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2018年9月30日 (日)

東日本大震災直後の被災地支援で派遣⇒くも膜下出血で搬送、死亡⇒公務上の死亡(肯定)

大阪高裁H29.12.26      
 
<事案>
大阪府職員の被災地派遣先における死亡が、地方公務員災害補償法(地公災法)所定の公務災害にあたるかどうかが争われた事案。
 
<原審>
2回にわたる派遣の経緯等を認定。
地公災法31条にいう公務上の死亡(同法施行規則別表第1第8号にいう「相当の期間にわたって継続的に行う長時間の業務その他血管病変等を著しく増悪させる業務に従事したために生じた」もの)には当たらない
⇒Xの請求を棄却。
 
<判断>
東日本大震災の被害の甚大さ、
宿泊先ホテルの状況、
被災地における自動車運転の困難性
発症当日午前の頭痛(前駆症状)と服薬
被災地において公務に従事する職員のトラウマティックストレス(惨事ストレス)に関する知見等
を新たに認定。 

本件被災地派遣における運転業務は軽度のものとはいえず、強い精神的緊張を強いられるもの
前記のような体調不良があっても休めるような状況にはなかった
③本件疾病はX(職員の妻)主張の脳出血(脳内出血)ではなくY(地方公務員災害補償基金)主張のくも膜下出血であった

前記業務はくも膜下出血の発症要因となり得る程度の高度の負荷であったというべき
前駆症状が生じた後も前記業務を継続せざるを得なかったこと等によって早期の治療機会を喪失したといえる

本件疾病による死亡は公務上の死亡に当たる

地公災法にいう公務上の災害とは、職員が公務に起因して負傷又は疾病を発症した場合をいい、
公務と疾病等との間に条件関係が存在することのみならず、社会通念上、その疾病等が公務に内在又は随伴する危険が現実化したと認められる関係、すなわち、相当因果関係があることを要する

本件のような脳血管疾患にあっては、当該職員と同程度の年齢・経験等を有し、基礎疾患を有していても通常の職務を支障なく遂行することができる程度の健康状態にある者を基準として、
公務による負荷が、医学的経験則に照らし、客観的に、脳血管疾患の発症の基礎となる病変を、自然的経過を超えて著しく増悪させ得るものと認められる場合に、
当該疾患発症は公務に内在する危険が現実化したものと評価して、
公務起因性を認める
のが相当であり、
Yが援用する認定基準等には法的に拘束されない
 
<解説>
●本判決:
原判決と異なり、認定事実を加えた上で、
公務自体の過重負荷
公務中の治療機会喪失
の両方を認めた。

分岐点は、
①従前と同じ自動車運転業務に従事しており、
②運転時間自体はそれほど長いとはいえず、
③業務終了後の休養中に倒れた
といった点を重視するか、
本件被災地派遣における自動車運転業務の特殊な状況等を重視するか。

●参考判例
支店長付きの運転手が自動車運転の業務中に発症したくも膜下出血が業務上の疾病に当たるとした最高裁H12.7.17

公務として行われたソフトボールの競技に参加した地方公務員の急性心筋こうそくによる死亡が地公災法上の公務上の災害に当たるとした最高裁H6.5.16

心臓疾患を有する地方公務員が公務として行われたバレーボールの試合に出場した際に急性心筋こうそくを発症した場合につき同人の死亡とバレーボールの試合に出場したこととの間の相当因果関係を否定した原審の判断に違法があるとした最高裁H18.3.3

地方公務員(小学校教諭)が午前中に出血を開始した特発性脳内出血により当日午後の公務(児童のポートボールの試合の審判)に従事中に意識不明となってとあれ入院後死亡した場合につき死亡の公務起因性を否定した原審の判断に違法があるとした最高裁H8.3.5

判例時報2373

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