政務活動費等の違法な支出についての住民訴訟
神戸地裁H29.4.25
<事案>
兵庫県の住民であるXらが、県議会議員であったZ1~Z7が平成23年度から平成25年度までに県から交付を受けた政務調査費又は政務活動費を違法に支出⇒県に対してその支出額に相当する金額の損害賠償又は不当利得返還の義務を負うにもかかわらず、県の執行機関であるY(兵庫県議会事務局長)がその行使を怠っている⇒地自法242条の2第1項4号に基づき、Yに対しZらに前記支出額に相当する金員及び遅延損害金の支払を請求するよう求める住民訴訟。
(ZらはYに補助参加)
<判断>
●法令等の規定を指摘した上で、
県における政務活動費等は、前記各条例及び規程が定める使途にのみ使用されることが前提とされている。
⇒
政務活動費等の交付を受けた議員が、これを前記各使途の基準に適合しない使途に充てた場合は、県に対し、これに相当する額の不当利得返還の義務を負う。
前記条例等が定める基準に適合しない使途に充てたことにつき故意又は過失ある場合は、県に対しこれに相当する額の損害賠償の義務を負う。
兵庫県議会議長が作成している、政務活動費等に係る請求、交付、使途規準、収支報告書の提出などの一連の手続を勧める際のマニュアルである手引は、交付された政務活動費等が使途規準に適合する使途に充てられることを確保するとともに、その使途の透明性を確保することをその趣旨とするものであり、
その内容も合理的
⇒政務活動費等の使途の使途規準適合性を判断するに当たって、手引を斟酌すべき。
●政務活動費等の交付を受けた議員に対して損害賠償又は不当利得返還の請求をするよう求める住民訴訟において、政務活動費等が使途規準に適合しない使途に充てられたこと及び議員の故意・過失は、住民においてこれを主張立証しなければならない。
but
住民において、収支報告書(政務活動費等の支出の内容を概括的に知ることができる。)の記載に基づくなどして、政務活動費等の支出が使途基準に適合しないことを推認させる一般的、外形的な事実を主張立証した場合、当該支出が使途規準に適合しないこと及びこの点につき当該議員に少なくとも過失があることが事実上推認される。
この場合は、当該支出が使途基準に適合することを主張する県又は議員(支出の具体的使途を最もよく知る者)において前記推認を覆すに足る立証をしない限り、使途基準に適合しない使途に充てられたこと及び議員の過失が認められる。
手引に沿わない政務活動費等の支出については、使途基準に適合しないことが事実上推認される。
●前記の判断の枠組みに基づいて、本件で問題とされた政務活動費等の支出について個別に検討を加えた。
Xらの主張にかかる支出のうち
①人件費としての支出のうち手引において作成することとされている雇用契約書や政務活動業務実績表等が作成されていない支出、
②当該年度に使用しなかった切手や大量に購入された切手の購入費
③勤務表の記載に不自然な点がある人件費
④知人の会社に委託した県政報告書等の印刷代のうち同会社から実際に下請業者に支払われた部分を除く金額、
⑤政務活動等に使用したとする合理的根拠を認め難い車両のリース代
⑥政務活動等に使用していたとは考え難い事務機器等の利用料等
について、
使途基準に適合しない支出であり、県に対して損害賠償又は不当利得返還の義務を負う。
●当該年度に使用しなかった切手の購入費について、
①兵庫県においては、政務活動費等は年度単位で交付され、交付を受けた金額から必要な経費に充てるべき金額を控除して残余がある場合には当該残余額に相当する額を返還しなければならないものとされている
②郵便切手は、それが議員の行う政務活動等のために使用されることによって初めて政務活動に要する経費に充てられたと確定的に評価し得るもの
⇒
当該年度に使用しなかった切手については、当該年度の政務活動費等を切手の購入に要した費用に充てることはできない。
判例時報2381
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