分担金を定めた条例の規定の適法性(適法)
津地裁H29.6.22
<事案>
地方公共団体の実施する下水道整備事業に伴う分担金の負担について、その適法性が争われた事案。
Y(三重県名張市)においては、市全域下水道化基本構想の下に、住宅団地の下水道整備を進め、住宅団地の合併浄化槽及び汚水処理施設をYが公共管理することが構想。
Yは、同構想のもと、Xらの居住する区域においては、新設する汚水処理施設に接続することを前提に、既存の汚水処理施設(「本件処理施設」)を公共管理に移管し、本件処理施設を耐用年数が過ぎた後に撤去するという事業(「本件事業」)を実施することにし、地自法224条、228条1項に基づき名張市住宅地汚水処理施設分担金条例(「本件条例」)を定め、同条例に基づき、同事業の分担金を同区域の住民に賦課。
⇒
Xらは、同分担金の賦課決定を受けたため、本件各処分が違法であると主張して、その取消しを求めた。
<争点>
本件各処分が分担金(=地方公共団体が行う特定の事件に要する経費に充てるため、その事件に特別の関係のある者に対して課する金銭)について定めた地自法224条に違反するか否か。
<規定>
地自法 第224条(分担金)
普通地方公共団体は、政令で定める場合を除くほか、数人又は普通地方公共団体の一部に対し利益のある事件に関し、その必要な費用に充てるため、当該事件により特に利益を受ける者から、その受益の限度において、分担金を徴収することができる。
<判断>
●地自法224条に反して違法であるとは認められない⇒請求棄却。
●地自法224条の解釈
同条の「利益」とは、必ずしも金銭に見積もり得る経済的利益に限らず、当該事業により生じる利便性や快適性といった生活上の利益を含む。
分担金が同条の「受益の限度」を越えないものか否かは、事業の性質、必要性、事業費、受益の性質及び程度等を考慮して衡平の観点から社会通念に基づき判断されるべきであり、
受益の限度を越えない範囲について、どのような算定方法を採るかは、普通地方公共団体の合理的な裁量に委ねられている。
●
①本件事業は、Xらが居住する区域の住民が、安定的に下水道サービスを受ける上で、重要な施策であって、合理性を有するもので、Xらは、本件事業により、他の住民ないし土地所有者には利益のない本件処理施設による汚水処理の利便性の向上及び資産価値の増加といった「利益」を受ける
②本件事業に係る分担金も事業費総額の約5.8%に止まるものであり、その割合がXら住民にとって課題な負担とまではいえず、分担金の算定方法に関しても、Yに認められた合理的裁量の範囲を逸脱するものではない。
⇒
事業の必要性、受益の重要性及び分担金が合理的に算定されていることを総合すると、本件条例による分担金の定めは、地自法224条に反して違法であるとは認められない。
<解説>
①特定の事件に関し特に利益を受けるものから徴収される者である点、
②報償的性格を有する点
③一般収入ではなく当該事件の費用に充てるため徴収される点
等で分担金と税は異なる。
公共下水道事業のように、市町村が、都道府県知事の認可を受けて施行する事業(都市計画法59条1項)においては、同法75条1項が、都市計画事業によって著しく利益を受ける者がある場合における受益者負担金について規定。
but
本件事業は、都道府県知事の認可を受けて施行された事業ではなかった⇒地自法224条に基づいて実施。
判例時報2352
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