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2018年10月 1日 (月)

除斥期間による請求権の消滅の阻止と訴訟での一部請求

札幌高裁H30.3.15      
 
<事案>
X:
平成6年5月17日、交通事故により、頭部外傷、脳挫傷等の傷害。
平成23年8月8日 脳外傷後高次脳機能障害と診断。

平成26年5月14日:
本件訴訟を提起したが、訴え提起当初、1億4112万3225円の損害額の一部であることを明示して、2000万円および事故日からの遅延損害金の支払を求めた。

平成26年11月20日:
1億位2309万8584円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める請求に請求を拡張。
 
<争点>
①Xの高次脳機能障害が交通事故により生じたものか
②症状固定時をいつとすべきか
③消滅時効が完成しているか 
 
<規定> 
民法 第724条(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする
 
<判断>
民法724条後段について、消滅時効を定めたものではなく、除斥期間を定めたもの
その趣旨について、不法行為を巡る法律関係の速やかな確定を図るため、一定の時の経過によって法律関係を確定させるため請求権の存続期間を定めたものであって(最高裁H1.12.21)、
これによる請求権の消滅を妨げるためには、同期間内に裁判上の権利行使をする必要がある

Xにおいては、一部請求であることを明示した上で本件訴訟を提起しており、残部請求部分について訴えが提起されたとはえいえず、
明示的一部請求の残分について裁判上の催告としての効果があるとしても(最高裁H25.6.6)、裁判上の請求としての効果は認められない

民法724条後段の除斥期間による請求権の消滅を妨げるには足りない
⇒当該部分の請求権が除斥期間の経過により消滅。

 
<解説>   
●除斥期間による請求権の消滅を妨げるためには、期間内に訴えを提起する必要があるか、それとも裁判外における権利行使で足りるか? 

最高裁H4.10.20:
民法566条3項の1年の除斥期間について、
売主の瑕疵担保による損害賠償請求を保全するためには、売主の担保責任を問う意思を裁判外で明確に告げることをもって足り、
裁判上の権利行使をするまでの必要はない


このような短期の除斥期間については裁判外の権利行使をもって請求権を保全することができると解しているものが多い。

学説上、
少なくとも723条後段の除斥期間に関しては、裁判上の権利行使を必要とするものが多い
 
除斥期間といっても、その期間も性質も様々であり、
除斥期間が定められた権利の保存方法についても、
その期間制限が付されている権利の性質や期間制限された趣旨を踏まえた考察が必要。
 
●明示的一部請求の訴えの提起が残部についていかなる効果をもたらすか? 
最高裁H25.6.6:
数量的に可分な債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えが提起された場合、
当該訴えの提起による裁判上の請求としての消滅時効の中断の効力は、
その一部について生ずるのであって、
当該訴えの提起は、
残部について、裁判上の請求に準ずるものとして消滅時効の中断の効力を生ずるものではない。

but
明示的一部請求の訴えが提起された場合、
債権者が将来にわたって残部をおよそ請求しない旨の意思を明らかにしているなど、残部につき権利行使の意思が継続的に表示されているとはいえない特段の事情のない限り、
当該訴えの提起は、
残部について、裁判上の催告として消滅時効の中断の効力を生ずる

明示的一部請求の訴えにおける残部については、
裁判上の催告としての効力は認められるものの、
裁判上の請求あるいはこれに準ずるものといった効果は認められない

判例時報2374

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