国籍留保の届出が届出期間経過後になされたものとされた事案
大阪高裁H29.11.28
事案 F区長は、平成28年、Gの出生届を受理したが、本件国籍留保の届出については、Bが届出できるに至った時点は、E(Bの父、Xの祖父)につき就籍の審判がされた平成20年であることを前提に、
本件国籍留保の届出は、戸籍法104条1項及び3項の期間を経過した後にされたもので、Xは日本国籍を喪失(国籍法12条)⇒本件各届出をいずれも不受理とする処分をした。
<原審>
B(昭和39年生)は、平成20年、E(Bの父)が就籍⇒出生により父の日本国籍を取得(昭和59年改正前の国籍法2条1号、父系主義)。
G(Bの長男、Xの兄)は、前記改正後の国籍法施行日(昭和60年1月1日)よりも前(昭和58年)にC国(血統主義)で出生⇒国籍留保の対象ではなく、そのため、Xと異なり日本国籍を有する者として出生届出が受理。
X(昭和60年生)は、改正後の国籍法施行後に出生⇒国籍留保制度(国籍法12条)の対象となる。
but
Eの就籍(平成20年)に先立ち、Xの国籍留保の届出を戸籍法104条1項所定の届出期間内(Xの出生から3か月)に求めるのには無理がある。
⇒
Bに同条3項の届出人の「責めに帰することができない事由」があるかが問題。
Eが就籍審判の通知を受けた時点(平成20年)で同項の「届出をすることができるに至った」と解すべき⇒そこから14日を経過すると、Xの出生届や国籍留保のの届出をすることはできなくなる。
当時、Bは戸籍記載が未了で、本籍や戸籍上の氏名もなかったが、それは、客観的にみて本件国籍留保の届出をすることの障害とはならない
⇒Xは、出生時に遡って日本国籍を失ったとして、Xの就籍許可の申立てを却下。
<判断>
戸籍法は、出生届出書には父母の氏名および本籍の記載を要するが(同法49条2項3号)、記載すべき事項が存在しない場合にはその旨を記載し(同法34条1項)、本籍のない者が届出後に本籍を取得したときはその旨を届け出ることを要する。
⇒
Bの戸籍記載が未了で、本籍や戸籍上の氏名もなくても、客観的にみて本件国籍留保の届出をすることの障害にはならない。
⇒
Xの抗告を棄却。
<解説>
●国籍留保:
日本国民が国外で出生し、重国籍となった者について戸籍法の定めに従い留保をしない限り、出生の時に遡って日本の国籍を失うこととして、国籍の積極的な抵触(重国籍)の防止を図る制度。
国籍留保をしないと、自己の志望で日本国籍を喪失⇒国籍離脱の自由を実現。
国籍留保には届出が要件⇒戸籍に記載されない日本国民の発生を防止し、戸籍上日本国民の範囲を画する機能。
国籍法は、昭和59年改正後の12条において、
「出生により外国の国籍を取得した日本国民で国外で生まれたものは、戸籍法の定めるところにより日本の国籍を留保する意思を表示しなければ、その出生の時にさかのぼつて日本の国籍を失う。」と規定。
国籍留保の適用範囲が拡大
←昭和59年の国籍法改正により、父系主義から父母両系主義に変更されたことに伴い増加する重国籍の発生を防止するため。.
●国籍留保の要件(国籍法12条)
①日本国外で生まれ、出生により外国籍を取得し、日本国籍と重国籍の状態となったこと、
②法定の期間内に日本国籍留保の意思表示がされること
①について:
(a)出生により外国籍を取得したこと(出生地主義、血統主義)
(b)血統により日本国籍を有すること
(c)国外で生まれたこと
②について:
国籍留保の意思表示は、
天災その他届出人の責めに帰することのできない事情のない限り、出生の日から3か月以内に、
原則として父又は母から出生届とともに届け出なければならない。(戸籍法104条1項、2項)
天災その他届出人の責めに帰することができない事由⇒届出をすることができる時から14日以内に国籍留保の届出をしなければならない。(同条3項)
●戸籍法104条3項にいう、届出人の「責めに帰することができない事由」:
①国籍留保の制度趣旨、目的
②同項が「天災」と例示
⇒
客観的にみて国籍留保の届出をすることの障害となる事情やその程度を勘案して決せられるべきもの。
最高裁H29.5.17:
父母が戸籍に記載されておらず、父母の本籍及び戸籍上の氏名がないという事情だけでは、客観的にみて、子に係る国籍留保の届出をすることの障害とならないことは明らかである旨を判示。
判例時報2373
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