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2018年7月23日 (月)

労働契約法20条の解釈とその違反が問題となった事案

東京地裁H29.9.14      
 
<事案>
被告である日本郵便株式会社(Y社)との間で有期労働契約を締結した原告X1からX3まで(「Xら」)が、
無期労働契約を締結しているY社の正社員と同一の業務に従事していながら、手当等の労働条件について正社員と差異があることが労契法20条に違反⇒
Y社社員給与規程及びY社社員就業規則の各規定がXらにも適用される労働契約上の地位にあることの確認を求めるとともに、
公序良俗に反すると主張し、同条施行前については不法行為による損害賠償請求権に基づき、
同条施行後については、主位的には同条の補充的効力を前提とする労働契約に基づき予備的には不法行為による損害賠償請求に基づき諸手当の正社員との差額及びこれらに対する遅延損害金の支払を求めた。 
 
<規定>
労働契約法 第20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない
 
<争点>
①労契法20条の成否
②労契法20条の効力
③公序良俗違反の有無
④Xらの損害
 
<判断>
●争点①:労契法20条の成否 
本件において問題となる労働条件の相違は、いずれも正社員と契約社員とで適用される就業規則や給与規程が異なるために生じている
期間の定めの有無に関連して生じたもの

労契法20条の不合理性の判断について:
問題とされている労働条件の相違が不合理と評価されるかどうかを問題としている⇒合理的な理由があることまで要求する趣旨ではない。

不合理性について、
労働者において、相違のある個々の労働条件ごとに、当該労働契約が期間の定めを理由とする不合理なものであることを基礎づける具体的事実(評価根拠事実)についての主張立証責任を負い、
使用者において、当該労働条件の相違が不合理であることの評価を妨げる事実(評価障害事実)についての主張立証責任を負い、
主張立証にかかる労契法20条が掲げる諸要素を総合考慮した結果、当該労働条件の相違が不合理であると断定するに至らない場合には、当該相違は同条に違反するものではない。

労契法20条は、
有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違について、
①職務の内容、
②当該職務の内容及び配置変更の範囲、
③その他の事情
を考慮要素としており、
同条は、同一労働同一賃金の考え方を採用したものではなく、同一の職務内容であっても賃金をより低く設定することが不合理とされない場合があることを前提としており、
有期契約労働者と無期契約労働者との間で一定の賃金制度上の違いがあることを許容するもの。

Xら契約社員と労働条件を比較すべき正社員は、担当業務や異動等の範囲が限定されている点で類似する新一般職とするのが相当。

旧人事制度においては、Xら契約社員と比較すべき正社員は、旧一般職とするのが相当。

正社員と契約社員との労働条件の相違について、不合理性が認められたの
年末年始勤務手当、住居手当、夏季冬季休暇、病欠休暇

不合理性が認められないとされたの
外務業務手当、早出金等手当、祝日給、夏季年末手当、夜間特別勤務手当、郵便外務・内務業務精通手当
 
●争点②:労契法20条の効力 
労契法20条は、訓示規定ではなく、同条に違反する労働条件の定めは無効であり、その定めに反する取扱いには、民法709条の不法行為が成立し得る。
but
労契法20条の法的効果として補充的効力は認められない。 
 
Y社において、正社員と契約社員に適用される就業規則及び給与規定等が、別個独立に存在し、前者がY社の全従業員に適用されることを前提に、契約社員については後者がその特則として適用されるという形式とはなっていない

就業規則、給与規定等の合理的解釈として、正社員の労働条件が契約社員に適用されると解することはできない
 
正社員と契約社員の労働条件の相違について年末年始勤務手当、住居手当、夏季冬季休暇及び病気休暇についての相違は、平成25年4月1日以降(住居手当は平成26年4月以降)労契法20条に違反し、Xらに対する不法行為を構成。
 
●争点③:公序良俗違反の有無 
労契法20条施行の前後を通じ、公序良俗に反するとはいえない。
 
●争点④:Xらの損害 
年末年始勤務手当の相違にかかる損害:旧一般職及び新一般職に対する支給額の8割相当額
住居手当の相違にかかる損害:正社員の支給要件を適用して認められるべき住居手当の6割相当額
 
<解説>
●争点③について 
労契法20条施行前の裁判例である丸子警報器事件(長野地裁上田支部)では、
非正規社員の賃金額が、同じ勤務年数の正社員の8割以下となるときは、許容される賃金格差の範囲を越え、公序良俗違反となるとした。

本件:
労契法施行の前後において、労契法20条に違反する労働条件の相違を含め、正社員と契約社員の労働条件の相違が公序良俗違反となることを基礎付ける事実を認めるに足りる証拠はない
 
●争点④について 
本判決:
有期契約労働者に当該労働条件が全く付与されていないこと、又は無期契約労働者との間の給付の質及び量の差異をもって不合理であると認められる労働条件の場合(本判決の年末年始勤務手当及び住居手当)には、種々の要素(人事制度との整合性、昇任昇給の経路や配置転換等の範囲の違い等)を踏まえて決定される給付されるべき手当額を証拠に基づき具体的に認定し、それとの差額をもって損害と認定。
but
それは、その決定過程に照らして極めて困難。

民訴法248条に従い、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定すべき。

年末年始勤務手当については新旧一般職の支給額の8割相当額
住居手当は正社員の支給要件を適用して得られる額の6割相当額

判例時報2368

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