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2018年7月 1日 (日)

損害賠償義務の履行を受けている場合の都道府県知事の公害健康被害の補償等に関する法律に基づく障害補償費の支給義務(消極)

最高裁H29.9.8      
 
<事案>
公害健康被害の補償等に関する法律(「公健法」)4条2項により水俣病である旨の認定を受けたXが、同法25条1項により傷害補償費の支給を請求⇒処分行政庁である熊本県知事から、Xの健康被害に係る損害は、原告企業との間で行われた損害賠償請求訴訟の結果、原因企業によって全て填補されている⇒同法13条1項に基づき、障害補償費を支給しない旨の決定⇒熊本県を相手に、その取消しと支給決定の義務付けを求めた。 
 
<規定>
公健法 第一三条(補償給付の免責等)
補償給付を受けることができる者に対し、同一の事由について、損害のてん補がされた場合(次条第二項に規定する場合に該当する場合を除く。)においては、都道府県知事は、その価額の限度で補償給付を支給する義務を免れる。
 
<原審>
Xの損害は前訴確定判決に基づく義務の履行により全て填補されている。
but
①公健法13条1項は、損害が填補された場合、その価額の限度で補償給付を支給する義務を免れると規定するにとどまっている。
②同法に基づく補償給付の制度は、純粋な損害填補以外の社会保障的な要素を含むと解されること等
⇒前訴確定判決に基づく義務を原因企業が履行したとしても、熊本県知事が当然に当該補償給付の支給義務を全て免れると解することはできない。

第1審判決のうちXの取消請求を棄却した部分を取り消し、これを認容。
 
<解説>
①立法の経緯等⇒公健法が、損害の填補は民事上解決されるべき問題であることを前提としつつ、それでは訴訟が長期間に及んでしまうことなどの主にが被害者に生じていたことなどの当時の問題を社会的に解決し、早期の救済を図る制度として設けられた
②公健法は、その条文上も、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる著しい大気の汚染又は水質の汚濁の影響による健康被害に係る損害を填補するための補償等を行うことにより、健康被害に係る被害者等の迅速かつ公正な保護及び健康の被害の確保を図ることを目的とし(1条)、同法4条2項の認定に係る被認定者及び認定死亡者に関する補償給付の支給に要する費用に充てるためのものの全部については、特定施設等設置者が納付する特定賦課金を充て(49条2項、62条等)、当該被認定者等が損害の填補を受けた場合における補償給付の免責を認めている(13条)等

同法4条2項の認定を受けた者に対する補償給付が、民事上の損害のみを補償の対象としている。
 
<判断>
公健法4条2項の認定を受けた者に対する障害補償費は、
これらの者の健康被害に係る損害の迅速な填補という趣旨を実現するため、原因者が本来すべき損害賠償義務の履行に代わるものとして支給されるものであり、同法13条1項の規定もこのことを前提とするもの
。 
 
<解説>
X:前訴確定判決で認容された800万円はXの精神的損害に対する慰謝料のみであり、これには逸失利益等の経済的損害は含まれていないと主張。
vs.
前訴においてXらは、損害額は弁護士費用を除き生存者につき3000万円であると主張し、損害の内容として逸失利益、慰謝料及び介護費を挙げたが、各損害項目につき具体的な損害額の主張をしなかった

その請求は、被害者が受けた肉体的・経済的・生活的・家族的・社会的・環境的なものすべての損害を包括的に請求しようとする意図をもった損害賠償請求の方式である、いわゆる包括請求

前記確定判決は、Xの損害の全てについての賠償を原因企業に命じたもの

判例時報2366

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