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2018年9月12日 (水)

配偶者暴力法8条の2の援助申出の相当性の判断が国賠法上違法とされる場合

名古屋地裁H29.11.9      
 
<事案>
Xの元妻Aが、配偶者暴力法8条の2の援助の申出として、Xからの暴力を理由に行方不明者届の不受理の申出を行ったことに対し、警察官がAの申出を相当と判断した行為によって、Aとの間の子Bの安否を知ることができず、また、配偶者に暴力を振るった加害者として扱われたことで精神的苦痛を被った

Xが、当該警察署の設置主体であるYに対し、国賠法1条1項に基づき、損害賠償を求めた。 
 
<規定>
配偶者暴力法 第八条の二(警察本部長等の援助)
 
警視総監若しくは道府県警察本部長(道警察本部の所在地を包括する方面を除く方面については、方面本部長。第十五条第三項において同じ。)又は警察署長は、配偶者からの暴力を受けている者から、配偶者からの暴力による被害を自ら防止するための援助を受けたい旨の申出があり、その申出を相当と認めるときは、当該配偶者からの暴力を受けている者に対し、国家公安委員会規則で定めるところにより、当該被害を自ら防止するための措置の教示その他配偶者からの暴力による被害の発生を防止するために必要な援助を行うものとする。
 
<Yの主張>
①法の規定は被害者に対する関係での関係機関の努力義務等を定めたものであり加害者とされる他方配偶者に対し関係機関は職務上の法的義務を負っていない。
②仮に職務上の法的義務を負っていると想定したものであったとしても、Dに職務上の注意義務違反はない。 
 
<判断>
国賠法1条1項が、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに、国又は公共団体がこれを賠償する責めに任ずることを規定するもの。(最高裁昭和60.11.21)

Aの援助申出の相当性を判断した際におけるDの対応がXに対して負担する職務上の法的義務に違背したかの問題となる。 

法8条の2は、被害者の保護を図るために警察署長等に援助を行う義務があることを定めた規定であり、援助申出の相当性の判断は警察署長等の合理的な裁量にゆだねられている
but
援助申出を受理した場合、その反面、加害者とされる者に事実上の不利益を課すことにもなる
その判断が著しく不合理であって、裁量を逸脱又は濫用していると認められる場合には、加害者とされる者との関係で違法と評価される場合もあり得る

①本件では、DがFの担当者からAをBとともにシェルターへ避難させる予定であり、Aが行方不明者届の不受理を要望している等の連絡を受けていた
②AがXからの暴力被害につき具体的に供述するとともに、その日のうちにシェルターに避難することになっている旨を述べた
③DがAの供述等を踏まえて上司らとともに前記通達に照らしてAからの援助申出の相当性を検討した
等の事情

C警察署長によるAからの援助申出受理の手続を執ったことが著しく不合理であって、裁量を逸脱又は濫用しているとはいえない

国賠法1条1項の適用上の違法を否定。
 
<解説>
法8条の2の援助申出の受理件数は年々増加し、平成29年の受理件数は9000件を超えた。 

判例時報2372

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