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2018年5月 4日 (金)

占有回収の訴えが権利の濫用とされた事例

東京地裁H28.8.24      
 
<事案>
●経営をめぐる紛争が継続している自動車学校において使用されていた教習車に対する占有回収の訴えと権利の濫用等が問題になった事件。 
 
●A社は、自動車学校(本件教習所)を経営。
Y6は、発行済み株式全部を保有する1人株主であり、代表取締役であった。 
X社は、平成20年5月に設立された会社で、その取締役P3は、A社の臨時株主総会において取締役に選任され、代表取締役に選任された。
P4は、平成21年7月の臨時株主総会においてA社の取締役に選任され、代表取締役に選任された(後日、決議不存在が確定)。
問題の自動車4台(本件各自動車)は、A社が教習車として購入し、使用していた。

A社は、平成24年7月、X社、P3、P4らを相手方とする業務妨害等の仮処分を申し立て、裁判所は本件各自動車を含む16台の教習車の所有権がA社にあると認定し、教習車の使用・移動の禁止、A社の業務の妨害禁止、P4の本件教習所への立入禁止等を命じ、申立てを認容。

Y6は、同年10月、教習車を本件教習所からY4株式会社が所有しY5株式会社の占有する土地に移動させることを企図したが、本件各自動車のみ移動できた。

転々譲渡により本件各自動車の占有を承継取得したX社は、本件各自動車の占有を承継取得、原始取得したと主張し、Y6ないしY5社に対し、占有回収の訴えにより本件各自動車の返還、不法行為等に基づき損害賠償を請求。
 
<争点> 
①X社の占有の承継取得の成否
②原始取得の成否
③交互侵奪ないし権利の濫用の成否
④不法行為の成否等 
 
<判断>

争点①:
P3の地位が別件の判決により否定⇒承継取得を否定。

争点②:
X社、P3,P4らのA社に関する一連の行為を認定⇒本件教習所の自動車教習事業の運営主体が少なくとも平成24年3月まではA社であり、同年4月以降はX社とこれを通じた者らによる、X社をして運営主体たらしめようとする所為の積み重ねにより、遅くとも同年10月1日頃までには本件教習所の自動車教習事業に供される財産である本件各自動車の占有はX社に属するに至ったとして、原始取得を肯定。


争点③:
占有回収の訴えは、占有者の占有がかつて占有侵奪者の占有を侵奪することによって取得された場合には、先行の占有侵奪から後行の占有侵奪までの期間、占有者及び占有侵奪者の各占有に係る本件の存否ないし存在を信ずる相当の理由の有無、各占有侵奪の態様その他の諸般の事情を総合考慮し、権利の濫用として許されないことがある

本件では、
①前記の期間が5か月程度であること
X社がY6の別件の勝訴判決の直後から正当な理由なくA社の本件教習所の支配の既成事実化を推進し、X社の本件各自動車の占有には何らかの本権はなく、これを信ずる相当の理由もないこと
本件各自動車はA社が所有権を有し、Y6はA社の代表取締役であり、裁判所の判断によってもこれが認定されたと認識していること、
X社の本件自動車の占有侵奪の態様は、事実関係をほしいままに変更するものであったのに対し、Y6はA社の代表取締役の立場においてA社の従業員の立会いの下、物理的強制力を用いることなく運転して移動させたこと等

権利の濫用を肯定


争点4:
Y6らに占有侵奪の不法行為は認められない⇒請求棄却
 
<解説>
本件は、経営権を否定された者の経営に係る会社が原告となり、本来経営権を有する者、これに協力した者らに対し、教習車につき占有回収の訴えを提起。 
相互に自動車の占有を侵奪し、先行の侵奪者が後行の侵奪者に対し占有回収の訴えにより自動車の返還を請求することができるか。

本件では、権利の濫用による制限が取り上げられている。

本判決:
占有回収の訴えに対する権利の濫用の要件、考慮事情を示した上、本件では権利の濫用を認め、占有回収の訴えによる返還請求権を否定。

判例時報2361

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