« 面会交流の事案 | トップページ | 危険運転致死傷罪の目的の有無が問題となった事例 »

2018年6月23日 (土)

普通保険約款の定めと免責事由が問題となった事案

神戸地裁H29.9.8      
 
<事案>
X1及びX2が、火災によりX1所有の建物(本件建物)及びその内部にあるX2所有の家財一式が焼損(本件火災)
⇒X2とYとの間の火災損害保険契約(本件保険契約)に基づき、Yに対し、X1において本件建物に係る保険金2400万円及び遅延損害金の支払を、
X2において前記家財に係る保険金300万円および遅延損害金の支払を、
求めた事案。 

本件保険契約に係る普通保険約款:
①被保険者とは、「保険の対象の所有権で保険証券に記載されたもの」をいう
②Yは、本契約者又はその同居の親族等の「故意もしくは重大な過失」によって生じた損害に対しては、保険金を支払わない
と規定。
 
<争点>
①被保険者の要件を「保険の対象の所有者」に加え「保険証券に記載されたもの」とする保険約款の定めが保険法2条4号イ、8条に違反するか
②本件火災が保険契約者であるX2の同居親族の「故意」又は「重大な過失」によって生じたのか 
 
<規定>
保険法 第二条(定義)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
四 被保険者 次のイからハまでに掲げる保険契約の区分に応じ、当該イからハまでに定める者をいう。
イ 損害保険契約 損害保険契約によりてん補することとされる損害を受ける者

保険法 第八条(第三者のためにする損害保険契約)
被保険者が損害保険契約の当事者以外の者であるときは、当該被保険者は、当然に当該損害保険契約の利益を享受する。
 
<判断> 
●損害保険契約の「被保険者」 は、契約の一般原則に基づき、当事者の合意により定まるが、
保険法2条4号イ所定の要件を満たさない者であった場合には、当該契約は無効になる。
損害保険契約の当事者が、同号イ所定の要件を満たさない者を「被保険者」と定めた場合、当該契約は無効となるが、
たとえ客観的に同要件を満たす者が他に存在するとしても、その者は、当該当事者から「被保険者」と定められていない以上、「被保険者」に当たらない。

「被保険者」の要件に関する本件約款の定めは、保険法に反しない。
 
●Aは、本件火災の発生直前、油鍋を再び加熱し始めたのに、漫然と別室に移動して約10分間これを放置⇒油鍋の状況を継続的に注視するという基本的な注意義務すら遵守することができていなかった。

X2の同居親族であるAには、本件火災の発生につき重大な過失があった。
 
<解説>
保険法2条4号イは、損害保険契約の「被保険者」同契約によりてん補することとされる損害を受ける者と規定
この「被保険者」は、同時に保険給付請求権者であって、これ以外の者に保険給付を取得させるよう定めることはできない。

平成20年法律第57号による改正前の商法の下でも、
保険の対象が保険契約者の所有物であることを前提に損害保険契約が締結されたが、実際には当該保険契約者が被保険利益を有しない場合には、当該保険契約は無効と解されていた(最高裁昭和36.3.16)。

保険法は、損害保険契約において同法2条4号イの要件を満たさない者を「被保険者」と定めた場合には、当該契約を無効とする趣旨
but
保険法は、契約の一般原則(契約自由の原則)に基づき、あくまでも当事者間の合意により「被保険者」が定まることを前提とし、損害保険の趣旨及び目的等からこれを修正にするにとどまる。

保険法は、当事者の合意いかんにかかわらず、客観的に同号イの要件を満たす者を当然に「被保険者」として確定する趣旨は含まない。

本判決:
「被保険者」の要件を
「保険の対象の所有者」に加えて「保険証券に記載されたもの」とする本件約款が、保険法2条4号イ、8条に反するとはいえない

 
保険約款上の免責事由である「重大な過失」
民法又は保険法上の「重大な過失」と同様に、
通常人に要求される程度の相当の注意をしないでも、わずかの注意させすれば、違法有害な結果を予見することができた場合であるのに、
漫然これを見すごしたような、
ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態
を指す。

(最高裁) 
通常人であれば、ガスコンロの火で油を加熱し続けると引火して火災に至るおそれがあるのを容易に予見できる
⇒その状態が放置されたことにより火災が発生した場合には、これを放置した者に「重大な過失」があると認めるのが裁判例の趨勢。

判例時報2365

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

|

« 面会交流の事案 | トップページ | 危険運転致死傷罪の目的の有無が問題となった事例 »

判例」カテゴリの記事

商事」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/132655/66862150

この記事へのトラックバック一覧です: 普通保険約款の定めと免責事由が問題となった事案:

« 面会交流の事案 | トップページ | 危険運転致死傷罪の目的の有無が問題となった事例 »