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2018年7月15日 (日)

検証許可状⇒パソコンからインターネットに接続し、メールサーバーにアクセスしメールの送受信歴及び内容を保存(違法)

東京高裁H28.12.7      
 
<事案>
被告人が、有印公文書である国立大学の学生証2通、危険物取扱者免状1通及び自動車運転免許証2通並びに有印私文書である私立大学の卒業証書2通をそれぞれ偽造し、さらに
共犯者らと共謀の上、建造物損壊3件及び非現住建造物等放火1件の各犯行に及んだ。
 
被告人 前記各事件への関与を否定。

弁護人は、捜査機関が行ったパーソナルコンピュータの検証には重大な違法⇒違法収集証拠排除の主張。 
 
<規定>
刑訴法 第二一八条[令状による差押え・捜索・記録命令付捜索・検証・身体検査、通信回線接続記録の複写等]
差し押さえるべき物が電子計算機であるときは、当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、当該電子計算機で作成若しくは変更をした電磁的記録又は当該電子計算機で変更若しくは消去をすることができることとされている電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから、その電磁的記録を当該電子計算機又は他の記録媒体に複写した上、当該電子計算機又は当該他の記録媒体を差し押さえることができる。

刑訴法 第二二二条[準用規定等]
第九十九条第一項、第百条、第百二条から第百五条まで、第百十条から第百十二条まで、第百十四条、第百十五条及び第百十八条から第百二十四条までの規定は、検察官、検察事務官又は司法警察職員が第二百十八条、第二百二十条及び前条の規定によつてする押収又は捜索について、第百十条、第百十一条の二、第百十二条、第百十四条、第百十八条、第百二十九条、第百三十一条及び第百三十七条から第百四十条までの規定は、検察官、検察事務官又は司法警察職員が第二百十八条又は第二百二十条の規定によつてする検証についてこれを準用する。ただし、司法巡査は、第百二十二条から第百二十四条までに規定する処分をすることができない。

刑訴法 第一二九条[検証上必要な処分]
検証については、身体の検査、死体の解剖、墳墓の発掘、物の破壊その他必要な処分をすることができる。
 
<本件検証>
神奈川県警の警察官は、刑訴法218条2項のいわゆるリモートアクセスによる複写の処分が許可された捜索差押許可状に基づく、当時の被告人方を捜索し、本件パソコンを差し押さえた。
but
本件パソコンにログインするパスワードが判明していなかった⇒リモートアクセスによる複写の処分をしなかった

本件パソコンを検証すべき物とする検証許可状の発付を受け、本件パソコンの内容を複製したパーソナルコンピュータからインターネットに接続し、本件パソコンからのアクセス履歴が認められたメールアカウントのメールサーバーにアクセスし、メールの送受信履歴及び内容をダウンロード保存
 
<原審>
本件検証は、「検証すべき物」として本件パソコンが記載されているにすぎない検証許可状に基づく検証における必要な処分としてリモートアクセスを行ったもので、メールサーバーの管理者等の第三者の権利・利益を侵害する強制処分に他ならない。

捜査機関が、このような強制処分を必要な司法審査を経ずに行ったということは、現行の刑訴法の基本的な枠組みに反する違法なもの。 

サーバコンピュータが外国に存在すると認められる場合には、基本的にリモートアクセスによる複写の処分を行うことは差し控え、国際捜査共助を要請する方法によることが望ましく、本件においても、サーバーコンピュータが外国にある可能性が高く、捜査機関もそのことを認識していた⇒この処分を行うことは基本的に避けるべき。
本件検証には、令状主義の精神を没却するような重大な違法がある

本件検証の経過及び内容を記載した検証調書や、本件検証の結果をまとめた各捜査報告書は、本件検証の結果そのもの⇒証拠能力を排除。

弁護人が排除を求めるその余の証拠については、
個々に本件検証との関連性等を検討した結果、
いずれも本件検証と密接に関連するとまではいえない。

証拠排除を否定。
⇒被告人の犯人性を肯定し、有罪判決。
 
<判断>
公訴棄却 
 
<解説>
平成23年の刑訴法改正(「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律」)によっていわゆるリモートアクセスによる複写の処分が導入
but
この複写の処分は、あくまで電子計算機の差押えを行う場合に付加的に認められた処分であり、差押え後に行うことは想定されていない

また、検証(刑訴法128条、218条1項)については、前記法改正によっても、リモートアクセスを許す規定は設けられなかった。 

本判決:
電子計算機を検証対象とした検証許可状に基づき、リモートアクセスに相当する処分を行うことは、現行法上、許容されない

判例時報2367

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