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2018年11月28日 (水)

過重労働の立証の事例

大阪地裁H30.3.1      
 
<事案>
Xの息子であるAは、Y1において調理師として勤務
Y1のc店で平成20年5月から同年8月まで店長として勤務し、同月にb店へ異動した後、同年9月にうつ病を発症して同年12月に休職し、平成21年4月に自殺。 
Xは、Yらが、Aを長時間労働等に従事させたことはAに対する安全配慮義務等に違反し、Aをうつ病にり患させて自殺に至らしめた
⇒Y1及び出向先であるY2に対しては雇用契約上の安全配慮義務違反に基づき、Y3、Y4及びY5に対してはY1又はY2の代表取締役又は取締役としての善管注意義務違反に基づき、損害賠償金の支払を求めた。
 
Y:Aが過重な労働に従事した事実はなく、Aの自殺の原因はアルコール依存による脆弱性や失恋であるなどとして争った。 

Xは、本件に関し、国に対し労災認定を求める訴訟を提起
同訴訟は大阪地裁及び大阪高裁において請求を棄却する旨の判決
 
<判断> 
●Aの勤務時間等についてタイムカード等の客観的記録なし。
Aが受診していた医師の診療録に、Aが3か月間休みなく働いた旨の記載
Y3、Y4及びY5が、Aの親族によるAが3か月間休みなく働いた旨の発言を否定しなかった
Aの同僚であるBらが、Aから3か月間休みがない旨聞いていた旨発言
Aのc店での同僚Cが、Aが3か月間休んでいなかった旨発言

その内容が一致することや利害関係がない医師や虚偽を述べる動機がない者の発言

これらの信用性を否定し、又はこれらと矛盾する有力な証拠がない限り、Aが3か月間休みなく働いた旨の事実を認めるに足りる証拠。

Yらが提出した勤務シフト表や勤務時間表
ほとんどの部分で客観的な裏付けがなく、信用することができない
⇒その一部を除いて退けた。

Aが休みを取っていた旨のB及びCを含む同僚らの労基署に対する証言

Aが休みを取っていいなかった旨発言していたB及びCが証言を変遷させた理由について合理的説明がない
口裏合わせがあった可能性が否定できない
⇒排斥。
Aが82日間にわたり連続して勤務したと認定
 
●Aの勤務時間について、
Aと交代で業務に就くことになっていたCの勤務開始時間等を基に認定。
休憩時間については 口裏合わせをした可能性のある同僚の証言は信用できない
⇒Cの④の際での発言や、Yらに有利な証言をしていない同僚の発言を基に認定。
 
●労災の業務起因性の基準を参考に、
①Aが、82日間の連続勤務をしたこと
②3か月間連続で100時間以上の時間外労働の従事したこと

他にうつ病を発症する原因がうかがわれなければ、過重労働によりうつ病を発症し、自殺するに至ったと認められる。 

Yらが自殺の原因として主張する失恋やアルコール依存による脆弱性は認めるに足りる証拠がないとして排斥。
⇒Aのc店における業務と自殺との間の相当因果関係を肯定。


Aを雇用していたY1並びにその役員であるY3及びY5は、Aが健康を損なうことのないように労働時間の管理等を行う安全配慮義務に違反
⇒Aの自殺についての責任を認め、Xの請求の一部を認容。 
   
<解説>
労働時価についてタイムカード等の客観的な記録による管理がされていなかった場合、労働時間を管理する義務を負う使用者労働時間についての積極否認や反証を行うことが求められる
but
立証責任は一般に労働者側に課せられる
⇒労働者側は厳しい状況に置かれることになる。

本件は、Aが受診した医師、Aの同僚及び役員の発言等を踏まえ、Aの休日の有無、勤務時間及び休憩時間を認定し、使用者側であるYらの提出した証拠の信用性を排斥

判例時報2382

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