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2018年8月 6日 (月)

自然環境保護団体等の原告適格が否定された事例

札幌高裁H30.1.17      
 
<事案>
リゾート事業を営む会社がスキー場建設計画に伴い、
東大雪支署長(国)から国有財産法18条6項の規定による国有林野の使用許可処分(「本件使用許可」)を、
北海道知事から北海道自然環境等保全条例30条1項の規定に依る開発行為の許可処分を
それぞれ受けた。

十勝地方の自然保護団体、エゾナキウサギの研究者及びエゾナキウサギの保護活動を目的とする組織の代表者(「原告ら」)が、国及び北海道に対し、
前記各処分は、生物の多様性に関する条約(「生物多様性条約」)に違反し無効であることの確認
を求めるとともに、
国及び北海道に対し、国賠法1条1項に基づき、慰謝料の支払を求めた事案。 
 
<争点>
本件各処分の名宛人でない原告らが、行訴法36条にいう本件各処分の無効確認を求める「法律上の利益を有する者」に当たるか? 
 
<規定>
行訴訟 第36条(無効等確認の訴えの原告適格) 
無効等確認の訴えは、当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないものに限り、提起することができる。

行訴法 第9条(原告適格)
処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。
2 裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。
 
<解説>
行訴法36条にいう「法律上の利益を有する者」の意義については、取消訴訟の原告適格についての同法9条1項の「法律上の利益を有する者」と同義であり、
当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれあるある者をいい、
当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、かかる利益も右にいう法律上保護された利益に当たり当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有する
(最高裁H4.9.22)

平成16年の行訴法改正により新設された同法9条2項は、行政処分の名宛人でない第三者について原告適格の有無を判断する際の解釈指針を規定しているところ、
最高裁判所(最高裁H17.12.7)は、いわゆる小田急高架事件において、
処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては、当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨および目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮し、この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては、当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び及び性質並びにこれが害される態様及び程度を勘案すべきものである」
などとして、前記解釈指針に従って原告適格を判断すべきである旨を説示。
 
<原審>
①本件使用許可について、原告らの主張する生物多様性が保全された良好な自然環境を享受する利益は、不特定多数の者が等しく享受することができる内容及び性質を有するものであり、
その利益を享受する主体の外延に何らの限定も付すことができない

専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめるべき不特定多数の者の具体的利益ないし一般的公益そのもの

本件使用許可を定めた行政法規が、前記利益をそれが帰属する個々人の個別的利益を含めるものと解することはできず、また、原告らの主張する本件使用許可の手続きで意見を述べる権利についても、法令がこのような権利を地域の住民等に手続上の権利ないし個別的利益として付与し、法律上保護すべきものとする趣旨を含むものと解することはできず
原告らの主張する生物多様性条約及びそのガイドライン等を踏まえてもその結論は変わらない。

原告らの原告適格を否定。

②本件開発許可についても、同様の理由で、原告適格を否定。
 
<判断>
原審の判断を支持。 
生物多様性条約及びそのガイドラインの規定から、
公益とは全く別のナキウサギ研究集団(セクター)ないし地域の集団(セクター)の一員として個別的利益を侵害された旨の原告らの控訴理由について、
生物多様性条約が、地域の住民や生物多様性条約にいう知識を有する者等に対して、自国の国内法令によらず直接、手続上の権利なしい個別的利益を付与していると解することはできない

判例時報2370

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