県立公園における朝鮮人労働者を追悼する追悼碑の設置期間の更新不許可処分が違法とされた事案
前橋地裁H30.2.14
<事案>
県立公園群馬の森を管理するY(群馬県)の代表者である処分行政庁(群馬県知事)は、追悼碑の設置を知根氏した団体Aに対し、平成16年3月4日、「設置許可施設については、宗教的・政治的行事及び管理を行わないものとする。」との条件を付して、戦時中に労務動員され、群馬県内でなくなった朝鮮人労働者を追悼する追悼碑の設置を認可(設置期間10年)。
本件追悼碑に関する権利義務を承継したと主張するXは、前記設置許可の期間満了前である平成25年12月18日、処分行政庁に対し、都市公園法5条1項に基づき、本件追悼碑の設置期間の更新申請。
but
処分行政庁は、平成26年7月22日、本件追悼碑の前で本件許可条件に反する政治的行事が繰り返し行われた結果、本件追悼碑は、日韓、日朝の友好の促進という当初の目的から外れ、存在自体が論争となり、街宣活動、抗議活動などの紛争の原因になっており、都市公園の効用を全うする機能を喪失したとして、設置期間の更新不許可処分。
⇒
Xは、本件更新不許可処分の取消しとともに、処分行政庁に対する本件更新申請の許可の義務付けを求めて本件訴えを提起。
<規定>
法2条2項:
「公園施設」の定義について、「都市公園の効用を全うするため」当該都市公園に設けられる施設をいう旨規定。
法5条1項:
法の規定により都市公園を管理する者(「公園管理者」)以外の者が、都市公園に公園施設を設け、又は公園施設を管理しようとするときは、公園管理者の許可を受けなければならない。
同条2項:公園管理者が前記許可をすることができない条件を規定。
<判断>
●Xが、本件許可条件所定の政治的行事を行ったか
本件追悼碑の設置許可申請に至る団体名や碑文の変更に関する経緯⇒少なくとも、本件追悼碑に関して「強制連行」の文言を使用して、歴史認識に関する主義主張を訴えることを目的とする行事は、「政治的行為」に含まれ、かつ、そのことをXも認識していた
⇒そのような内容の発言が「政治的行事」に含まれ、Yが政治的発言に該当すると主張した各発言のうち、一部の発言は、いずれも政治的発言に該当する。
⇒
これらの一部の発言がなされた追悼式自体が政治性を帯びることは否定できない。
平成17年及び平成18年開催の各追悼式は、いずれも「政治的行事」に該当し、Xは本件許可条件に違反。
●本件追悼が都市公園としての効用を全うする機能を喪失したか
①前記政治的発言がされた後、平成24年に至るまでは、Yに対しても本件追悼碑に関する抗議や意見が寄せられたことはなく、追悼式の開催、運営に支障や混乱が生じたと認めるに足りる証拠はない
②Y自身も、本件追悼碑が本件公園の効用を全うする機能を喪失したとは考えていなかった
⇒
本件更新不許可処分は、本件追悼碑が都市公園の効用を全うする機能を喪失していたとは考えていなかったと認めるべき事情がある
⇒
本件更新不許可処分は、本件追悼碑が都市公園の効用を全うする機能を喪失していたといえないにもかかわらずなされた処分であり、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められ、裁量権を逸脱しtあ違法があるとして、Xの本件更新不許可処分の取消しの訴えを認容。
●処分行政庁が、本件更新申請に対する許可処分をしないことが、裁量権の逸脱又は濫用となるか
公園管理者が、更新申請者に対し、具体的にいかなる期間の更新を許可すべきかは、公園管理者の合理的な裁量に委ねられていると解するのが相当。
処分行政庁が10年間と期間を特定した本件更新申請を許可しないことが、その裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となるということまではできない。
⇒
Xの本件更新申請の許可の義務付けの訴えを棄却。
<解説>
ある施設が「都市公園の効用を全うする」(法2条2項)か否かは、
個々の公園の特殊事情に応じて、具体的に決すべき問題であり、公園管理者の裁量が認められる。
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公園管理者の判断に裁量権の逸脱又は濫用があると認められる場合には、違法となる。
判例時報2377
大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
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