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2018年10月 3日 (水)

財産分離(民法941条)の請求と財産分離の必要性

大阪高裁H29.4.20      
 
<事案>
大阪家裁は、平成28年、Dについて後見開始の審判をし、弁護士であるBを成年後見人に選任。
Aは、Dの財産を生前から事実上管理していたが、Bが成年後見人の職務としてのDの財産の開示、引渡しを求めてもこれに応じなかった。
Dは同年に死亡し、法定相続人は、Dの子であるAとCの2名。
Bは、後見事務を処理するのに立て替えた費用等についてDに対して債権を有している。
Bは、大阪家裁において、第一種財産分離の申立てをした
 
<規定>
民法 第941条(相続債権者又は受遺者の請求による財産分離)
相続債権者又は受遺者は、相続開始の時から三箇月以内に、相続人の財産の中から相続財産を分離することを家庭裁判所に請求することができる。相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、その期間の満了後も、同様とする。
 
<原審> 
①被相続人Dの財産を生前から事実上管理していた相続人Aは、後見人Bが職務上、Dの財産の開示、引渡し等を求めても応じることはなく、
②Dが平成28年に、死亡したことにより、Dの債権者の債権の引当てとなるべき被相続人Dの財産と相続人A及びCがDの相続開始前から有する固有財産(債権の引当となる固有の財産を有すると認めることはできない。)とが混合するおそれが生じた

相続人らの固有財産から被相続人の相続財産を分離するのが相当。

民法941条1項に基づき財産分離を命ずるとともに、
同法943条1項に基づき、職権で相続財産管理人としてBを選任する旨の審判をした。
 
 
<判断>
民法941条1項の定める第一種財産分離は、相続人の固有財産が債務超過の状態にある場合(もしくは近い将来において債務超過となるおそれがある場合)に相続財産と相続人の固有財産との混合によって相続債権者又は受遺者の債権回収に不利益を生じることを防止するために、相続財産と相続人の固有財産とを分離して、相続債権者又は受遺者をして相続人の債権者に優先して相続財産から弁済を受けさせる制度

家庭裁判所は、相続財産の分離の請求があったときは、申立人の相続債権、申立期間といった形式的要件が具備されている場合であっても、前記の意味における財産分離の必要性が認められる場合にこれを命じる審判をなすべきものと解するのが相当。 

本件においては、抗告人A及び相続人Cについて、その固有財産が債務超過の状態(もしくは近い将来において債務超過となるおそれがある状態)にあるかどうかは明らかではなく、財産分離の必要性について審理しないまま、財産分離を命じた原審の判断は相当ではない
この点について原審においてさらに審理を尽くす必要がある
 
<解説>
財産分離は、債権者がその債権回収について不利益を被ることがないように、相続財産と相続人の固有財産との混合を阻止して、まず、相続財産について清算を行う制度
相続債権者等が請求する第1種財産分離(民法941条以下)と
相続人の固有の債権者が請求する第2種財産分離(同法950条) 

第一種財産分離は、その間、遺産分割ができなくなるなど相続人の財産管理等や第三者にも大きな影響を及ぼすもの
⇒これを認めるためには、それなりの合理的な理由(財産分離の必要性)を要すると解すべき。

●本決定に対し、財産分離の要件に関する部分について抗告許可

最高裁H29.11.28:
本決定のいう「財産分離の必要性」の内容について
相続人がその固有財産について債務超過の状態にあり、またはそのような状態に陥るおそれがあることなどから、相続財産と相続人の固有財産とが混合することによって相続債権者等がその債権の全部又は一部の弁済を受けることが困難になるおそれがあると認められる場合」であるとされ、本決定もその趣旨をいうものとして是認。

相続人の固有財産が債務超過の状態にある場合でも、例えば、相続財産が極めて多額に及ぶケースでは、なお相続債権者が害されるおそれはないといえる。

家庭裁判所としては、事案に応じて、相続債権者等が債権の全部又は一部の弁済を受けることが困難となるおそれがあるかどうかを総合判断することになる。

●抗告審: なお書きで、原審判が財産分離を命じるとともに申立人の自薦に基づき申立人自身を相続財産管理人に選任
本件において、相続財産管理人の職務内容に鑑みれば、相続債権者を相続財産管理人に選任するのは相当でない旨を付言。

相続財産管理人の選任(民法943条、家事手続き法別表第1の97項)のみ独立して不服申立てができない(家事手続法202条2項)。

判例時報2374

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