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2018年12月30日 (日)

元厚労省の一部局であった国立研究開発法人と独立行政法人間の人事異動命令の違法性が争われた事案

大阪地裁H30.3.7      
 
<事案>
被告は厚労省の一部局が独立行政法人化され、その後に国立研究開発法人となった法人であり、
訴外A機構は、同じく厚労省の一部局が独立行政法人化されて設立された法人。
本件当時、被告もA機構も非公務員型の国立研究開発法人ないしは独立行政法人。

原告は、国家公務員として採用され、厚生事務官として、A機構の前身にあたる組織で働いていたが、A機構の独立行政法人化に伴ってA機構の職員となり、その後、被告で就労。
被告での就労はA機構kの指示によるものであったが、原告が被告で就労するに際しては、A機構では退職手続が、被告では採用手続がそれぞれ取られている。

被告は、原告に対し、A機構への人事異動命令に応じず、被告は、人事異動命令違反を理由として、原告を懲戒解雇⇒雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認やそれを前提とした賃金と賞与の支払を請求
 
<争点>
①被告からA機構への人事異動には、原告の同意が必要か
②被告からA機構への人事異動命令は、人事に関する権利を濫用したものといえるか
③本件の人事異動命令の拒否を理由とする懲戒解雇が懲戒処分として重きに失するといえるか 
 
<主張>
被告からA機構への人事異動はいわゆる転籍出向にあたる⇒原告の同意が必要原告が同意せず、人事異動に応じなかったことは懲戒事由にはあたらない
②仮に原告の同意が不要であるとしても、人事権の濫用として許されない
③仮に人事権の濫用にあたらないとしても、懲戒解雇は懲戒処分として重きに失し無効
 
<判断>
争点①について原告の主張を認めた。
念のためとして、争点②③についても判断し、いずれも原告の主張を認め、請求を認容。
 
<解説> 
●争点①について:
いわゆる転籍出向は、労働者の個別の同意が必要。(通説) 

●争点②について:
労契法 第14条(出向) 
使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。

判例:
配転命令について、配転命令権を有する使用者が、業務上の必要性に基づいて発した配転命令でも、労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるなど特段の事情がある場合は、当該配転命令は、権利の濫用として無効。(最高裁昭和61.7.14)

出向命令が権利の濫用として無効となるかどうかという点についても、同様の観点で判断されよう。

本件:
①原告の配偶者が、重篤な精神疾患を有し、主治医もわずかな環境変化でも症状の悪化に寄与しやすいので、転勤や部署異動も極力避けることが望ましい旨の判断
②原告が不当な理由でA機構への異動を拒んでいるとは認められない
③A機構への異動は、ジョブローテンションの一環であって、高度な必要性があるとまでは言い難い

本件人事異動は人事権の濫用にあたる。

本件では、A機構の方が通勤に便利であり、異動は、客観的にみれば原告の通勤負担を軽減させる側面があった。
本件は、人事異動という環境変化そのものを労働者の不利益と捉えたもので、やや特殊な事例。
 
●争点③について:
労契法 第15条(懲戒)
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

仮に、本件の人事異動が人事権を濫用したものといえなかったとしても、
①原告には、配偶者の精神疾患という人事異動に応じ難い理由があった
②原告が人事異動に応じることができな理由を再三にわたって説明している
③被告やA機構において、において、原告が人事異動に応じなければ著しい支障があるとまでは認め難い

人事異動に応じなかったことを理由とする懲戒解雇は、懲戒処分として重きに失するから無効。

判例時報2384

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