« 抵当権の被担保債権が免責許可の決定の効力を受ける⇒当該抵当権自体の消滅時効 | トップページ | 署名のある媒介契約書の成立の真正の推定が覆された事案 »

2018年10月27日 (土)

改良住宅の入居者が死亡した場合の使用権の承継と京都市市営住宅条例

最高裁H29.12.21      
 
<事案>
本訴:Xが、京都市所有の改良住宅(住宅地区改良法2条6項)である本件住宅を使用する権利をXの母Aから承継したなどと主張しして、京都市に対し、本件住宅の使用権及び賃料額の確認等を求めるもの。
反訴:京都市が、本件住宅を占有するXに対し、所有権に基づく本件住宅の明渡し及び賃料相当損害金の支払等を求めるもの。 

<事実>
Aは、平成20年1月、改良住宅に入居させるべき者(同法18条)として本件住宅の引渡しを受けて本件住宅に居住していたが、平成25年9月に死亡。
Xは、平成22年5月頃から母Aを介護するため本件住宅に同居していたが、京都市長に対し、京都市市営住宅条例23条1項に規定する同居の承認を申請しなかった
 
<規定>
施行者は、国の補助を受けて建設された改良住宅の管理について必要な事項を条例で定めるものとされており(住宅地区改良法29条1項、公営住宅法48条)、
条例24条1項は、改良住宅の入居者が死亡した場合において、その死亡時に当該入居者と同居していた者で、同居の承認を受けて同居している者等は、市長の承認を受けて、引き続き当該改良住宅に居住することができる旨を規定。 
 
<争点>
改良住宅の入居者Aの相続人であるXが、改良住宅の使用権を相続により承継したといえるか否か。 
 
<原審>
公営住宅の入居者が死亡した場合には、その相続人が公営住宅の使用権を当然に承継するものではないと解されるところ(最高裁H2.10.18)、
住宅地区改良法の規定およびその趣旨に照らすと、改良住宅の入居者が死亡した場合についても、当該入居者の相続人が改良住宅の使用権を当然に承継すると解する余地はない。
②本件条例24条1項は、同法の規定の趣旨に違反するとはいえない。

民法等による相続の一般法理が適用されるとするXの主張は理由がないとして、Xによる本件住宅の使用権の承継を否定。 
 
<判断>
住宅地区改良法の規定及びその趣旨
国の補助を受けて建設された改良住宅の入居者が死亡した場合における使用権の承継については、民法の相続の規定が当然に適用されるものと解することはできず施行者が、住宅地区改良法の規定及びその趣旨に違反しない限りにおいて、改良住宅の管理について必要な事項として、条例で定めることができるものと解される。 

本件条例24条1項の趣旨は、改良住宅が、住宅地区改良事業の施行に伴い住宅を失った者等の居住の安定を図る趣旨のものであることを踏まえて、改良住宅の入居者が死亡した場合の使用権の承継を、その死亡時に当該入居者と同居していた者で、市長の承認を受けて同居している者等に限定したものと解することができる。

本件条例24条1項は、住宅地区改良法の規定及びその趣旨に照らして不合理であるとは認められないから、同法29条1項、公営住宅法48条に違反し違法、無効であるということはできない。
 
<解説> 
改良住宅の入居後の使用関係については、基本的に私人間の建物賃貸借関係と異なるところはなく、原則として一般法である民法及び借地借家法の適用があるものと解される。(公営住宅に関するものであるが、最高裁昭和59.12.13) 

国の補助を受けて建設された改良住宅の管理等については、公営住宅法の規定の多くが準用されているところ(住宅地区改良法29条)、
公営住宅については、公営住宅法の規定の趣旨から、その入居者の相続人は、被相続人の有していた当該公営住宅の使用権を当然に承継すると解する余地はないとの判断がされており(最高裁H2.10.18)、同最判は、公営住宅法を公営住宅の使用権の相続を否定した特別法であると位置づけたものであると理解されている。

原審:
基本的に、住宅地区改良法を改良住宅の使用権の相続を否定した特別法であると位置付けたもの。
 
●but
改良住宅は、住宅地区改良事業の施行に伴い住宅を失う改良地区内の居住者を対象として建設されるものであり、住宅に困窮する低額所得者一般に対し、公募による入居者の募集手続を経た上で賃貸される公営住宅とは、その趣旨目的が異なる

公営住宅の入居者が死亡した場合についての入居の承継を規定した公営住宅法27条6項は、改良住宅には準用されておらず、住宅地区改良法の制定時の国会審議においては、政府委員から「親子の代が変わるという場合には、そのまま引き継いで入居できる」と説明がされている。

同法の解釈として改良住宅の使用権について「当然に承継すると解する余地はない」とまではいえない。 

住宅地区改良法18条は、改良住宅に入居させるべき者について「住宅に困窮すると認められるもの」に限定しており、住宅地区改良事業に伴い住宅を失った者等の全てについて無条件に改良住宅への入居を認めているものではない。
改良地区内の居住者が従前の住宅につき有していた所有権その他の権利に対しては、施行者が金銭をもって補償することが予定されている(同法11条1項、16条1項)。

改良住宅への入居は、前記事業に伴い住宅を失った者等に対する権利の補償としてではなく、あくまでもその居住の安定という社会政策的な措置として認められたもの。

住宅地区改良法は、改良住宅の使用権の相続を認めたものであるとまで解することは困難であって、その使用権の承継については、住宅地区改良法の規定の趣旨に照らして制定されるべき条例に委ねたものと解するのが相当

判例時報2378

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

 

|

« 抵当権の被担保債権が免責許可の決定の効力を受ける⇒当該抵当権自体の消滅時効 | トップページ | 署名のある媒介契約書の成立の真正の推定が覆された事案 »

判例」カテゴリの記事

民事」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/132655/67318392

この記事へのトラックバック一覧です: 改良住宅の入居者が死亡した場合の使用権の承継と京都市市営住宅条例:

« 抵当権の被担保債権が免責許可の決定の効力を受ける⇒当該抵当権自体の消滅時効 | トップページ | 署名のある媒介契約書の成立の真正の推定が覆された事案 »