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2018年8月 2日 (木)

告発等を行った私立小学校の教頭の普通解雇(肯定)

東京高裁H28.12.7      
 
<事案>
Y4は、X1には、
パワーハラスメントを受けたとの虚偽の事実を述べて慰謝料請求をしたこと(解雇事由1
不当な目的で本件告発を行い、Y4及びY1の名誉と信用を毀損したこと(解雇事由2
小中高一貫教育を掲げるY4の方針に公然と反対し、多数の教員に虚偽の事実を述べてY4及びY1の名誉と信用を毀損したこと(解雇事由3
等の解雇事由がある
⇒X1を主位的に懲戒解雇し、予備的に普通解雇した。

X1は、Y4に対し、本件解雇は無効であるとして、本件小学校の教頭としての地位の確認を求めるとともに、
Y1ないしY3に対し、本件告発等に対する報復行為として本家解雇その他嫌がらせを行った共同不法行為に基づく損害賠償を求めて本件訴訟を提起。
 
<原審>
本件解雇は解雇事由が存在しない又は解雇権を濫用するもので無効
⇒X1が雇用契約上の地位にあることを確認するとともい、未払賃金の支払を認めた。
but
X1の損害賠償請求は棄却。
   
Y4が控訴
X1も、原審敗訴部分の取消し及び賞与相当額の支払等を追加して控訴。
 
<判断> 
懲戒解雇としては無効であるが、普通解雇としては有効
⇒X1の地位確認請求及び未払賃金請求を棄却。
 
●解雇事由1:
面談に同席することは本件小学校の教頭としての職責に属する行為であり、
X1は、自らが希望する形での業務監査にY4が応じることを条件に面談に同席すると述べて同席を拒んだ上、最終的には自らの意思で面談に同席
客観的にパワーハラスメントにあたると評価しうる状況ではなかった

X1が謝罪及び慰謝料200万円を請求したことは、事実の評価を曲げて自らの主張を通そうとするものであって、普通解雇事由に該当

●解雇事由2:
本件告発は監督権限を有する県に対し(私立学校振興助成法を参照)、財務状況の調査に加え、横領・背任等の刑罰法令に違反する行為があるとして、Y1及びY2を理事から解職することを求めるもの
Y1及びY2の名誉を傷つけるのみならず、Y4の信用を害し、業務に支障を生じさせるおそれがある
根拠なく誤った告発を行うことは、Y4の定める普通解雇事由に該当

Y4において財務状況の悪化の懸念を裏付ける一応の状況があり、県によりサッカースクールとの業務委託契約の見直し等の指導
but
本件告発は、いずれも横領・背任等の刑事法令に違反するものとは認められず、根拠は薄弱で、容易に確認できる事項の確認もなされていない(ex.X1は、Y4から財務諸表の分析の機会を与えられながらこれを行っていない)
X1の本件告発は普通解雇事由に該当する。

●解雇事由3:
X1は十分な調査と裏付けのないまま、本件小学校の教員ほぼ全員を一同に集め、 Y1及びY2が刑罰法令に反する行為を行っており、本件小学校の財務状況が極めて悪化しているとの虚偽の事実を指摘して、本件小学校を独立採算制とするという、小中高一貫教育を行っているY4の経営方針の根幹に触れる持論を展開
普通解雇事由に該当
 
解雇事由1ないし3に基づく解雇が社会通念上相当性を欠くとはいえない
 
<解説> 
解雇の合理性及び相当性に加え、公益通報法3条によって解雇が無効となるかも争点とされた。
公益通報法3条は、通報が不正な目的でない限り、公益通報をしたことを理由として行った解雇を無効としている。
but
その要件は通報先によって異なっている。
労務提供先等に対する通報:通報対象事実が生じたと思料すれば足りる
権限を有する行政機関に対する通報:通報対象事実が生じたと信ずるに足りる相当の理由を必要
その他の外部通報先への通報:さらに具体的な用件。

通報対象事実が生じたと「信ずるに足りる相当の理由」
単なる憶測や伝聞等ではなく、通報内容を裏付ける内部資料等がある場合や関係者による供述がある場合をいい、
通報者は労働者として通常知りうる範囲内で、これらの要件を立証する責任を負う

本判決:
X1の本件告発は、薄弱な根拠に基づき、容易に可能な裏付け調査すら行わないまま行われたものであり、
通報対象事実である横領又は背任の事実が生じたと信ずるに足りる相当の理由があったとは認められない

公益通報法3条2号の適用を否定

判例時報2369

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