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2018年7月 6日 (金)

大学教授に対する懲戒解雇が無効とされた事案

東京地裁H29.9.14      
 
<事案>
学校法人である被告に雇用された大学教授である原告が、被告から懲戒解雇
懲戒解雇が無効であるという仮処分確定後に予備的に普通解雇

これらの解雇が無効であると主張して、
被告に対し、地位確認、 未払賃金及び賞与の各支払を求めた。
懲戒解雇の対象となった行為:
①原告が被告から研究目的で貸与され、原告の研究室に置かれていたパソコンの中に、原告が配偶者以外の女生との性交の場面を自ら撮影した動画を保存。
②本件動画を入れた外付けハードディスクを学内外に持ち歩いて研究室に置かれていたパソコンにコピーしたことが、被告のコンピュータ利用規則及び就業規則に違反。

懲戒解雇を無効とする仮処分事件の確定後に被告が行った予備的な普通解雇の対象となった事由:
前記①②に加え、
③懲戒解雇の2年以上前に戒告処分を受けた上で学部長を解任され、商学部から講義を持たない教育研究推進機構に異動される原因となった同僚及び職員に対する恫喝的な言動
④原告が教育研究j推進機構への異動後、約2年半にわたり大学に出勤せず、その間の業績が低下している
⑤原告が被告に届出をせずに副業をしていた
 
<解説>
予備的解雇については、主位的解雇の意思表示が撤回され又は裁判によりその無効が確定されなくても許される(最高裁H8.9.26)。

使用者の設備の目的外使用については、
私立専門学校の教員が学校のパソコン及びメールアドレスからいわゆる出会い系サイトに登録し、大量のやりとりを行った事案について、
学校のメールアドレスであることを推知し得るメールアドレスを用いて露骨に性的関係を求める内容のメールを送信し、同メールの内容を第三者が閲覧可能な状態においたことは学校の品位体面、名誉信用を傷付けるもの
私用メールの送信の労力を職務に宛てればより一層の効果が得られた
懲戒解雇が有効(福岡高裁)。

風紀紊乱について、
独身の女性事務員が配偶者のいる男性社員と恋愛関係になり、取引先を含めた噂となり男性社員の妻からも会社に苦情が寄せられるなどした事案:
懲戒事由には該当するものの会社の企業運営に具体的な影響を与えたものとはいえない懲戒解雇無効(旭川地裁)
 
<規定>
労働契約法 第一五条(懲戒)
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

労働契約法 第一六条(解雇)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
 
<判断>   
●懲戒解雇について 
本件動画を外付けハードディスクに入れて持ち歩き研究室内のパソコンにコピーをして保存した行為が懲戒事由に該当する。
but
研究室において本件動画を作成したものではなく、自宅で作成したデータを誤って研究室内のパソコンにコピーしてしまったという事実関係を前提に、
本件動画が外部に流出したことはなく実際に被告の社会的名誉及び信用が侵害されたものではない
②2度目の懲戒処分ではあるが以前の戒告処分の事由となった行為とは種類が異なる
本件動画のデータの削除は容易

懲戒解雇は重きに失するものとして相当性を欠く
懲戒権を濫用したものとして無効
 
●予備的は普通解雇 
①原告が過去に同僚教員等に不適切な言動を取ったことは認定しつつも、教育研究推進機構へ異動としなった後は同僚教員や教職員との接触がほとんどない
②研究室に出勤しなかったことについても被告がこれを認容している面があった
③研究業績の低下についても就業規則上の直近5年間に研究業績のない選任教員に対する指導がなされるほどではなかった
無届事業についても別個の懲戒処分の対象となるとはしながら、直ちに解雇事由には該当しない
無効(労契法16条)
 
●賞与 
就業規則にその支払に関する規定が置かれている場合であっても、通常は使用者が会社の業績等に基づき算定基準を決定し又は労使で金額を合意したときに初めて具体的な権利として発生
本件においては、賞与の算定基準について夏季と冬季で基本給に同一の支給係数を乗じて賞与を支給するという労使慣行
支給係数が明らかな限度で請求が認容

判例時報2366

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
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