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2018年5月27日 (日)

行政庁が管理する文書の所持者

最高裁H29.10.4      
 
<事案>
香川県の住民である相手方は、県議会の議員らが平成25年度に受領した政務活動費の中に使途基準に違反して支出されたものがある
⇒地自法242条の2第1項4号に基づき、香川県知事に対し、前記の支出に相当する金額について、当該支出をした議員らに不当利得の返還請求をすることを求める本案事件の訴えを提起。

相手方は、議員らが県議会の議長に提出した平成25年度分の政務活動費の支出に係る領収書及び添付資料の写しについて、議長の属する地方公共団体である抗告人(香川県)を文書の所持人として、文書提出命令を申し立てた。

抗告人:本件各領収書に係る文書の所持者は議長であり、抗告人に本件各領収書の提出義務はない旨主張。
 
<規定>
神奈川県議会政務活動費交付条例:
議長は、議員から提出された報告書及び領収書等の写しをその提出すべき期間の末日の翌日から起算して5年を経過する日まで保存しなければならない(11条1項) 

民訴法 第219条(書証の申出) 
書証の申出は、文書を提出し、又は文書の所持者にその提出を命ずることを申し立ててしなければならない。
 
<判断>
地方公共団体の機関が文書を保持する場合において、当該地方公共団体は、文書提出命令の名宛人とされることにより、当該文書を裁判所に提出すべき義務を負い、同義務に従ってこれを提出することのできる法的地位にある。 
 
<解説>
行政主体(国又は公共団体)に属する行政庁が管理する文書を対象として文書提出命令の申立てがされる場合、当該文書に係る「文書の所持者」(民訴法219条等)について

A:行政庁が文書の所持者であるとする見解(行政庁所持者説)
〇B:行政庁の属する行政主体(国又は公共団体)が文書の所持者であるとする見解(法主体所持者説)
 
本案事件が民事訴訟である場合について、裁判実務の多数は、法主体所持者説に基づき運用
ex.
労働喜寿監督署長に提出された災害調査復命書を対象として文書提出命令が申立てられた事案において、前記災害調査復命書に係る文書の所持者は国(最高裁H17.10.14)
 
①本案事件が民事訴訟である場合にはおいては、法主体所持者説に基づく運用
平成16年改正により抗告訴訟の被告適格が原則として行政主体に付与⇒本案事件が行政訴訟であるからといって、「文書の所持者」の取扱いを区別することに合理性があるとは言い難い
③行政主体は、行政活動における権利義務の帰属主体⇒文書提出命令の名宛人とされることによって、当該行政主体に属する行政庁が保管する文書を提出すべき義務を負い、同義務によってこれを提出することのできる法的地位にある。

判例時報2364

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