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2018年11月20日 (火)

相続財産の時効取得で占有が問題となった事案

大阪高裁H29.12.21      
 
<事案>
被相続人Pの相続人の1人であるXが、相続財産である本件土地につき、
①主位的に、本件遺産分割協議が成立した時から
②予備的に、本件土地上に自己所有の賃貸物件である本件建物を建築した時から
いずれも20年間自主占有したので時効取得
⇒他の共同相続人らに対し、所有権に基づく妨害排除請求権により、所有権移転登記手続を求めた。 
 
<原審>
本件遺産分割協議の成立を認めず、主位的請求を棄却。
予備的請求を認容。
 
<判断>
共同相続人の1人であるXの本件土地占有は他主占有にとどまる。
①遺産分割協議の成立が認められない
②Xが本件土地を単独で相続したと信じて疑わなかったとは認められない
③共有者の1人であるXが共有土地である本件土地を独占的に占有したからといって、それだけで、当然に自主占有になるものではなく、単独所有になったと信じて占有を始めたなどの自主占有事情が基礎付けられるものではない

取得時効の成立を否定し、原判決を取り消し、Xの請求を棄却。
 
<規定>
民法 第185条(占有の性質の変更)
権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、占有の性質は、変わらない。
 
<解説>
占有による所有の意思の有無:
占有取得の原因たる事実によって外形的客観的に定められるべき。(最高裁昭和45.6.18) 

共同相続人の1人が単独で相続財産全部を現実に占有:
他の共同相続人の持分については、権限の性質上客観的に所有の意思がない⇒占有者に単独所有者としての所有の意思はなく、一般的に他主占有と解されている

他主占有から自主占有に占有の性質を変更させるためには、民法185条の要件、
①「自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示」したことか、
②「新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始め」たこと
が必要。

●共同相続人の1人が、単独に相続したものと信じて疑わず、相続開始とともに相続財産を現実に占有し、その管理、使用を専行してその収益を独占し、公租公課も自己の名でその負担において納付してきており、これについて他の相続人が何ら関心を持たず、異議も述べなかった等の事情の下に、前記相続人にがその相続の時から相続財産につき単独所有者としての自主占有を取得したと判示した最高裁昭和47.9.8.

原審:本件建物建築時からの占有につき、同最高裁に依拠し、取得時効の成立を認めた。
vs.
本件は、遺産分割協議の成否が問題となったとおり、Xは、共同相続人の1人として共同相続した(他主占有)⇒自己が単独で相続したものと誤信した上で相続開始とともに現実に占有を開始したとはいえない

●Xの相続に始まる本件土地占有とは別に本件建物建築により新たに本件土地の占有を開始した旨の主張
vs.
①時効の起算点を任意に選択できるかという問題
②本件は、本件建物建築による本件土地占有によって新たに独自の所有の意思に基づく占有があったと認めるには困難な事例

判例時報2381

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