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2018年10月11日 (木)

ハーグ条約実施法で、相手方による不法な留置の開始時期・留置の同意・承諾が問題となった事案

大阪高裁H27.8.17      
 
<事案>
父であるXが、母であるYに対し、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(「実施法」)に基づき、Yが日本に不法に留置している両者の子Cをその常居所地国であるカナダに返還することを求めた事案。 
 
<争点>
①Yによる留置開始時期が実施法の施行日である平成26年4月X日より後であったか(実施法は、その附則2条によって、その施行前に開始された不法な留置には適用されない)
②XがYによる留置に同意又は承諾したか(実施法28条1項3号の返還拒否事由があったか)
 
<判断> 
●争点①
原決定:
常居所地国以外の国で子を監護している父母その他の者が子を常居所地国へ返還しない意思を示したと客観的に判断できる時点留置が開始されたということができる。
Yが日本への帰国に際して購入した往復航空券による復路の予約を取り消して同航空券を失効させ、カナダに戻らないことをXに伝えた平成26年6月をもって留置が開始
⇒本件に実施法が適用される。

本決定もこの判断を是認。 
 
●争点②
留置の同意又は承諾があるというためには、返還申立ての申立人において、子が新たな居住地に定住することを承認し、子の返還を求める権利を放棄したことが客観的な証拠により認定される必要がある。
本件においては、そのような同意又は承諾は認められない。
 
<解説>
留置の開始時期は、
返還事由の有無を認定する際の前提となるだけではなく、
実施法28条1項1号及び2号の返還拒否事由を判断する際の基準時としての意味を持つ。

法 第二八条(子の返還拒否事由等)
裁判所は、前条の規定にかかわらず、次の各号に掲げる事由のいずれかがあると認めるときは、子の返還を命じてはならない。ただし、第一号から第三号まで又は第五号に掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して常居所地国に子を返還することが子の利益に資すると認めるときは、子の返還を命ずることができる。
一 子の返還の申立てが当該連れ去りの時又は当該留置の開始の時から一年を経過した後にされたものであり、かつ、子が新たな環境に適応していること。
二 申立人が当該連れ去りの時又は当該留置の開始の時に子に対して現実に監護の権利を行使していなかったこと(当該連れ去り又は留置がなければ申立人が子に対して現実に監護の権利を行使していたと認められる場合を除く。)。

判例時報2375、2376

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