村議会議員に対する地方自治法92条の2に該当する旨の資格決定処分についての執行停止の申立て(肯定)
札幌高裁H29.5.29
<事案>
北海道の留寿都村の村議会議員であったYが、同議会による、平成28年7月14日付けでなされた地方自治法92条の2に該当する旨の資格停止処分には、同条の法令解釈を誤った違法があると主張して、同処分の取消しを求める訴えを提起するとともに、本件訴訟を本案として、本件処分の効力の停止を求めた。
<判断>
本件処分の効力を本案事件に関する第一審判決の言渡し後30日を経過するまで停止するのが相当である。
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①地方議会議員であれば、原決定が認定する重大な損害を被るのが通常であるというべき⇒Yについて重大な損害を被ることのない特別の事情がない限り、「重大な損害を避けるため緊急の必要性がある」ということができる。
Yが「次の選挙まで復職するつもりはない」と言ったとしても、前記の特別の事情があるとはいえない。
②Yの失職による議員の補欠選挙の実施の可否及び選挙の効力等について、村中に大きな混乱が生じたものとは認められない。
③Yの業務が議員としての職務執行の公正、適正を損なうおそれが類型的に高いということはできず、「本案について理由がないとみえるとき」に当たらない。
<規定>
地方自治法 第92条の2〔関係諸企業への関与禁止〕
普通地方公共団体の議会の議員は、当該普通地方公共団体に対し請負をする者及びその支配人又は主として同一の行為をする法人の無限責任社員、取締役、執行役若しくは監査役若しくはこれらに準ずべき者、支配人及び清算人たることができない。
行訴法 第25条(執行停止)
処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。
2 処分の取消しの訴えの提起があつた場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止(以下「執行停止」という。)をすることができる。ただし、処分の効力の停止は、処分の執行又は手続の続行の停止によつて目的を達することができる場合には、することができない。
<解説>
行訴法25条1項は、業絵師処分の取消しの訴えの提起について、いわゆる執行不停止の原則を定めているが、同条2項は、処分等により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより決定をもって、処分の効力等の停止をすることができると定める。
「重大な損害」とは、原状回復不能又は困難な損害もしくは社会通念上金銭賠償で受忍することの不能又は困難な、積極的、消極的損害をいうと解されている。
判例時報2359
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