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2018年2月28日 (水)

MLC契約に基づく在日米軍基地労働者に対し、国が行った解雇が違法とされた事例

東京高裁H29.2.23       
 
<事案>
Y(国)との間のMLC契約(国が労働者を雇用するが、その労務を在日米軍及び諸機関に提供する契約)に基づき、横須賀基地内で勤務していたXが、
米軍から平成12年から平成23年にかけて部下に対し8件のパワーハラスメントをしたことを理由に、順次、休業手当身分措置、暫定出勤停止措置の対象とされた後、解雇

前記各措置はいずれも要件を欠き無効であるとして、Yに対し、
①労働契約上の地位の確認
②本件各措置に基づき出勤を禁止された期間の未払賃金及び未払賞与の支払、
③解雇後の賃金及び賞与の支払、
④本件各措置は違法な公権力の行使に当たるとして民法709条及び国賠法1条に基づき慰謝料金100万円の支払
をそれぞれ求めた。 
 
<規定>
民法 第536条(債務者の危険負担等)
前二条に規定する場合を除き、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。
2 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない
 
<判断>
●8件のパワーハラスメントは認められない

本件解雇は無効

● 本件休業手当身分措置が調査妨害等の支障を避けるために必要かつ合理的な措置であったとしても、就労義務がないとはいえ一方的に賃金が減額される点でXに不利益な処分

本件休業手当身分措置において、後日、嫌疑がなかったことが認められる場合は「債権者の責めに帰すべき事由」に当たり、Xは休業手当の額を超える部分の賃金請求権を失わない

● 本件暫定出勤停止措置が、国賠法上違法となるか否かについて、
・・・日本側の担当者としてゃ、MLCの前記規定に従い、減給を伴う暫定出勤停止措置の長期化が炉同社に重大な不利益を与えるものであることを考慮して、日本側の調査終了後は日米間の協議を早期に終了させ、協議が整わなかった場合には速やかに日米合同委員会の決定に委ねるべきであったにもかかわらず、日米合同委員会に付託されることがないままXは解雇されている。

日本側の担当者は職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく本件暫定出勤停止措置を継続
①本件暫定出勤停止措置及び本件解雇は、単にMLCが規定する要件を満たさない無効なものであるだけでなく、
通常想定される協議の期間を大幅に超過したため、暫定出勤停止期間が長期に及び、Xに大きな不利益を与えた
②本件解雇は解雇事由の証拠が乏しく日本側と米国側で意見が分かれる状態で行われたことなどの事情によれば、本件暫定出勤停止措置及び本件解雇が無効とされ地位確認と未払賃金の支払を命じただけではXの精神的苦痛は回復されない

慰謝料50万円の請求を認容

●予備的請求にかかる中間利益控除について、
①中間利益の控除は、労働者が使用者に対する労務の提供を免れたことにより他の職について収入を得た場合に、使用者からの収入と他の職について得た収入を二重に取得することを否定するもの。
MLCにその定めがあるかどうかにかかわらず、中間利益の控除は許される
②本件解雇が国賠法上違法と評価されるものであったとしても、それによりXが解雇されなかった場合以上の利益を受けることを肯定する理由はない

出勤停止期間中と解雇後口頭弁論終結時までの間、Xが就労して得た給与を中間利益として控除
 
<解説>
賃金請求権を失わない場合、その期間、労働者が他の職について得た収入を中間利益として控除することが可能かどうか、民法536条2項後段に「この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない」と定めがあることから問題。
この点、労働者が就労を免れた期間中に他の職について利益(「中間利益」)を得たときは、使用者は、労働者に同期間中の賃金を支払うに当たり、平均賃金の6割を超える部分から当該賃金の支給対象期間と時間的に対応する期間内に得た中間利益の額を控除することが許され、また、
中間利益の額が平均賃金の4割を超える場合には、更に平均賃金算定の基礎に算入されない賃金(労基法12条4項所定の賃金)の全額を対象として中間利益の額を控除することが許されるものと解されている。
(判例)

判例時報2354

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