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2018年3月25日 (日)

電子マネーサービスを提供する事業者の注意義務(不法行為を肯定)

東京高裁H29.1.18      
 
<事案>
Xは、
Y1が提供する携帯電話に電子マネーを記録して使用するこのできるサービスを利用し、
Y2発行のクレジットカードを利用して電子マネーを購入。
携帯電話を紛失
⇒紛失の翌日に携帯電話会社に連絡して携帯電話の通信サービスの利用停止を申し込んだ。
but
その翌日から約2か月の間に合計151回にわたり、購入金額合計291万9000円の電子マネーが使用されていたことが発覚
⇒Xは、発覚の日の翌日にY1に依頼して電子マネーサービスの利用停止を措置を採った。
その後Xは、クレジットカードの利用代金の請求を受取、Y2に対し、同額を支払った。
 
<請求>
主位的請求:
携帯電話の利用停止がされていた⇒Xには同額の支払義務はなく、それにもかかわらずYがそれぞれ支払を受けたことについては法律上の原因がない⇒不当利得返還請求権に基づく支払を求める。

予備的請求:
Yらにはクレジットカードが不正利用されることを防止する注意義務があるのに、それに反した⇒共同不法行為に基づく損害賠償請求。 
 
<原審>
●主位的請求
第三者による不正使用によるものであったとしても、Xが支払義務を負う⇒不当利得返還請求は理由がない。
 
●予備的請求 
Y1に対する請求:
Xにおいては、利用者として、携帯電話、電子マネー及びクレジットカードの運営会社が別個のものであることを当然に理解し、携帯電話の利用が停止されることによって電子マネーサービスも利用停止されると考えることが合理的であるとはいえない。

Y2に対する請求:
Y2においては、利用明細書を送付して注意喚起を図り、不正使用による損害を防止する義務を尽くした。
⇒全部棄却。 
 
<判断>
●主位的請求
①本件電子マネーのチャージがX本人による申込みと取扱うことができる
②Y2には利得が現存しない
⇒法律上の原因がないと認めることはできない。
 
●予備的請求 
◎Y2(クレジットカード会社)に対するものは原審を引用して棄却。

◎Y1の注意義務:
Y1には本件サービスの不正使用を防止するため採るべき措置について適切に約款等で規定し、これを周知する注意義務がある。

①Y1においては、本件サービスが携帯電話の通信サービスの利用停止がされても利用することができたことを認識していた
②携帯電話は通信サービスを利用することを前提としており、これに新たな機能の追加等をするものであるとの認識が一般的⇒通信サービスの利用停止をすれば、本件サービスは利用されないと考える者が現れ得ることを想定するのに困難ではない。

Y1は、
①利用者が携帯電話を紛失した場合に、Y1への通知その他の何らかの手続を必須とすることについて、ホームページ、会員規約や利用約款に記載しておらず、
②通信サービスの利用停止によって、電子マネーの新たなチャージを防止することができるとの認識が誤りであることを示唆する記載もしていなかった
Y1には注意義務違反がある

Y1の責任免除の主張:
会員規約及び利用規約によれば、故意又は重過失の場合に限り責任を負うとされている
but
この規定は軽過失による責任を全部免除するもので消費者契約法8条1項3号に該当し、無効。

過失相殺の主張:
Xが、Yらに対応を求めるより前に不正利用が明らかな利用明細書の送付を受けている⇒より早くこれを確認していれば、被害の拡大を防止することができた⇒3割の過失相殺。
 
<規定> 
消費者契約法 第8条(事業者の損害賠償の責任を免除する条項の無効)
次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。

三 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する民法の規定による責任の全部を免除する条項
 
<解説>
本判決:
事業者において
利用者が採るべき措置について、適切に規定することはもとより、
周知する注意義務がある。
 
平成29年法律第44号による改正民法における定型約款では、利用者への周知がより一層重要な意味を持つ⇒事業者はこの点からも、各種の措置について周知することが求められる。 

判例時報2356

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