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2018年10月 5日 (金)

従業員の自殺について、業務起因性を認定し、勤務先会社の損害賠償責任が認められた事例

名古屋高裁H29.11.30    
 
<事案>
Aが、被控訴人Y2及びY3からいじめ等を受け、かつ、被控訴人Y1(勤務先)は、前記事態を放置した上、十分な引継をすることなくAの配置転換をして、過重な業務を担当させた結果、Aが強い心理的負荷を受けてうつ状態に陥り自殺

Aの両親である控訴人Xらが、
被控訴人Y2及び被控訴人Y3に対しては、不法行為に基づき、
被控訴人Y1に対しては、債務不履行(安全配慮義務違反)又は不法行為に基づき、
損害賠償金の支払を求めた。

労働者災害補償保険において、平成25年12月、Aの死亡について業務起因性を認定。
 
<原審>
Aは仕事上の入力ミスなどが比較的多かったが、
被控訴人Y3が、平成23年9月移行、Aに対して、仕事上のミスがあると、厳しい口調でかつ頻繁にわたり叱責し、
営業事務に配置転換となった以降も、ミスがある毎に、Aを呼び出して、被控訴人Y2と一緒に同様に叱責していたことは、
業務上の注意や指導の範囲を超えて、Aに精神的苦痛を与えるもので、
不法行為に該当
する。

被控訴人Y2は、Aの前記配置転換後の業務遂行状況を踏まえて、Aに対する適宜の支援を行うべき職責を負っていたが、これを怠ったほか、
配置転換後のAに対する叱責行為は、不法行為に該当する

被控訴人Y2及びY3の前記各不法行為及び配置転換後の業務の負担と、
Aの自殺との相当因果関係:
①Aがうつ病を発症していたとは認められず、
②前記配置転換後の業務負担がAの心身の健康の喪失に繋がるようなものでなく、業務外の原因が影響した可能性もある
⇒否定

Aの損害について、165万円の限度で認容。
 
<判断>
Y3の責任については、原審と同様。

Y2の責任について、
Aに対する叱責行為は原審判決と同様に不法行為になる。
Aに対する適宜の支援を行うべき義務を怠った点については、
従業員の業務分配の決定権は、上司であるB(取締役)にある
⇒この点はBの注意義務違反。

Aは、被控訴Y2及びY3から厳しい叱責を受け、かつ、Bが叱責を制止せず、本件配置転換後のAの業務内容や業務分配の見直しが必要であったのはこれを検討しなかったことにより、Aが受けた心理的負荷の程度は、全体として強いものであったと認められ、客観的に見てうつ病を発症させる程度のものと評価することができる

Aは遅くとも平成24年6月中旬には、うつ病を発症していたと認められ、これらの不法行為とAの自殺との間には、相当因果関係がある

Y2及びY3の各不法行為については、それのみでうつ病を発症させる程度のものと評価することはできず、Aの自殺との間の相当因果関係は認めなかった

Aの損害については、
被控訴人Y1(勤務先)の不法行為について、控訴人Xら固有の損害を含めて約5574万円を認め
被控訴人Y2及びY3の不法行為については、限定的な範囲で認めた
 
<解説>
使用者は、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないように注意する義務を負う。’(最高裁H12.3.24) 

●不法行為とAの自殺との相当因果関係の判断
原審判決:
①配置転換直前からの時間外労働時間が月約50時間から67時間程度であってそれほど長時間とはいえない
②周囲の従業員らでAが精神障害に関連する症状を発症していると感じた者がいなかった
③家庭生活においても明らかな異常は見られず、精神障害に関連する受診歴がなく
④配置転換後も趣味に関するツイートがある
⑤異性との交際問題が自殺に影響した可能性もある

Aがうつ病を発症したとは認めなかった

本判決:
時間外労働時間が配置転換前と比較して明らかに増加傾向にある
身なりにかまわなくなったこと、③食慾が減退し、趣味に関するツイート数が大幅に減少し、被控訴人Y2及びY3から叱責されて落ち込んでいた

Aが受けた心理的負荷の程度は、全体として強いものであったと認められ、中等症うつ病エピソードの患者と診断できる状態にある

自殺との相当因果関係を肯定。

判例時報2374

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