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2018年7月 3日 (火)

親権者の再婚と非親権者が負うべき生活保持義務の内容

福岡高裁H29.9.20      
 
<事案>
離婚時に子の親権者と定められた実親と再婚した者が子との間で養子縁組をした場合に、非親権者である実親が子に対して負うべき生活保持義務の具体的内容が問題となった事案。 

X(元夫・医師)とY(元妻)は、元夫婦であるが、両者間の子らの親権者をYと定めるとともに、XがYに養育費として子1人当たり月額10万円を支払うことなどを合意した訴訟上の和解合意に基づき協議離婚。
その後Yが再婚、その再婚相手と子らが養子縁組。
Xは、前記養子縁組の事実を知り、前記和解において合意された子らの養育費の免除ないし相当額の減額を求め、調停申立て⇒調停不成立。
 
<原審>
養親らの養子に対する扶養義務は、生活保持義務
親権者とならなかった実親の扶養義務は、養親らが負う生活保持義務に後れる特殊な生活保持義務に過ぎないのであり、その意味では生活扶助義務に近く、

養親らの資力が十分でなく、養親らだけでは養子の健康で文化的な最低限度の生活を維持できなくなったときに、養子は親権者とならなかった実親に対して扶養請求することができる


子らの生活保護制度による最低生活費を算定し、養親らの基礎収入額と比較するなどして、Xの支払うべき養育費を、子らの生活費の不足分である1任当たり月額7734円に変更。
 
<判断>
親権者である実親が再婚し、再婚相手が子らと養子縁組したことは、養育費をみ直すべき事情に該当し、
養親らだけでは子らについて十分に扶養義務を履行することができないときは、非親権者である実親は、その不足分を補う養育費を支払う義務を負う。

その額は、生活保護法による保護の基準が一つの目安となるが、それだけではなく、子の需要、非親権者の意思等諸般の事情を総合的に勘案すべき。

まずは、生活保護制度の保護の基準に照らし、養親らにおいて未成年者に対し十分に扶養の義務を履行することができないか検討。

養親の扶養義務の根拠の1つが養子縁組の当事者の意思にある

養親らだけでは十分に子らへの扶養の義務を履行することができないかを判断するにあたっては、非親権者である実親について合理的に推認される意思をも参酌すべき。

生活保護制度の保護の基準では、学校外活動費は教育扶助の対象となっていないが、相手方の学歴、、職業、収入等に照らし、相手方には、未成年者らに人並みの学校外教育等を施すことができる程度の水準の生活をさせる意思はあるものと推認することができる。

その他、これまでの未成年者らの生活水準との連続性など、諸般の事情を考慮。

相手方の支払うべき養育費は、未成年者1人当たり月額3万円とするのが相当。
Yの育児休業期間中は子1人当たり4万円とするのが相当。
 
<解説> 
●離婚時に子の親権者と定められた実親と再婚した者が、子との間で養子縁組

養子は、
①養親の嫡出子としての身分を取得するとともに
②非親権者である実親と養子との法律関係(実親子関係)も存続。

親権者の再婚相手は子の養親としての扶養義務を負い、
非親権者は、実親としての扶養義務を負う。 

親権者である一方の実親が再婚し、その再婚相手と子が養子縁組をそたことは、扶養に関する協議又は審判の変更又は取消をする要件である「事情に変更を生じたとき」(民法880条)に該当。

養親と実親の扶養の程度は異なる。
養子縁組における合意ないし当事者の意思(子の養育についての扶養を含めて全面的に引き受けるという合意ないし意思)、又は、
未成年者養子制度の本質等


第一次的な扶養義務を負うのは養親であり、
養親らの資力の点から養親において十分に扶養の義務を履行できない場合に限って、実親が二次的な扶養義務を負う

 
●何をもって、養親らにおいて十分に扶養の義務を履行できないとするか? 

A(原審):養親らの資力が十分ではなく、養親らだけでは養子の健康で文化的な最低限度の生活を維持できなくなったときであって、子の最低生活費にも不足する場合

B:特段の事情がない限り、養育費支払義務を免れる

C:個別具体的に判断

本決定は、Cの見解を採用し、
生活保護義務を基本としてながらも、相手方の学歴、職業、収入、これまでの未成年者らの生活水準との連続性など、
諸般の事情を考慮して、実親の負う養育費の支払額を定めたもの。

判例時報2366

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
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