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2018年11月12日 (月)

小学校教諭が行った指導・叱責行為等に対する損害賠償請求(否定)

さいたま地裁熊谷支部H29.10.23      
 
<争点>
①Y1が、X1に対し、給食後の食器汚れを確認した際、X1の背中に触れたり授業時間中にルール違反の有無につき問い質したりした行為が、体罰に該当するか、るいは、懲戒行為や教育的指導の限界を逸脱するか。
②Y1が前訴においてXらの記入した連絡帳等を証拠提出した行為が、Xらのプライバシーを侵害する違法なものかどうか。
 
<規定>
学校教育法 第11条〔児童・生徒・学生の懲戒〕
校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない
 
<判断>
●Y1の行為の違法性(争点①) 
教諭の行為が学教法11条の懲戒権行使の範囲内にとどまる限り違法性を有しないが、同条ただし書の体罰に該当する場合は違法と評価される。

教諭の行為が懲戒権の行使として相当と認められる範囲内のものかどうか、あるいは体罰に該当するかどうかは、児童の年齢、性別、性格、成育過程、身体的状況、非行等の内容、懲戒の趣旨、教育的効果、身体的・精神的被害の大小・結果等を総合して、個別具体的に判断すべき。

①Y1がX1の背中に触れた行為:
X1に身体的被害も全く生じていない極めて軽微な身体的接触⇒体罰に該当しない。

②Y1が、授業時間中、X1が通学路を守って帰宅したのかどうかを確認した行為:
確認自体に問題はないとしても、事実確認が時間を要したことで、他の児童からの批判にさらされていたX1の精神的負担は大きくなっており、Y1において配慮に欠ける面があったこは否定できない
but
不相当とまではいえない。

③Y1が、授業時間中、X1が鉄棒の練習をしたのかどうかを確認した行為:
他の児童も立たされている状況で、Y1から厳しい口調で発言を求められたことで、X1は相当な精神的負担を受けたと推認でき、Y1において配慮に欠ける面があった
but
全体を通してもれば、X1が他の児童との円滑な人間関係を築くことができるようになり、X1の成長につながると期待されたものと理解でき、そのような懲戒の趣旨や教育的効果不相当とまではいえない
 
●前訴における証拠提出行為の違法性(争点②)
前訴においてY1が連絡帳等を証拠提出したことは、Xらのプライバシーを侵害するおそれがある。
but
訴訟行為については、たとえ相手方のプライバシーを侵害しうるものであったとしても、正当な訴訟活動の範囲内にとどまる限り、違法性を阻却し、
当該訴訟行為が、事件と全く関連性を有しない場合や、訴訟遂行上必要な範囲を超えて、著しく不適切な方法、態様で主張立証を行い、相手方のプライバシーを著しく侵害するような場合に限って、違法性が認められる。

Y1の行為は違法とは認められない。
 
<解説>
体罰相手方に対して肉体的苦痛を与えるものをいう(福岡地裁H8.3.9) 

体罰に該当しなくても、教諭の行為が懲戒行為や教育的指導の限界を逸脱する場合には、違法とされることがある。

本件では、Y1の言動が、X1に精神的苦痛を与え、人格の尊厳を傷つける、いわゆる言葉の暴力に当たるかが問題とされた。
本判決は、X1が相応の精神的負担を受けたことは認めつつも、
児童が受けた被害の程度だけでなく、
懲戒の趣旨や教育的効果なども総合的に考慮して判断
する立場。

判例時報2380

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