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2018年8月21日 (火)

成年後見人による横領⇒家庭裁判所の後見監督等を理由に国賠請求

東京高裁H29.4.27      
 
<事案>
原告の母の成年後見人として選任された司法書士が、成年後見人として預かり保管中の預金等から約6750万円を横領
家庭裁判所の裁判官は成年後見人の適格性を十分に調査せずに成年後見人を選任し、また、選任後も、裁判官は適切な監督を怠ったとして、国賠法1条1項に基づき、国に対して損害賠償請求。 
 
<解説>
●後見関係事件における裁判官の判断に関する国賠法上の違法性の判断の枠組み 
裁判官がした争訟の裁判に関する国賠法上の違法性に関する判断枠組について

当該裁判官が違法又は不当な目的をもって裁判をしたなど、裁判官がその付与されて権限の趣旨を明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情がある」場合にのみ国賠法上の損害賠償責任が肯定される(最高裁昭和57.3.12)。

裁判官の争訟の裁判に対する判断が違法と判断される場合は、行政主体の公権力の行使を比べて限定されるとの見解が採用されている(「違法限定説」)。
but
前記判示は、「争訟の裁判」について判示⇒その射程は「争訟の裁判」以外には及ばない。

「争訟の裁判」とは、「権利又は法律関係の存否について、関係当事者間に争いがある場合に、当事者の一方の申立てに基づいて、裁判所又は裁判官が双方当事者を手続に関与させたうえで、公権力をもってその争いを裁断する作用ないし手続をいうもの」

家庭裁判所の裁判官が行う成年後見人の選任や後見監督といった当事者間に紛争があることを予定していない事件類型がこの「争訟の裁判」に当たらないことは明らか。

「争訟の裁判」に当たらない裁判官の判断に関する国賠法上の違法性の判断枠組みについては、「当該手続に当事者がどのような形で参画できるか、不当な裁判の是正のための不服申立制度としてどのような手続が整備されているかなどの要素も右の判断に影響せざるをえない」と考えられており、
当該裁判官の判断の法的性質等に応じて、個別に検討していく必要がある。

◎後見監督と類似した手続である不在者財産管理事件における財産管理人の監督に関し、長期間監督を怠ったために財産管理人による横領を看過したと主張された事案:
・・・独立した判断権を有し、かつ、独立した判断を行う職責のある裁判官たる家事審判官の職務行為として行われる

家事審判官による不在者財産管理人の監督につき職務上の義務違反があるとして国賠法上の損害賠償責任が肯定されるためには、
争訟の裁判を行う場合と同様に、家事審判官が違法又は不当な目的をもって権限を行使し、又は家事審判官の権限の行使の方法が甚だしく不当であるなど、家事審判官がその付与された趣旨に背いて権限を行使し、又は行使しなかったと認め得るような特別の事情があることを必要とする。
(東京高裁H22.10.7) 

◎後見監督事件について、 家事審判官が長期にわたって成年後見人から報告等を求めなかったために成年後見人の横領を阻止できなかったと主張した事案:
・・上記権限の行使等の具体的なあり方は、個々の事件について独立した判断権を有し、かつ、その職務を負う家事審判官の広範な裁量に委ねられているものと解するのが相当である。
このような後見監督に関する家事審判官の職務行為の内容、特質⇒争訟の裁判を行う場合と同様の基準。(大阪地裁堺支部H25.3.14)
 
◎他方で、後見監督に関して、「争訟の裁判」と同様の判断枠組みを採用しなかった裁判例:
家事審判官が職権で行う成年後見人の選任やその後見監督は、審判の形式をもって行われるものの、その性質は後見的な立場から行う行政作用に類するものであって、争訟の裁判とは性質を異にする

争訟の裁判に関する判断枠組みは採用できず、
家事審判官の成年後見人の選任や後見監督が被害を受けた被後見人との関係で国賠証1条1項の適用上違法となるのは、
具体的事情の下において、家事審判官に与えられた権限が逸脱されて著しく合理性を欠くと認められる場合に限られる。
(広島高裁H24.2.20)
 
<判断> 
成年後見人の選任に関する判断について:
「同審判に対する不服申立てが許されない点を考慮しても」争訟の裁判に対する違法性の判断枠組みを採用するのが相当。

後見監督についても、
家庭裁判所による後見監督が「独立した判断権を有し、かつ、独立した判断を行う職責を有する裁判官の職務行為として行われるものであることに鑑みれば」、争訟の裁判に対する違法性の判断枠組みを採用することが相当。
 
<解説>
後見監督は、民事訴訟等とは異なり、当事者間の紛争に対して公権力をもって裁断するものではなく、家庭裁判所が成年後見人に選任することによって成年後見人に付与した法的権限が逸脱・濫用されていないかどうかについて、当該成年後見人から後見事務についての報告を求めたり、あるいは、成年被後見人の財産を調査したりするものであって、その報告徴収権や調査権といった点に着目すれば、各種業法に基づく行政庁の規制・監督権限に類するものとも見える。
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行政庁による規制・監督:
例えば、各行政府省の大臣等に一元的にその規制・監督権限が付与されるどして、統一的な権限の行使が予定。

後見監督:
独立した判断権を有する裁判官が、個別の成年後見人に対して、その事案において必要な範囲において監督権限を行使した上で、必要に応じて、一定の処分を命じたり(民法863条2項)、更には成年後見人を解任したり(民法846条)するといった判断を行うことが予定。

その判断は、飽くまでも個別具体的な事案における担当裁判官の独立した判断に委ねられている

判例時報2371

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