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2018年2月 3日 (土)

公正証書遺言の方式違背等(肯定)

東京高裁H27.8.27      
 
<事案>
共同相続人であるXらが、共同相続人であるYらに対して、被相続人Aによる公正証書遺言には方式違背がある等として、公正証書遺言の無効の確認を求めるともに、
公正証書遺言に基づきされた被相続人A所有の不動産に係る登記の更正又は抹消の登記や手続を求め、
あわせて公正証書遺言の前に作成された自筆証書遺言についても、遺言意思がなかったとして無効確認を求めた事案。 
 
<判断>
●公正証書遺言
①被相続人Aは、公証役場訪問前には高度の意識障害によりコミュニケーションが困難な状態になることがあり、公証役場訪問後には救急外来を受診し意識障害を生じ、肝性昏睡と診断されるなど、被相続人Aの意識状態や身体状態には一定の変動があり、具体的な応答をし得る程度の意識状態や身体状態にあったとみるには相当の疑義が存する
②被相続人Aは公証人に対し、「Y1に全部。」、「Y2にも。」と述べる以外は何も言わず、証人Bらもこれらの発言以外は見聞きしていなかった
but公証人の作成した遺言案には、Y1に10分の5、Y2及びXらに各10分の1とするもので、公証人が被相続人Aの意思を忖度、整理し、内容を補充して作成したと考えられる。
公証人が遺言案を読み上げて内容の確認をしたところ、被相続人Aは頷くのみで何ら具体的発言をすることはなかった

遺言者の遺言の趣旨を理解できるように口授したものとは認められない

●自筆証書遺言 
①被相続人Aは、自筆証書遺言の作成を試みて、何枚か作成したものの、いずれもうまく書けず、Y1が4か所に訂正印を押さなければならないような不出来なものであった。
②被相続人Aは、作成したものを持ち帰らず、また作成に立ち会ったAの兄嫁であるBに保管等を託すこともしなかった
Bから遺言書として通らないと言われて公正証書遺言を作成することを勧められ公証役場を訪問して本件公正証書遺言を作成している。

公正証書遺言の作成を勧められた時点で本件自筆証書遺言をもって遺言書とする意思を失っていた本件自筆証書遺言は遺言意思がなく無効
 
<規定> 
民法 第969条(公正証書遺言)
公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 証人二人以上の立会いがあること。
二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。

民法 第969条の2(公正証書遺言の方式の特則)
口がきけない者が公正証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述し、又は自書して、前条第二号の口授に代えなければならない。この場合における同条第三号の規定の適用については、同号中「口述」とあるのは、「通訳人の通訳による申述又は自書」とする。
2 前条の遺言者又は証人が耳が聞こえない者である場合には、公証人は、同条第三号に規定する筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝えて、同号の読み聞かせに代えることができる。
3 公証人は、前二項に定める方式に従って公正証書を作ったときは、その旨をその証書に付記しなければならない。
 
<解説> 
民法969条2号の趣旨について、遺言書の財産を誰に対してどのように処分するかといった遺言の具体的な内容を遺言の趣旨として、公証人に対して自らの言葉で語ることを必要とするということ。

言葉によらない表示は口授とはいえない

首を振る程度の返事をした場合や肯定又は否定の挙動を示したにすぎない場合に口授があったとはいえない(最高裁)。

自筆証書遺言のために複数書き直しがされ、結局持ち帰りも保管等を託すこともしていないのは、このとき作成されたものを最終意思とすることをしなかったということができる。⇒遺言意思を認めなかった判断は相当

判例時報2352

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