窃盗保護事件における第一種少年院送致決定が著しく不当ととされた事案
大阪高裁H29.7.19
<事案>
当時、定時制高校に在籍(身柄拘束後に退学処分)していた少年が、約2週間のうちに、アルバイト先などにおいて、8回にわたって財布などを窃取したという窃盗の事案。
<原決定>
①常習性のうかがえる非行の悪質性、
②窃盗に対する抵抗感の乏しさ
③広範性発達障害の疑いもある少年の資質上の問題及びそれと非行との結びつき
⇒
父母の注意では窃盗に対する抵抗感が涵養されておらず、資質上の問題に照らすと在宅での監護を継続して問題点を改善除去するのは困難。
⇒少年を第一種少年院に送致。
<判断>
原決定が重視した少年の資質上の問題等について理解を示しながら、
①件数が多いとはいえ、非行の内容が重要ではなく、
②窃盗の常習性についても非行性が固着する段階に至っていない
⇒
軽微な前歴しかなく、保護者によって受け皿が準備されている少年に対して、原審が試験観察に付すなどして在宅処分との優劣を検討せず、直ちに施設内処遇を選択した点を挙げ、処分が著しく不当であるとした。
<解説>
試験観察:少年に対する終局決定を留保し、家庭裁判所調査官が少年の行動などの観察を行うための中間決定によってとられる措置(少年法25条)。
試験観察の不実施に言及した上で、処分不当を理由として少年院送致の処分を取り消した抗告審決定例は少なくない。
判例時報2367
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