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2018年5月 8日 (火)

社会保険庁廃止に伴う同庁職員らに対する分限免職処分が争われた事案

東京地裁H29.6.29      
 
<事案>
法律の改正により社会保険庁が廃止。
社保庁朝刊又は東京社会保険事務局長が、国公法78条4号に基づいて、平成21年12月25日付けで同月31日限り社保庁の職員であったXらを分限免職する旨の各処分⇒
Xらが、Y(国)に対し、
本件各処分は、同号の要件に該当せず、仮に同号の要件に該当するとしても、裁量権の範囲逸脱し又はこれを濫用した違法なもの⇒本件各処分の取消しを求める。
②本件各処分が不法行為又は債務不履行に当たる⇒国賠証1条1項又は民法415条に基づく損害賠償として、それぞれ330万円及び遅延損害金の支払を求めた。 
 
<規定>
国家公務員法 第78条(本人の意に反する降任及び免職の場合)
職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、人事院規則の定めるところにより、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。
一 人事評価又は勤務の状況を示す事実に照らして、勤務実績がよくない場合
二 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合
三 その他その官職に必要な適格性を欠く場合
四 官制若しくは定員の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合
 
<判断>   
X1及びX2に対する本件処分はいずれも適法。
X3に対する本件処分は違法。
損害賠償請求については、いずれも理由がない。 
 
●本件各処分の適法性 
国公法78条の文言⇒同条に基づく分限処分は裁量処分であると解される。

国公法78条4号に基づく分限免職処分は、被処分者に何ら責められるべき事由がないにもかかわらず、その意思に反して免職という重大な不利益を課す処分

①同号の解釈上、本件の処分権者である社保庁朝刊等は、最終的な分限処分の段階に至るまでに、可能な範囲で、廃職の対象となる官職に就いている職員について、機構への採用、他省庁その他の組織への転任又は就職の機会の提供等の措置を通じて、分限免職処分を回避するための努力を行うことが求められる
このような努力の内容や程度については、法令上、明文の規定はなく、基本的に社保庁長官等の裁量に委ねられているというべきであるが、
例えば、社保庁長官等において分限免職処分を回避するための容易かつ現実的な努力をすることが可能であり、当該努力をしておれば、特定の職員について分限免職処分を回避することができた相応の蓋然性があったにもかかわらず、社保庁長官等において当該努力を怠った結果、分限免職処分に至ったものと認められるような事情があるときは、
当該職員に係る分限免職処分については、裁量権の逸脱又は濫用があった違法なものとして、その効力は否定されるべきである。

X1及びX2に対する本件処分:
両名はいずれも懲戒処分歴があり、機構等への採用資格がなかった⇒社保庁長官等は、その権限の及ぶ範囲内で分限免職回避のための努力を尽くしたといえ、裁量権の免脱又は濫用があったとはいえない。

X3に対する本件処分:
(1)
①X3には懲戒処分歴がなく機構の正規職員としての採用を第一希望としていた
②平成21年2月時点におけるX3の健康状態につき、医師が機構採用基準に適合すると判断しており、別の医師もリハビリ勤務が可能としており、いずれも職務復帰を前提とした評価をしている
同時点の健康状態を前提にすれば、X3は、機構採用基準に照らせば、正規職員としても採用され得たというべき。
(2)現にX3は、准職員としては採用の内定を受けていた。
(3)X3が正規職員として採用されなかった理由は、機構採用基準を満たしていても面接時において病気休職中の者は正規職員としては採用しないとうい本件内部基準以外に見当たらない。

社保庁長官は、機構設立委員会に対し、少なくとも、その時点で生じている欠員分程度の人数について正規職員として追加採用するよう検討を依頼する程度のことは考慮すべきであったといえ、仮に、正規職員の追加募集がされていたならば、X3が正規職員として採用された相応の蓋然性もなお十分に存した

分限免職回避努力義務を尽くさなかったことにより、裁量権の逸脱又は濫用があったとして違法
 
●国賠法1条1項に基づく損害賠償請求について、
X1及びX2に対する本件処分はいずれも適法
X3の動向に基づく損害賠償請求権は消滅時効の援用により消滅

いずれも理由がない。 

判例時報2361

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