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2018年3月 7日 (水)

破産債権者が破産手続開始後に物上保証人から債権の一部の弁済を受けた⇒実体法上の残債権額を超過する部分の配当方法

最高裁H29.9.12      
 
<事案>
破産手続開始後に物上保証人から債権の一部の弁済を受けた破産債権者であるXが、破産手続開始の時における債権の額として確定したものを基礎として計算された配当額のうち実体法上の残債権額を超過する部分(超過部分)を物上保証人(求償権者)に配当すべきものとした破産管財人Y作成の配当表に対する異議申立ての事案。

Xは、破産会社のB信用金庫に対する借入金債務を保証⇒B信用金庫に対し、その元本全額並びに破産手続開始の決定の日の前日までの利息全額及び遅延損害金の一部を代位弁済。⇒この代位弁済により取得した求償権の元本を破産債権として届け出た。
Cは、Xとの間で、破産会社のXに対する求償金債務を担保するため、自己の所有する不動産に根抵当権を設定⇒その売却代金から、2593万9092円を本件破産債権に対する弁済として支払った。⇒この代位弁済により取得した求償権2593万9092円を予備的に破産債権として届け出た。
破産手続開始の時における債権の額として確定したものを基礎として計算された、本件破産債権についての配当額が4512万4808円であるのに対し、その実体法上の残債権額が3057万2141円⇒超過部分をどのように取り扱うかが問題。

本件配当表は、超過部分を(Cが求償権を届け出たにもかかわらず、Cが代位弁済により取得した「原債権の代位行使という性質において」認めるというYの認否を前提に)Cの債権について配当すべきとした。)
 
<規定>
破産法 第104条(全部の履行をする義務を負う者が数人ある場合等の手続参加)
数人が各自全部の履行をする義務を負う場合において、その全員又はそのうちの数人若しくは一人について破産手続開始の決定があったときは、債権者は、破産手続開始の時において有する債権の全額についてそれぞれの破産手続に参加することができる。
2 前項の場合において、他の全部の履行をする義務を負う者が破産手続開始後に債権者に対して弁済その他の債務を消滅させる行為(以下この条において「弁済等」という。)をしたときであっても、その債権の全額が消滅した場合を除き、その債権者は、破産手続開始の時において有する債権の全額についてその権利を行使することができる。
3 第一項に規定する場合において、破産者に対して将来行うことがある求償権を有する者は、その全額について破産手続に参加することができる。ただし、債権者が破産手続開始の時において有する債権について破産手続に参加したときは、この限りでない。
4 第一項の規定により債権者が破産手続に参加した場合において、破産者に対して将来行うことがある求償権を有する者が破産手続開始後に債権者に対して弁済等をしたときは、その債権の全額が消滅した場合に限り、その求償権を有する者は、その求償権の範囲内において、債権者が有した権利を破産債権者として行使することができる。
5 第二項の規定は破産者の債務を担保するため自己の財産を担保に供した第三者(以下この項において「物上保証人」という。)が破産手続開始後に債権者に対して弁済等をした場合について、前二項の規定は物上保証人が破産者に対して将来行うことがある求償権を有する場合における当該物上保証人について準用する。
 
<判断>
破産債権者が破産手続開始後に物上保証人から債権の一部の弁済を受けた場合において、破産手続開始の時における債権の額として確定しものを基礎として計算された配当額が実体法上の財債権額を超過するときは、その超過する部分は当該債権について配当すべきである。 
 
<解説> 
●超過部分の取扱い 
(1)超過部分が求償権者と破産財団のいずれに帰属すべきであるか
(2)超過部分が求償権者に帰属すべきであるとして、
破産手続においては超過部分も含めて債権者に配当した上で、求償権者の債権者に対する不当利得返還請求により処理に委ねるか、
②超過部分を求償権者に配当するか
 
●本決定 
破産法104条1項及び2項の趣旨
前記各項は、複数の全部義務者を設けることが責任財産を集積して当該債権の目的である給付の実現をより確実にするという機能を有すること(最高裁H22.3.16)に鑑みて、配当額の計算の基礎となる債権額と実体法上債権額との乖離を認めるものであり、その結果として、債権者が実体法上の債権額を超過する額の配当を受けるという事態が生じ得ることを許容している。

超過部分は破産財団に帰属すべきとの見解((1))は採用できない
(←求償権者による代位弁済がなければ、計算上の配当額が全額債権者に配当され、他の破産債権者がその配当を受ける余地はなかったものであり、超過部分を破産財団に帰属させることは、求償権者の負担で他の破産債権者に「棚ぼた」的な利益を得させることになる)

破産法104条3項ただし書及び4項の趣旨
⇒債権者が破産手続j開始の時において有する債権について破産手続に参加している場合、債権の一部を弁済したにとどまる求償権者は、求償権又は原債権を破産債権として行使することはできない

超過部分を求償権者に配当するとの見解((2)②)は採用できない
(←債権者と求償権者との間で代位弁済額等をめぐる争いがある場合に、超過部分の額及びその割付けをめぐる争いが破産手続に持ち込まれ、破産管財人の負担が増加するとともに、配当手続の実施に支障を来すおそれがある)

本決定は、
超過部分は求償債権者に帰属すべきものであるが、
破産手続においては超過部分も含めて債権者に配当した上で、
求償権者の債権者に対する不当利得返還請求による処理に委ねられる

との見解を採用。

実務上は、破産管財人が超過部分の存在を認識した場合、債権者に対し、超過部分の配当請求権を求償債権者に譲渡するよう促すことになる。

● Xは、本件破産債権のほかに代位弁済額に対する代位弁済の日の翌日からの遅延損害金等を劣後的破産債権として届け出ている。
このような場合、超過部分は劣後的破産債権に充当されるからその限度において不当利得が成立しないとの考え方もあり得る。
but
超過部分を含む配当は飽くまで一般の破産債権である本件破産債権についてされたもの
⇒配当の対象となっていない劣後的破産債権の存在を理由に不当利得の成立を否定することはできない

本決定:
「そのような配当を受けた債権者が、債権の一部を弁済した求償権者に対し、不当利得として超過部分相当額を返還すべき義務を負うことは別論である。」と付している。 
求償権者が保証人である場合、求償権者の不当利得返還請求に対し、債権者は遅延損害金等についての保証債務履行請求権との相殺を主張することができると考えられるが、求償権者が物上保証人である場合には同様の相殺は考えられないであろう。

判例時報2355

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