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2018年8月27日 (月)

退職強要ハラスメント等の事案

東京高裁H29.10.18      
 
<事案>
Y1(会社)の従業員であったX1ないしX4が、Y1とその代表者Y2に対し、次の請求を行なった。
① Xらは在職中にY2から退職を強要するハラスメントを受けたと主張し、Y2に対し不法行為に基づき、Y1に対し会社法350条に基づきそれぞれ慰謝料等330万円等
②X1及びX2は、退職直前の夏季賞与の減額分が無効であると主張し、Y1に対し減額分等
③Xらは、いずれも退職願を提出し、会社都合退職に基づく係数によって算定された退職金との差額分が支給されていないと主張し、Y1に対し差額分等
④X2は、同人が受けた降格の懲戒処分が無効であると主張し、Y1に対し同処分により減額された賃金相当額等
の支払を求めた。
 
<争点>
①Y2がXらに対し退職を強要するハラスメントをしたかどうか
②Y1による夏季賞与の減額が無効か
③Xらの退職は自己都合退職か会社都合退職か
④X2に対する降格の懲戒処分が無効か
 
<規定>
労働契約法 第15条(懲戒)
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。
 
<原審>
一部認容 
 
<判断>
●原審の認容部分に加え、
①のX1・X3・X4の慰謝料を増額し
③のX1・X3・X4の退職金支払請求を認容
 
●④について:
降格の懲戒処分は、
実体面において処分の前提事実を欠き、就業規則の懲戒事由該当性の判断を誤るものであるとともに、
手続面においても、就業規則及びこれに基づく賞罰規定に違反するもので著しく不公正。 

降格処分は、
客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められない
無効
 
●②について:
Y1は賃金規定において賞与の支給方法は別に定めると規定し、年度当初に賞与支払基準を決めていたが、
その支払基準は従業員の評点を含む
⇒その部分は会社の裁量に委ねられている。
but
評定について裁量権の逸脱濫用があれば査定は無効。

減額の理由とされた責任があるとは認められず、減額の査定部分は裁量権の逸脱濫用があって無効
 
●①について:
X2に対し賞与を正当な理由なしに減額し、無効な降格処分を行うなどしており、退職を強要するものであって、違法な行為。 

X1について:
X2が正当な理由がない懲戒処分を受けることを認識し、自身も正当な理由なく賞与を減額されている
一連の行為が退職を強要するもの

X3・X4について:
降格の懲戒処分、賞与の減額査定を受けていない
but
Xら女性4名のみの職場において、X1・X2に対しハラスメントの違法行為があり、その内容が同年代の女性に対する退職勧奨行為
X3・X4にも退職勧奨行為がされているものと当然に理解される
同人らに対する違法行為でもある。
 
●③について:
退職強要行為により退職を余儀なくされた⇒会社都合退職と同視でき、退職金規程の会社都合退職に当たる。 
 
<解説>
●争点④(降格の懲戒処分の有効性) 
降格は懲戒処分の1つ。
懲戒処分(労契法15条)の有効要件
懲戒処分の根拠規定の存在
懲戒事由への該当性
相当性
 
●争点②(賞与減額の有効性) 
賞与の請求権:
就業規則によって保障されているわけではなく、
各時期の賞与につき労使の交渉又は使用者の決定により算定基準・方法が定まり、算定に必要な成績査定もなされて初めて発生。
but
算定基準・方法が規定ないし決定
⇒それらに従って成績査定を実施するように請求できるし、
査定を行わない場合には当該労働者にとって確実に得られるはずの査定点による請求もすることができる。

 
●争点①(退職勧奨による不法行為の成否) 
職場のパワーハラスメントの行為類型:
①暴行・傷害(身体的な攻撃
②脅迫、名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃
③隔離・仲間はずし・無視(人間関係からの切り離し
④職務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求
⑤業務上の合理性がなく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じられることや仕事を与えないこと(過小な要求
⑥私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害
が挙げられる。

社会的相当性を逸脱した態様での半強制的ないし執拗な退職勧奨行為は不法行為を構成し、当該労働者に対する損害賠償責任が生じる
懲戒権の濫用と評価される場合も、処分の無効に加えて、使用者(および責任者)の不法行為(民法709条)を成立させることがある
 
●争点③(会社都合退職の成否) 
退職金請求事件において、退職金規程が退職事由において異なる支給率を定めている場合の退職事由の主張の要否:
自己に有利な加減額事由は、この適用を主張する側が主張立証。
当該退職が退職金支給規程の自己都合か会社都合かの判断:
就業規則に規定があればこれによる。

特段の定めがない場合:
退職に至る主たる原因が労働者側の事情やその主観的意思によるのか、
会社側の経営上の必要や会社側の違法行為が大きいのか
により、

会社の違法な行為により退職を余儀なくされた⇒会社都合と同視

判例時報2371

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