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2018年8月25日 (土)

船舶油濁損害賠償保険法と国土交通大臣等の要件適合確認義務(否定)

東京地裁H28.3.3      
 
<事案>
宮崎市に所在する漁業協同組合である原告が、
香港に本拠地のあるA社が所有するベリーズ船籍の船舶(本件船舶)が山口県から中国に向かう途中で漂流し宮崎市の海岸沖に座礁し、撤去されないまま放置

被告国に対し、
A社の所有する本件船舶が出港するに当たっては、船舶油濁損害賠償保障法(「油賠法」)上、保障契約の有効性を審査すべきであるところ、
A社から保険会社Bに対する保険料が未だ着金せず、保険契約の効果が生じていないにもかかわらず、一般船舶保障契約証明書を交付し、当該審査義務を怠り、公務員の職務上の注意義務に違反
国賠法に基づき、損害賠償として撤去費用相当額の支払を求めた

原告は、本件に先立ち、
A社及び保険会社Bに対して、
本件船舶の撤去費用の支払を求めて、宮崎地方裁判所に訴えを提起し、
A社については、
A社が公示送達による呼び出しを受けたにもかかわらず、出頭しなかった⇒認容判決
保険会社Bについては、
保険会社Bの仲裁合意の抗弁を認め、訴えを却下。
 
<主張>
被告国に対し、
保険契約の有効性を判断すべき油賠法上の義務がある
②油倍法上の義務がないとしても、運輸局の運用によれば、保障契約の有効性を確認すべき義務がある
 
<判断>
①油賠法上、国土交通大臣等には保障契約の有効性を審査すべき権限がない
保障契約の有効性を基礎づける入金確認のような書面を求めることは油賠法及び同法施行規則上の根拠を欠く事実上の行為であり、政治的・技術的裁量に属し、本件では任意の提出を促しても実効性を有するとはいえない

いずれの義務も否定し、請求を棄却。
 
<解説>
●油賠法は、
船舶に積載されていた油によって船舶油濁損害が生じた場合における船舶所有者等の責任を明確にし、及び船舶油濁損害の賠償等を保障する制度を確立することにより、被害者の保護を図り、あわせて海上輸送の安全な発達に資することを目的とし(油賠法1条)、
油濁損害が生じた場合におけるタンカー及び一般船舶の所有者が、その損害の賠償責任を負う旨を定める(同法3条、39条の2)

油濁損害額は、莫大になり得る可能性がある

油賠法において、タンカー及び一般船舶の所有者の責任を制限する(同法5条、6条、8条、39条の3等)などの考慮がされているほか、
日本国籍を有するタンカーを2000トン超えるばら積みの油の輸送の用に供するため、日本国籍を有する一般船舶が国際航海をするため、日本国籍を有する一般船舶以外の一般船舶などが本邦内の港から出港などするためには、
それぞれこの法律で定める油濁損害賠償保障契約を締結しなければならない。

タンカー等の航行に当たって保障契約の締結を強制。

本件では、このような保障契約が有効に成立しないままに、一般船舶が出航し、海難事故に遭遇⇒保障契約による保障が得られなかった⇒保障契約締結に関する国の審査手続が問題。
 
●国土交通大臣:
一般船舶について保障契約を保険者等とする締結している者の申請があったときは、当該一般船舶について保障契約が締結されていることを証する書面を交付しなければならない(同法39条の6、17条1項)。 

●本判決は、油賠法の文言、一般船舶保障契約証明書の交付に必要な申請書の様式の内容

国土交通大臣等には、保障契約の有効性など実体的な要件判断をする権限や義務はなく、単に油賠法の要件に適合する保障契約であるかどうかという形式的な権限しか与えられていないと判断。

判例時報2371

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