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2018年2月27日 (火)

権利能力なき社団における正会員性、宗教的人格権等(否定)

高松地裁丸亀支部H29.3.22      
 
<事案>
原告:いわゆる四国霊場八十八か所の発展等を目的として昭和33年頃に組織され、弘法大師の教義に関する法会、布教、教化、宣伝活動等の事業を行っている権利能力なき社団であり、その定款で、八十八か所寺院の住職を原告の正会員と規定。
四国霊場八十八か所を構成する第●番札所の住職である被告に対し、
①定款又は宗教的人格権に基づく妨害予防請求として、四国霊場巡礼の妨害禁止を求め、
②定款又は宗教的人格権に基づく履行請求として、本件寺院の納経所につき本件運営要領の定めを遵守した運営をするよう求め、
③滞納会費の支払を求めた。
 
<争点>
①被告は原告の正会員か
②被告は原告の定める納経所の運営要領に従う義務があるか 
 
<判断>
● 原告の請求を棄却。 
● 被告は、四国霊場を構成する寺院の住職であるから、原告の正会員となる資格があるが、被告が原告に対し正会員として入会の意思表示をしたことを認めるに足りる証拠はない。 
原告は、四国霊場の発展等を目的とする権利能力なき社団であって任意団体⇒被告に正会員の資格があることを理由として加入を強制する法的根拠はない。
①原告の定款には、正会員の退会手続について特段の定めがない⇒その退会の意思表示の方法に限定はない。
②被告は、平成20年12月、当時の原告会長に対し、原告に参加する意思はない旨通告。

仮に被告が原告の正会員として入会していたとしても、前記通告により原告に対し、退会の意思表示をしたと認められ、被告は原告を退会したものと認められる。
被告は原告の正会員ではない⇒原告は被告に対し、原告の定款に基づく義務を主張できない。
 
● 原告:四国霊場の統一的運営は社会通念上保護されるべき宗教的事業であり、かかる統一的運営を妨害されない人格的な利益(宗教的人格権)を有している旨も主張。 

私人である原告と被告との間で、信教の自由の侵害があり、その態様、程度が社会的に許容し得る限度を超えるときは、場合によっては、私的自治に対する一般的制限規定である民法1条、90条の規定等の適切な適用によって法的保護が図られるべき。
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原告が主張する人格的利益とは、主に原告の定める本件運営要領に従った納経所運営であるところ、納経所の運営は各寺院が行うものであるし、本件運営要領の内容も、納経の受付日、受付時間等に関する事務的な定めに過ぎない。

本件運営要領に従った納経所運営が原告の信教の自由にかかわるものとは認め難く、原告主張の宗教的人格権は認められない


原告の妨害予防請求及び履行請求は、定款に基づくものも、宗教的人格権に基づくものも理由がない。
原告が主張する平成21年度以降の回避の支払義務もない。 
 
<解説>
●社団法人においては、社員の地位には権利だけでなく義務も伴う

入社には常に入社しようとする者の意思表示が必要であり、
脱退についても、原則として、社員の社団に対する一方的意思表示により退社することができ、
合理的範囲を超えて脱退の自由を制限する定款の定めは無効

権利能力亡き社団についても、同様に、構成員の加入・脱退は基本的に自由であると考えるのが相当。

一般社団法人及び一般社団法人に関する法律:
一般社団法人の社員は一方的意思表示によりいつでも退社することができること(28条1項本文)
定款により社員の退社の自由を制限することができるが(同項ただし書)、
そのような定款があっても、やむを得ない事由があるときは、社員はいつでも退社することができること(同条2項)
を定めている。
 
●最高裁H17.4.26:
県営住宅の入居者によって組織される自治会に対し、会員が退会の申入れをしたことをの有効性が争われた事案で、
被上告人(自治会)は、会員相互の親ぼくを図ること、快適な環境の維持管理及び共同の利害に対処すること、会員相互の福祉・助け合いを行うことを目的として設立された権利能力なき社団であり、いわゆる強制加入団体でもなく、その規約に置いて会員の退会を制限する規定を設けていない

被上告人の会員は、いつでも被上告人に対する一方的意思表示により被上告人を退会することができると解するのが相当であり、本件退会の申入れは有効
被上告人の設立の趣旨、目的、団体としての性格等は、この結論を左右しない。

県営住宅の入居者によって構成される自治会であっても、当該自治会が強制加入団体でなく、その規約において会員の退会を制限する規定を設けていないなどの事情のもとでは、会員は自治会に対する一方的意思表示により退会することができる。 

判例時報2354

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