窃盗保護事件で少年を第一種少年院に送致する決定が不当であるとされた事案
東京高裁H29.2.9
<事案>
少年が大型ショッピングモール内の雑貨店で万引きした事案。
被害額がさほど高額でなく、被害品が全て還付された比較的軽微なもの。
<原審>
①万引きの手慣れた態様と、2回の万引きによる保護歴の存在
⇒この種の非行に対する抵抗感の薄さがうかがえ、現時点で非行性が大きく進んでいるとは言えないが、資質上の問題が顕在化すれば、再非行のおそれが高い。
②少年にはその資質上の問題性があるほか、母及び養父は少年に拒否的な対応を続け、仮定での引き取りを拒否しており保護環境は悪い。
付添人が主張する施設の受入れによっても、現時点では、少年が社会内で自律的な生活を送りながら更生していくことは困難。
⇒
第一種少年院送致を相当。
短期間の処遇勧告。
←少年が明確な枠組みの中では従順であり、一定の理解力を有することから、短期集中的な処遇により相当の効果が期待できる。
<判断>
原決定は、少年の要保護性及び社会内処遇の可能性に関する評価を誤っており、第一種少年院送致とすることは、短期間の処遇勧告を伴っていたとしても、処分の相当性を欠いており、著しく不当
⇒原決定を取り消して、本件を原審支部に差し戻した。
<解説>
少年の非行性は必ずしも深化しているとまではいえないが、看過できない問題性が認められる一方、
適切な保護環境や社会資源が見出せない事案は、
実務上珍しくない。
更生の手がかりとなる保護環境や社会資源がうかがえるのであれば、その利用の余地がないかは十分検討されるべき。
判例時報2362
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