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2018年3月13日 (火)

受遺者が、遺留分権利者に、弁償すべき価額の支払を条件として建物の明渡しを求めた場合

東京高裁H28.6.22      
 
<事案>
遺言によって本件建物を単独所有することとなったXが、他の相続人であるYに対し、本件建物の明渡を請求し、これに対しYが遺留分減殺請求権を行使した事案。 
 
<原審>
Aが債務を負っていたものの、債務超過ではなく、遺留分侵害が認められる。

遺留分減殺請求権の行使により、Yが本件建物につき共有持分を有するとして、Xの請求を賃料相当損害金の請求を含め棄却。 
 
<争点>
Xは、価額弁償を条件として本件建物を明け渡せとの予備的請求を追加して控訴し、
控訴審第1回口頭弁論期日において、裁判所の定めた価額をもって弁償する旨の意思表示をした。

①債務超過による遺留分の侵害がないかどうかという原審と同様の争点
②価額弁償の意思表示の主張の扱い
 
<判断>
●本訴請求について:
Yの遺留分侵害額を認定した上で、本件建物明渡請求は理由がない。
賃料相当損害金の請求は持分割合の限度で理由がある。 

●予備的請求について:
Xの価額弁償の意思表示について、
当該訴訟手続内において、判決によって確定された価額を支払う意思を表明し、弁償すべき価額の支払を条件として遺留分権利者の占有する目的物の引渡し等を求めた場合は、
受遺者等に価額を弁償する能力がないなどの特段の事情がない限り、弁償すべき価額を定めた上、支払があったことを条件として遺留分権利者の占有する目的物の引渡し等請求を認容することができる
権利関係の早期確定の必要性とXが弁償すべき価額の原資を準備する期間も考慮

本判決確定後30日以内に支払を受けたことを条件として本件建物の明渡しを認めた
 
<解説>
●遺留分権利者が価額弁償の意思表示をした場合において、受遺者が本件建物の明渡しを受けるためには、価額弁償の意思表示のみでは足りず、価額の弁償を現実的に履行するか、少なくともその履行の提供をするこを要し(最高裁昭和54.7.10)
価額弁償における価額算定の基準時は、現実に弁償がされる時、訴訟にあっては事実審の口頭弁論終結時(最高裁昭和51.8.30)。

裁判所の判断なくしては弁償すべき価額が明らかにならず、現実の履行も履行の提供も事実上不可能となる⇒あらゆる場合に価額弁償の主張がおよそ成立しないことになる

民法1041条の趣旨を損なう。

民法 第1041条(遺留分権利者に対する価額による弁償)
受贈者及び受遺者は、減殺を受けるべき限度において、贈与又は遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免れることができる。
⇒本判決は、支払を受けたことを条件として請求を認容した。

●事案を異にするが、
遺留分権利者が持分移転登記請求訴訟を提起し、受遺者が価額弁償の意思表示をした事案で、裁判所の認めた弁償すべき価額を支払わなかったときは、所有権移転登記手続をせよとの判断を示したものがある。 (最高裁H9.2.25)

判例時報2355

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