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2018年5月 7日 (月)

存続期間が延長された特許権に係る特許発明の効力が及ぶ範囲

知財高裁H29.1.20      
 
<事案>
本件特許を有する控訴人(一審原告)が、被控訴人(一審被告)に対し、被控訴人の製造販売に係る各製剤は、本件特許の願書に添付した明細書(「本件明細書」)の特許請求の範囲の請求項一に係る発明(本件発明)の技術的範囲に属し、かつ、存続期間の延長登録を受けた本件特許権の効力は、一審被告による一審被告各製品の生産、譲渡及び譲渡の申出(生産等)に及ぶ旨主張⇒一審被告各製品の生産等の差止め及び廃棄を求めた。 
 
<判断>
存続期間が延長された特許権に係る特許発明の効力は、政令処分で定められた「成分、分量、用法、用量、効能及び効果」によって特定された「物」(医薬品)のみならず、これと医薬品として実質同一なものにも及び、政令処分で定められた前記構成中に対象製品と異なる部分が存する場合であっても、当該部分が僅かな差異又は全体的にみて形式的な差異にすぎないときは、対象製品は、医薬品として政令処分の対象となった物と実質同一なものに含まれ、存続期間が延長された特許権の効力の及ぶ範囲に属する。

医薬品の成分を対象とする物の特許発明について、
政令処分で定められた「成分」に関する差異、「分量」の数量的差異又は「用法、用量」の数量的差異のいずれか1つないし複数があり、他の差異が存在しない場合に限定してみれば、
僅かな差異又は全体的にみて形式的な差異かどうかは、
特許発明の内容に基づき、その内容との関連で、
政令処分において定められた「成分、分量、用法、用量、効能及び効果」によって特定された「物」と対象製品との技術的特徴及び作用効果の同一性を比較検討して、当業者の常識を踏まえて判断すべき
前記限定の場合において、

①医薬品の有効成分のみを特徴とする特許発明にに関する延長登録された特許発明において、有効成分ではない「成分」に関して、対象製品が、政令処分申請時における周知・慣用技術に基づき、一部において異なる成分を付加、転換等しているような場合
②公知の有効成分に係る医薬品の安定性ないし剤型等に関する特許発明において、対象製品が政令処分申請時における周知・慣用技術に基づき、一部において異なる成分を付加、転換等しているような場合で、特許発明の内容の照らして、両者の間で、その技術的特徴及び作用効果の同一性があると認められるとき
③政令処分で特定された「分量」ないし「用法、用量」に関し、数量的に意味のない程度の差異しかない場合、
④政令処分で特定された「分量」は異なるけれども、「用法、用量」も併せてみれば、同一であると認められる場合は、

対象製品と政令処分で定められた「成分、分量、用法、用量、効能及び効果」によって特定された「物」の間の差異はわずかな差異又は全体的にみて形式的な差異に当たり、対象製品は、医薬品として政令処分の対象となった物と実質同一なものに含まれる。
 
<規定>
特許法 第68条の2(存続期間が延長された場合の特許権の効力)
特許権の存続期間が延長された場合(第六十七条の二第五項の規定により延長されたものとみなされた場合を含む。)の当該特許権の効力は、その延長登録の理由となつた第六十七条第二項の政令で定める処分の対象となつた物(その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合にあつては、当該用途に使用されるその物)についての当該特許発明の実施以外の行為には、及ばない
 
<解説>
存続期間が延長された場合の特許権の効力は、特許法68条の2において、その特許発明の全範囲に及ぶのではなく、その延長登録 の理由となった政令で定める処分の対象となった物についての当該特許発明の実施以外の行為には及ばないと定められている。

特許法68の2の
「物」は有効成分を
「用途」は効能・効果を
意味するものと解されてきた。

医薬品の品目の特定のために要求されている各要素のうち新薬を特徴づけるものは「有効成分」と「効能・効果」であると考えられていた。
but
知財高裁H21.5.29:
「政令で定める処分」が薬事法所定の承認である場合、「政令で定める処分」の対象となった「物」とは、当該承認により与えられた医薬品の「成分」、「分量」及び「構造」によって特定された「物」を意味し(この「成分」は、薬効を発揮する成分(有効成分)に限定されない。)、かかる「物」についての当該特許発明の実施、及び当該薬品の「用途」によって特定された「物」についての当該特許発明の実施についてのみ、延長特許権の効力が及ぶ(均等物や実質的に同一と評価される物が含まれることは、技術的範囲の通常の理解に照らして、当然である。)と判示。

従来よりも延長特許権の効力の及ぶ範囲を狭く解したもの。

知財高裁H26.5.30:
特許権の延長登録制度及び特許権侵害訴訟の趣旨

延長特許権は「物」に係るものとして「成分(有効成分に限らない。)によって特定され、かつ、「用途」に係るものとして、「効能、効果」及び「用法、用量」によって特定された当該特許発明の実施の範囲で、効力が及ぶ(均等物や実質的に同一と評価される物が含まれることは、技術的範囲の通常の理解に照らして、当然である。)と判示。

同判決は、「分量」については、医薬品の構成を客観的に特定する要素となり得るものの、競業他社が、本来の特許期間経過後に、特許権者が臨床試験等を経て承認を得た医薬品と実質的に同一の用法・用量となるようにし、分量のみ特許権者が承認を得たものとは異なる医薬品の製造販売等をすることを許容することは、延長登録制度を設けた趣旨に反することになる⇒延長特許権の効力を制限する要素となると解することはできないとして、特定要素に含めなかった。

判例時報2361

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