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2018年10月10日 (水)

ハーグ条約実施法28条1項4号及び5号の返還拒否事由の主張を排斥し、子の常居所地国(米国)への返還を命じた事案

東京高裁H27.3.31      
 
<事案>
米国に居住していたX及びYの夫婦間に生じた国際的な子の連れ去りに関する紛争。 

Y(父)は、X及び子らと別居するに至った後、Aを除く4名の子らとの宿泊付きの面会交流中に本件子らとともに日本に帰国し、そのまま日本国内に居住


Xが、Yに対し、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(いわゆるハーグ条約実施法)に基づき、本件子らを米国に返還することを求めた。
 
<規定>
国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律 第二八条(子の返還拒否事由等)
 
裁判所は、前条の規定にかかわらず、次の各号に掲げる事由のいずれかがあると認めるときは、子の返還を命じてはならない。ただし、第一号から第三号まで又は第五号に掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して常居所地国に子を返還することが子の利益に資すると認めるときは、子の返還を命ずることができる。

四 常居所地国に子を返還することによって、子の心身に害悪を及ぼすことその他子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険があること。

五 子の年齢及び発達の程度に照らして子の意見を考慮することが適当である場合において、子が常居所地国に返還されることを拒んでいること。
 
<争点>
①実施法28条1項5号のいわゆる子の異議の返還拒絶事由の有無
②同項4号のいわゆる重大な危険の返還拒絶事由の有無 
 
<判断>
●争点① 
原決定を是認
原決定:
同号の文言

子が、その意見を考慮に入れることが適当である年齢及び成熟度に達していること
子の意見が、常居所地国に返還されることに対する異議であること
が要件。

家庭裁判所調査官によって行われた本件子らの意向及び心情の調査結果等
いずれの子についても両要件がともに満たされることは無く、前記返還拒否事由があるとはいえない

最年長のB(調査時11歳)は、前記調査時に、主に兄弟のAやXとの関係に係る懸念を示して、日本にいたい旨を述べた。

原決定:
Bはその意見を考慮すべき年齢及び成熟度に達している
but
その意見の実質は、X及びAの下に返還された際に、Aとの喧嘩があり得ることや、それについてXが適切な対応をしてくれるかについての懸念を示すものにすぎず、
Bは米国で生まれ育ち、米国での生活を拒否するような客観的な事情がうかがわれない


常居所地国である米国に返還されること自体に対する異議を述べているものとはいえないとして、②の要件を満たさない。
 
●争点② 
原決定を是認
原決定:
Xによる本件子らの監護状況等について詳細に事実を認定した上で、
①Xとの同居生活中に本件子らに軽度のけがを負うことがあったこと、
②Xが本件子らを自宅に残して外出し、児童福祉機関によりネグレクトと認定されたこと等、
Xの監護状況に不適切な面がなかったとはいえない
but
そのけがが通常の日常生活の中で生じ得る程度のものであったこと
Xの対応に前記ネグレクト以外に不適切といえるものはなかったこと


本件子らの監護状況に重大な問題があったとまでは言い難い

①本件子らを米国に返還した場合の危険性の検討のためには、返還後、米国において、本件子らを保護しその危険性を減ずる措置がとられるかという点も重要な考慮要素。
本件子らが居住していた州では、州の児童福祉機関や裁判所等の関係機関の関与を通して子の保護が図られる制度があり、連れ去りまでの間、本件子らの監護について、これらの制度が有効に機能していた。
実施法28条1項4号の返還拒否事由があるとはいえない

判例時報2375,2376

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