« 東京電力福島第一原発事故福島訴訟(生業訴訟) | トップページ | 公選法204条の選挙無効訴訟において選挙人が選挙無効の原因として被選挙権の年齢制限規定の意見を主張できるか?(否定) »

2018年4月 2日 (月)

再生債務者の無常行為の否認につて債務超過であることが必要か?(不要)

最高裁H29.11.16      
 
<事案>
㈱ユタカ電機製作所(A社)の民事再生手続において、上告人Xが再生債権として届出をした連帯保証債務履行請求権につき、再生管財人である被上告人Yがその連帯保証契約(本件連帯保証契約)に対し無償行為否認をし、その額を0円と査定
⇒Xがその変更を求める異議の事案。
 
<規定>
民再法 第127条(再生債権者を害する行為の否認) 
次に掲げる行為(担保の供与又は債務の消滅に関する行為を除く。)は、再生手続開始後、再生債務者財産のために否認することができる。

3 再生債務者が支払の停止等があった後又はその前六月以内にした無償行為及びこれと同視すべき有償行為は、再生手続開始後、再生債務者財産のために否認することができる。
 
<事実>
グラス・ワンホールディングス㈱(B社)は、平成26年4月、㈱トーヨーコーポレーション(C社)から、A社の株式の買収資金として13億円を借り受けた。
B社は、A社を買収後、A社から6億円を借り受けて一部弁済。

Xは、C社と代表者を共通とする関係会社であるが、
平成26年8月29日、C社からB社に対する貸金債権(元本残額役7億円)の譲渡を受け、A社との間で、A社が前記貸金債権に係るB社の債務を連帯して保証する旨の本件連帯保証契約を締結。

A社は、平成27年2月18日、再生手続開始の申立てをし、その後、再生手続開始決定。
Xが平成27年4月にA社に対する連帯保証債務履行請求権を再生債権として届け出た⇒Yは、XとA社との間の連帯保証契約につき無償行為否認をして、Xの届け出た再生債権を認めないとの認否。

Xが東京地裁に、再生債権につき査定の申立て
⇒同裁判所は平成27年10月、Yの無償行為否認の行使を認め、前記再生債権につき0円と査定する決定。
⇒Xが本件査定決定の変更を求めて本件訴えを提起
⇒一審、原審共に、本件査定決定を認可すべきものとした。
⇒Xが上告受理申立て。

<判断>
再生債務者が無償行為若しくはこれと同視すべき有償行為の時に債務超過であること又はその無償行為等により債務超過になることは、民再法127条3項に基づく否認権行使の要件ではないと判断し、
上告を棄却。

①民再法127条3項に再生債務者の債務超過等を否認権行使の要件とすることをうかがわせる文言がない
同項の趣旨が「その否認の対象である再生債務者の行為が対価の伴わないものであって再生債権者の利益を害する危険が特に顕著であるため、専ら行為の内容及び時期に着目して特殊な否認類型を認めたことにある」
 
<解説> 
●債務者の行為の効力を否認する否認権を発動するためには、その債務者の行為によって債権者を害する結果が生ずるだけではなく、更にその発動を正当化す根拠が必要。 
①その行為の時に、債務者の財務状況が破綻しており、その行為の相手方がそれを認識しているということを正当化根拠とする危機否認
②その行為の時に債務者が債権者を害する意図を持ち、その行為の相手方がそれを認識していることを正当化根拠とする故意否認
③その行為が無償性を有することを正当化根拠とする無償否認
という3類型。 
 
●再生手続において無償行為否認をするに当たり、再生債務者の資産状況の悪化を必要とするか?

A:必要説
←民再法127条1項又は2項の詐害行為否認をするに当たり再生債務者の資産状況の悪化を要するものと解されるところ、平成16年の一連の倒産法改正における民再法の改正により無償行為否認が詐害行為否認の一類型とされたという体系的な理解。

〇B:不要説

①無償行為否認については、前記一連の倒産法改正において、実質的な議論がほとんどされず、法文上も基本類型(民再法127条1項)と組み合わせて否認が基礎付けられる同条2項とは異なり、同条3項においては単独で否認が基礎付けられており、無償行為否認の行使要件につき実質的な改正がされなかったものとみるのが相当
改正前においては、否認の対象となり無償行為等の際の債務者の資力を問題とする必要性を採るものは見当たらず、これを問題としない不要説が通説。 

判例時報2357・2358

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

|

« 東京電力福島第一原発事故福島訴訟(生業訴訟) | トップページ | 公選法204条の選挙無効訴訟において選挙人が選挙無効の原因として被選挙権の年齢制限規定の意見を主張できるか?(否定) »

判例」カテゴリの記事

民事」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/132655/66568262

この記事へのトラックバック一覧です: 再生債務者の無常行為の否認につて債務超過であることが必要か?(不要):

« 東京電力福島第一原発事故福島訴訟(生業訴訟) | トップページ | 公選法204条の選挙無効訴訟において選挙人が選挙無効の原因として被選挙権の年齢制限規定の意見を主張できるか?(否定) »