ぼす影響が確定判決の事実認定にどのような影響を及ぼしたのかを検討。
第一次再審即時抗告審と同様「限定的再評価説」の流れに属する。
判例時報2382
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