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2018年11月17日 (土)

給与条例の改正による給与の減額に関しての措置要求の事案

神戸地裁H29.11.29      
 
<事案>
Y(兵庫県三木市)の職員であるXら(一般職に属する地方公務員)が、処分行政庁(三木市公平委員会)に対し、地公法46条に基づく措置の要求⇒却下する判定⇒処分行政庁の所属するYに対しその取消しを求めた。 

Xらがした措置の要求は、Yにおいて一般職の職員の給与に関する条例が改正され、行政職給料表の職務の級及び号給が切り替えられたことを受けて行われたもので、職務の級及び号級の切替えにより大幅減額となった給与につき、現給保障又は激変緩和措置を講じること

行政処分庁:
①本件措置要求を実現するためには給与条例を改正する必要がある
②公平委員会には市議会が条例の制定機関として有する自治立法権に介入する権限はない
③給与に関する条例改正の提案は管理運営事項(地公法55条3項)に該当し、措置要求の対象とならない
④公平委員会には給与勧告の権限は与えられていない
⇒本件措置要求を却下する判定 
 
<規定>
地公法 第46条(勤務条件に関する措置の要求)
職員は、給与、勤務時間その他の勤務条件に関し、人事委員会又は公平委員会に対して、地方公共団体の当局により適当な措置が執られるべきことを要求することができる
 
<争点>
本件措置要求の求める措置が地公法46条に基づく措置要求の対象となる事項に該当しないとした本件判定における判断の適法性。 
 
<判断>
措置要求の対象となる要件として、
①給与、勤務時間その他の勤務条件に関するものであること(要件①)
②それについて人事委員会、公平委員会又は地方公共団体の他の機関(当局)が一定の措置をとる権限を有すること(要件②)
を掲げたうえで、

要件②について、
条例の制定改廃そのものを求める措置要求は要件②を満たさず不適法
but
長が条例の制定改廃の議案を議会に提出することを求める措置要求は、公平委員会に権限がないから、あるいは管理運営事項だからという理由で一律に要件②の充足が否定されることはないが、
個別の事案においてその事情の下で否定されることはあり得る。

本件措置要求は給与に関するもの⇒要件①を満たす。

本件措置要求が求めているのは、条例の制定改廃そのものではなく、市長に対し給与条例の改正案を議会に提出するよう勧告することであると理解できる⇒市長の権限に属する事項
給与条例の内容に変更を加えることや号給の切替に変更を加えることに法律上の支障があるとは認められない。
⇒要件②も満たす。
⇒本件判定は違法。

要求書の記載からは本件措置要求の内容が必ずしも明確でなかったことについて:
①Yの定めた勤務条件に関する措置の要求に関する規則によれば、要求すべき措置は要求書の必要的記載事項
②要求書の提出を受けた処分行政庁はその記載内容について調査する義務を負う

要求書に記載された要求すべき措置が具体的に何を意味するのかを読み取ることができない場合には、処分行政庁は調査の一環として要求書を提出した職員にその補正をさせるべき。
このような場合に補正を求めることなく当該措置要求を却下することは、調査義務を怠るものとして違法。
 
<解説>
いわゆる管理運営事項については、団体交渉の対象から除外されている⇒措置要求の対象とならないという解釈が実務上は有力。
but
法律上これを明確に定めるところがなく管理運営事項の概念自体も明らかでない⇒勤務条件にあたるにもかかわらず、管理運営事項であるという理由で措置要求を排斥することはできないとの見解もある。 

判例時報2381

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