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2018年7月22日 (日)

不動産は商事留置権の対象になるか(肯定)

最高裁H29.12.14      
 
<事案>
土地所有者である上告人Xが、土地を占有する被上告人Yに対し、所有権に基づき明け渡しを求める事案。 
Y:当該土地につきXに対する運送委託契約上の未払代金債権を被担保債権として商法521条の商人間の留置権を主張
 
<規定>
民法 第295条(留置権の内容) 
他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。

民法 第85条(定義) 
この法律において「物」とは、有体物をいう。

民法 第86条(不動産及び動産)
土地及びその定着物は、不動産とする。

商法 第521条(商人間の留置権)
商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、その債権の弁済を受けるまで、その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した債務者の所有する物又は有価証券を留置することができる。ただし、当事者の別段の意思表示があるときは、この限りでない。
 
<解説>
現行商法521条の文理解釈⇒包含説が素直⇒除外説の論拠が包含説のいう文理解釈を覆し得る程度に合理的なものかという点から検討すべき。

除外説の根拠:
①立法の経緯・沿革:
ドイツ商法典においても、商人間留置権の対象は動産と有価証券であり、不動産が除外。日本の商人間の留置権の定めは、ドイツ法の系譜。
②休競売法の規定:
民法及び商法の留置権の競売手続を定めた明治31年制定の競売法では、動産の競売手続を定めた3条において、競売申立人を「留置権者・・・その他民法の規定に依りて競売をなさんとする者」と定め、「商法の規定」による競売が挙げられていない。
③:当事者の合理的意思:
商人間の取引で一方当事者所有の不動産の占有が移されたという事実のみで当該不動産を取引の担保とする意思が当事者にあるとみるのは困難。
④法秩序全体との整合性:
登記の先後により優先順位が定まるのを原則とする不動産取引において、商人間の留置権のような強力な権利が登記とは無関係に抵当権に優先することを認めれば、不動産取引の安全を著しく害し、担保制度全体の整合性を損なう。
vs.
①現行商法521条は、明治32年制定の商法284条に由来しており、同商法の制定経緯や、明治44年の改正時の政府委員の説明をみると、少なくともこの段階では商法の「物」を民法85条、86条と同じ意味に解していたことがうかがわれること等⇒現行商法の解釈として、民法と異なり不動産を除外しているとは解されない。
②競売法は手続規定⇒その規定に定めがないからといって商法の解釈に当たっての決め手にはならない。
現行民執法59条4項や195条は留置権の契番を民法商法の区別なく規定。
③商取引の必要性は不動産にも存在⇒不動産を商人間留置権の対象に沿わないとはいえない。
④留置権能を有する担保物権である留置権が抵当権より事実上優先することは民事留置権においても同様であり、そのような自体が常に不当であるとも言い切れない。
 
<判断>
商法521条の「物」を民法85条の「物」と別異に解する理由はないとして、その文理解釈から包含説をとることを明らかにした。 

判例時報2368

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