警備対象である組長にけん銃等の所持の共謀共同正犯が成立
大阪地裁H29.3.24
<事案>
配下組員P1及びP2がけん銃等を所持⇒AがP1及びP2と共謀していたかが争点。
<判断>
①本件当時、AらZ1組関係者に対するZ5会関係者からの襲撃の危険があるとの認識を有していた
②Z3会事務所やAの自宅付近に警戒態勢が取られ、Aはそれを認識していた
③JR浜松駅からZ1組総本部に至るまでの駅構内、新幹線等において、P1及びP2がけん銃を携帯しつつXの身辺に随行して警備しており、Aもそれを認識していた
④Z1組総本部から本件ホテルに至るまでの警備も同様
⑤本件ホテルにおいてもZ3会及びZ2会関係者がA及びZ2会組長を警護していた
⑥本件当日ロビーにおける警護状況も同様
⑦Z3会における同会組長の警護態勢との比較によって前記判断は左右されない
⇒
Aにおいて、P1及びP2がけん銃を携帯所持していることを認識した上で、それを当然のことととして受け入れて認容していたと推認するのが相当。
P1及びP2は、けん銃等をいつでも発射可能な状態で携帯所持してAに随行し警護していたものであり、P1及びP2としても、Z3会組長であるAの立場からして、AがP1及びP2のけん銃等の携帯所持を認識、認容していることを当然に了解していたと推認できる
⇒
Aと、P1及びP2とけん銃等の携帯所持について、黙示的な意思連絡があった。
Aは、Z3会組長として、配下のP1及びP2らの意思決定や行動に大きな影響を与える支配的立場にあった上、本件犯行の利益は専らAに帰属する関係にあった
⇒
Aは本件犯行について共謀共同正犯としての責任を負う。
<解説>
最高裁平成15年及び最高裁平成17年で、組長が配下組員のけん銃所持を「概括的にせよ確定的に認識」していた点につき、 本判決は「確定的」という文言を使っていない。
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一般的にいえば、非実行者の認識は未必的で足りるとされる(最高裁H19.11.14)。
判例時報2364
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