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2018年2月

2018年2月28日 (水)

MLC契約に基づく在日米軍基地労働者に対し、国が行った解雇が違法とされた事例

東京高裁H29.2.23       
 
<事案>
Y(国)との間のMLC契約(国が労働者を雇用するが、その労務を在日米軍及び諸機関に提供する契約)に基づき、横須賀基地内で勤務していたXが、
米軍から平成12年から平成23年にかけて部下に対し8件のパワーハラスメントをしたことを理由に、順次、休業手当身分措置、暫定出勤停止措置の対象とされた後、解雇

前記各措置はいずれも要件を欠き無効であるとして、Yに対し、
①労働契約上の地位の確認
②本件各措置に基づき出勤を禁止された期間の未払賃金及び未払賞与の支払、
③解雇後の賃金及び賞与の支払、
④本件各措置は違法な公権力の行使に当たるとして民法709条及び国賠法1条に基づき慰謝料金100万円の支払
をそれぞれ求めた。 
 
<規定>
民法 第536条(債務者の危険負担等)
前二条に規定する場合を除き、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。
2 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない
 
<判断>
●8件のパワーハラスメントは認められない

本件解雇は無効

● 本件休業手当身分措置が調査妨害等の支障を避けるために必要かつ合理的な措置であったとしても、就労義務がないとはいえ一方的に賃金が減額される点でXに不利益な処分

本件休業手当身分措置において、後日、嫌疑がなかったことが認められる場合は「債権者の責めに帰すべき事由」に当たり、Xは休業手当の額を超える部分の賃金請求権を失わない

● 本件暫定出勤停止措置が、国賠法上違法となるか否かについて、
・・・日本側の担当者としてゃ、MLCの前記規定に従い、減給を伴う暫定出勤停止措置の長期化が炉同社に重大な不利益を与えるものであることを考慮して、日本側の調査終了後は日米間の協議を早期に終了させ、協議が整わなかった場合には速やかに日米合同委員会の決定に委ねるべきであったにもかかわらず、日米合同委員会に付託されることがないままXは解雇されている。

日本側の担当者は職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく本件暫定出勤停止措置を継続
①本件暫定出勤停止措置及び本件解雇は、単にMLCが規定する要件を満たさない無効なものであるだけでなく、
通常想定される協議の期間を大幅に超過したため、暫定出勤停止期間が長期に及び、Xに大きな不利益を与えた
②本件解雇は解雇事由の証拠が乏しく日本側と米国側で意見が分かれる状態で行われたことなどの事情によれば、本件暫定出勤停止措置及び本件解雇が無効とされ地位確認と未払賃金の支払を命じただけではXの精神的苦痛は回復されない

慰謝料50万円の請求を認容

●予備的請求にかかる中間利益控除について、
①中間利益の控除は、労働者が使用者に対する労務の提供を免れたことにより他の職について収入を得た場合に、使用者からの収入と他の職について得た収入を二重に取得することを否定するもの。
MLCにその定めがあるかどうかにかかわらず、中間利益の控除は許される
②本件解雇が国賠法上違法と評価されるものであったとしても、それによりXが解雇されなかった場合以上の利益を受けることを肯定する理由はない

出勤停止期間中と解雇後口頭弁論終結時までの間、Xが就労して得た給与を中間利益として控除
 
<解説>
賃金請求権を失わない場合、その期間、労働者が他の職について得た収入を中間利益として控除することが可能かどうか、民法536条2項後段に「この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない」と定めがあることから問題。
この点、労働者が就労を免れた期間中に他の職について利益(「中間利益」)を得たときは、使用者は、労働者に同期間中の賃金を支払うに当たり、平均賃金の6割を超える部分から当該賃金の支給対象期間と時間的に対応する期間内に得た中間利益の額を控除することが許され、また、
中間利益の額が平均賃金の4割を超える場合には、更に平均賃金算定の基礎に算入されない賃金(労基法12条4項所定の賃金)の全額を対象として中間利益の額を控除することが許されるものと解されている。
(判例)

判例時報2354

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2018年2月27日 (火)

権利能力なき社団における正会員性、宗教的人格権等(否定)

高松地裁丸亀支部H29.3.22      
 
<事案>
原告:いわゆる四国霊場八十八か所の発展等を目的として昭和33年頃に組織され、弘法大師の教義に関する法会、布教、教化、宣伝活動等の事業を行っている権利能力なき社団であり、その定款で、八十八か所寺院の住職を原告の正会員と規定。
四国霊場八十八か所を構成する第●番札所の住職である被告に対し、
①定款又は宗教的人格権に基づく妨害予防請求として、四国霊場巡礼の妨害禁止を求め、
②定款又は宗教的人格権に基づく履行請求として、本件寺院の納経所につき本件運営要領の定めを遵守した運営をするよう求め、
③滞納会費の支払を求めた。
 
<争点>
①被告は原告の正会員か
②被告は原告の定める納経所の運営要領に従う義務があるか 
 
<判断>
● 原告の請求を棄却。 
● 被告は、四国霊場を構成する寺院の住職であるから、原告の正会員となる資格があるが、被告が原告に対し正会員として入会の意思表示をしたことを認めるに足りる証拠はない。 
原告は、四国霊場の発展等を目的とする権利能力なき社団であって任意団体⇒被告に正会員の資格があることを理由として加入を強制する法的根拠はない。
①原告の定款には、正会員の退会手続について特段の定めがない⇒その退会の意思表示の方法に限定はない。
②被告は、平成20年12月、当時の原告会長に対し、原告に参加する意思はない旨通告。

仮に被告が原告の正会員として入会していたとしても、前記通告により原告に対し、退会の意思表示をしたと認められ、被告は原告を退会したものと認められる。
被告は原告の正会員ではない⇒原告は被告に対し、原告の定款に基づく義務を主張できない。
 
● 原告:四国霊場の統一的運営は社会通念上保護されるべき宗教的事業であり、かかる統一的運営を妨害されない人格的な利益(宗教的人格権)を有している旨も主張。 

私人である原告と被告との間で、信教の自由の侵害があり、その態様、程度が社会的に許容し得る限度を超えるときは、場合によっては、私的自治に対する一般的制限規定である民法1条、90条の規定等の適切な適用によって法的保護が図られるべき。
but
原告が主張する人格的利益とは、主に原告の定める本件運営要領に従った納経所運営であるところ、納経所の運営は各寺院が行うものであるし、本件運営要領の内容も、納経の受付日、受付時間等に関する事務的な定めに過ぎない。

本件運営要領に従った納経所運営が原告の信教の自由にかかわるものとは認め難く、原告主張の宗教的人格権は認められない


原告の妨害予防請求及び履行請求は、定款に基づくものも、宗教的人格権に基づくものも理由がない。
原告が主張する平成21年度以降の回避の支払義務もない。 
 
<解説>
●社団法人においては、社員の地位には権利だけでなく義務も伴う

入社には常に入社しようとする者の意思表示が必要であり、
脱退についても、原則として、社員の社団に対する一方的意思表示により退社することができ、
合理的範囲を超えて脱退の自由を制限する定款の定めは無効

権利能力亡き社団についても、同様に、構成員の加入・脱退は基本的に自由であると考えるのが相当。

一般社団法人及び一般社団法人に関する法律:
一般社団法人の社員は一方的意思表示によりいつでも退社することができること(28条1項本文)
定款により社員の退社の自由を制限することができるが(同項ただし書)、
そのような定款があっても、やむを得ない事由があるときは、社員はいつでも退社することができること(同条2項)
を定めている。
 
●最高裁H17.4.26:
県営住宅の入居者によって組織される自治会に対し、会員が退会の申入れをしたことをの有効性が争われた事案で、
被上告人(自治会)は、会員相互の親ぼくを図ること、快適な環境の維持管理及び共同の利害に対処すること、会員相互の福祉・助け合いを行うことを目的として設立された権利能力なき社団であり、いわゆる強制加入団体でもなく、その規約に置いて会員の退会を制限する規定を設けていない

被上告人の会員は、いつでも被上告人に対する一方的意思表示により被上告人を退会することができると解するのが相当であり、本件退会の申入れは有効
被上告人の設立の趣旨、目的、団体としての性格等は、この結論を左右しない。

県営住宅の入居者によって構成される自治会であっても、当該自治会が強制加入団体でなく、その規約において会員の退会を制限する規定を設けていないなどの事情のもとでは、会員は自治会に対する一方的意思表示により退会することができる。 

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2018年2月26日 (月)

別件訴訟(NHKの受託会社の従業員の訪問についての損害賠償請求訴訟)が不法行為に該当するとされた事例

東京地裁H29.7.19      
 
<事案>
X(NHK)は、A株式会社に対し、
放送受信料の契約勧奨、取次業務、これに付随する事務、公共放送及び受信料制度に関する視聴者の理解を促進する業務
を委託。
Aの従業員であるBは、受信契約締結の勧奨のため、Y2の自宅を訪問⇒Y2は再度訪問するよう依頼⇒再度訪問。
Bは、反NHK活動をしているY1(元NHK職員)に対して電話をかけたY2から電話に出るよう促され、電話に出たところ、Y1から「NHKの人間ちゃうやろ」などと言われたため、電話を切り、
Y2に対し、第三者に介入される内容ではないからこれ以上対応できない旨告げて、Y2の自宅から退去。
Y2は、その2日後に、Bの再度の訪問は不退去罪や特定商取引法違反に該当する不法行為を構成し、
Bを監督するXは使用者責任を負うと主張
⇒Xに対し、10万円の慰謝料を請求する訴訟を簡易裁判所に提起(別件訴訟)。

Y1は、Y2に前記訴訟の提起を促すとともに、Y2に代わって訴状の作成を行った。
Y2は、別件訴訟の第1回口頭弁論期日には出頭したものの、地裁に移送された後の2回の口頭弁論期日には出頭せず、訴状以外の準備書面・証拠を提出しなかった。

別件訴訟では、BはXの被用者とは認められず、Bによる再訪Xは放送法64条1項に基づく正当な訪問である不退去罪は成立せず、
特定商取引法3条1項、2項に違反せず、訪問販売等に関する法律施行規則6条1号にも該当しない
⇒Xに使用者責任は認められない⇒Y2の請求は棄却。

Xが、Yらに対し別件訴訟が不当訴訟であることを請求原因として、応訴のために弁護士費用54万円の支出を余儀なくされたと主張⇒損害賠償請求。
 
<争点>
①別件訴訟の不法行為該当性
②損害発生と損害額
 
<判断>
●請求を全部認容
●訴えの提起は、
①提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものである上、
提訴者がそのことを知りながら、又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて提訴したなど、
訴えの提起が裁判制度の趣旨・目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限り、相手方に対する違法な行為と解される。

別件訴訟は、Y1がY2に訴訟の提起を促し、Y2に代わって訴状の作成を行い、Y2はこれを受けて訴訟を提起
⇒意思を相通じて共同して行ったもの。

●Bの再度の訪問の際、BがY2から退去を要求された事実は認められず、Y2の権利を侵害するものとはいえず、
放送業者による放送に関する勧誘は特定商取引法の適用が除外されている

本件事実関係に照らせば、別件訴訟で主張した権利は事実的、法律的根拠を欠くもの。 

Y1は、Y2から事情を聴取すれば、本件権利が事実的、法律的根拠を欠くことを容易に知り得たものであるところ、
勝訴を目的とせずXの業務を妨害する目的で別件訴訟に関与

裁判制度を不当に利用する目的を有している 

Y2は、自身の体験からすれば、本件権利が事実的、法律的根拠を欠くことを容易に知り得たものであるところ、別件訴訟・本件訴訟の訴訟追行態様は真摯であるはいえず、
Bの訪問後わずか2日後に別件訴訟を提起し、本件訴訟の目的につきXを監視することにあったと主張していて被害回復を目的にしたとは窺われず、
裁判制度を不当に利用する目的を有していた
別件訴訟の提起は、裁判制度の制度・目的に照らして著しく相当性を欠くもので違法であり、共同不法行為を構成

<解説>
最高裁H22.7.9:
本訴の提起が不法行為に当たることを理由とする反訴について、
本訴に係る請求原因事実と相反することとなる本訴原告自らが行った事実を積極的に認定しながら、
本訴原告において記憶違いや通常人にもあり得る思い違いをしていたことなどの事情について何ら認定説示することなく、本訴の提起による不法行為の成立を否定した原審の判断には、法令違反がある。
⇒原審判決を破棄差し戻した。 

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2018年2月25日 (日)

遺言能力なし⇒秘密証書遺言が無効とされた事案

東京地裁H29.4.25      
 
<事案>
亡Aは、大正12年生まれで、平成19年2月28日付けで秘密証書遺言を作成し、平成21年10月に死亡。
亡きAの二男であるX1及び長女であるX2は、
本件秘密証書遺言は無効であるところ、
亡Aの長男であるY1及び同遺言で遺言執行者として指定されているY2がこれを争っている

Yらに対し、同遺言に基づき移転登記された不動産について登記の更正手続を求め、併せてその共有持分権の確認を求めた。
 
<判断>
●本件署名は亡Aによってなされたものか?
①本件秘密証書遺言の検認手続の際Xらはいずれも「遺言者の字だと思います」と陳述している。
②本件署名と対比されている本件秘密証書遺言の封紙部分の亡Aの署名等を対比すると、相当数の特徴的な筆跡が合致する部分及び類似する部分がある

本件署名は亡Aによってなされたものであると判断
 
●本件秘密証書遺言が作成された時において亡Aが遺言能力を欠いていたか? 
Xらからは本件秘密証書遺言作成当時に亡Aには遺言能力はなかったとうする医師の意見書が、
Yらからは遺言能力はあったとする医師の意見書が、
提出。
裁判所は鑑定を採用し、鑑定では遺言能力はなかったという鑑定意見が提出。

本件秘密証書遺言作成当時、亡Aが進行した認知症にあり、その理解及び判断能力が著しく損なわれていた状態にあった


亡Aは、本件のような複雑な内容及び法的効果について理解することができる状態にはなかった。

本件秘密証書遺言は無効であり、移転登記されている不動産について更正手続を命じた。

共有持分権の確認については、登記の更正手続が認められる以上確認の利益はないとして却下。
 
<規定> 
民法 第970条(秘密証書遺言)
秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
二 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
三 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
四 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。
2 第九百六十八条第二項の規定は、秘密証書による遺言について準用する。
 
<解説>
秘密証書遺言:
遺言者が遺言証書を作成して、それに署名押印した上でそれを封書に封じ、
その封書を遺言証書に押印したのと同じ印鑑で封印し、
その封書を公証人と2人以上の証人に提出し、自分の遺言書であることと氏名及び住所を申述し、
公証人が、その封書に日付と遺言者の申述を記載した上で、
遺言者、公証人、証人がそれぞれ署名押印する。

①遺言内容を一切秘密にできること、
②遺言の本文をワープロによって作成することができる
というメリット。
but
効力が争われた場合には遺言書が有効に作成されたことを立証することに困難が伴う⇒秘密証書遺言が作成することは多くない。 

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2018年2月24日 (土)

犯罪事実(違法な医薬品販売の罪)についての検索事業者に対する検索結果削除請求(否定)

高松高裁H29.7.21      
 
<事案>
犯罪(違法な医薬品販売の罪で有罪判決を受けた)の容疑で逮捕された事実の全部又は一部を含む記事等が掲載されている
⇒本件検索結果表示の削除を求めた事案。 
 
<原決定>
債権者が本件検索結果表示の削除請求権を有するものとは認められない。 
 
<判断>
検索事業者に対し、自己のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURT等情報を検察結果から削除することを求めるための要件に関して最高裁H29.1.31の判断枠組みに従い、本件抗告を棄却。 

本件事実に即した諸事情の考慮要素:
①本件犯罪に関する事実は、保健衛生の向上を図り、消費者の生命、身体の安全を保護する観点から、社会的に強い非難の対象とされ、罰則をもって禁止されている⇒その防止及び取締りの徹底について社会的関心が高い
②本件検索結果表示は、検察結果の総数のうち本件検索結果表示が占める数の割合に加え、本件会社の称号が変更され、同表示に掲載された人物が直ちにXであると同定されるものではない⇒本件犯罪に係る事実が伝達される範囲はある程度限られるものといえる。
③Xの社会的地位や影響力について、取引先等が、Xの信用調査の一環として本件犯罪に関する事実を知ることは正当な関心事といえる。
④本件記事等の公共性及び社会的関心は高く、これを伝えることについて、一定の意義及び必要性が認められる。
⑤本件犯罪は、今日においても、類似の事案として、医薬品医療機器法違反により逮捕される事案が発生し、同様な被害がある⇒本件犯罪は、そのような犯罪の一事例として、今なお公共の利害に関わる事項であるといえる。

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2018年2月22日 (木)

勤務先会社が指定するウィークリー・マンションのテレビ受信機付き居室に入居し、NHKの受診料支払⇒不当利得を返還請求(否定)

東京高裁H29.5.31      
 
<事案>
Xは、不動産会社Aが賃貸する家具家電付き賃貸物件(いわゆるウイークリー・マンション)に入居し、Y(NHK)との間で放送の受信契約を締結して受信料を支払った。
 
<争点>
Xが「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」(放送法64条1項)に該当するか。 
 
<判断>
●放送法64条1項にいう「協会の放送を受診することのできる受信装置を設置した者」は放送法固有の概念

その意義を解釈するに当たっては、同項の文言だけでなく、その立法趣旨も併せて考慮することが可能であり、かつ適切。

その趣旨:
①Yが公共的言論報道機関であり、その使命を果たすためには財産的基礎を確保することが必要不可欠
②税収に委ねた場合には番組編集に国の影響が及ぶことが避けられず、他方、広告収入に委ねた場合には広告主の影響が及ぶことが避けられない

特殊な負担金である受信料制度を採用して国民に直接費用負担を求める趣旨に出たもの。
このような同項の文言及び趣旨

「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」とは、受信設備を物理的に設置した者だけでなく、その者から権利の譲渡を受けたり承諾を得たりして、受信設備を占有しようして放送を受信することができる状態にある者も含まれる。

●Xは、
放送法64条3項により総務大臣の認可を受けた放送受信規約2条3項の「独立して住居もしくは生計を維持する単身者」に該当し、
本件物件を住居として居住し、唯一の居住者であったもの。

Xは、
所有者又はAによって設置されたテレビジョン受信機付きの本件物件を、Aから借りたBの指定を受けて、これを占有使用して、Yの放送を受信し得る状況を享受する者

設置者の承諾を得て受信設備を占有使用して放送を受信することができる状態にある者であり、「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」(放送法64条1項)に該当する。


不当利得は成立しない。 
 
<解説> 
放送法64条1項の効力について
A:NHKとの間で放送受信契約の強制的締結を否定する見解
B(裁判例):受信契約締結義務(強制的締結)を肯定
b1:申込み到達後2週間で契約が成立
b2:承諾の意思表示を命ずる判決により契約が成立

判例時報2354

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2018年2月19日 (月)

議会運営委員会の市議会議員に対する厳重注意処分とその公表と名誉毀損による国賠請求(肯定)

名古屋高裁H29.9.14      
 
<事案>
Y(名張市)の市議会議員で教育民生委員会に属するXが、同委員会において計画された視察旅行の必要性に疑問を感じてその実施に反対意見を述べ、欠席願を提出して、同視察旅行を欠席
⇒議会運営委員会がXに対して厳重注意処分をし、議長が同処分を公表

Xは、同処分とその公表によって名誉を毀損された⇒国賠法1条1項に基づき、Yに対して、慰謝料500万円の支払を求めた、。 
 
<規定>
裁判所法  第3条(裁判所の権限)
裁判所は、日本国憲法に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し、その他法律において特に定める権限を有する。
 
<判断>
●議会の議員に対する措置が、一般市民法秩序において保障されている権利利益を侵害する場合明白な法令違反がある場合は、議会の内部規律の問題にとどまるものとはいえない
⇒当該措置に関する紛争は、裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」にあたると解するのが相当。 

Xの本件請求は、
外形的な請求内容だけでなく、紛争の実態に照らしても、一般市民法秩序において保障されている移動の自由や思想信条の自由と直接の関係を有するといえ、かつ、
その手続には明白な法令違反があると主張されている

本件請求は、裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」にあたり、司法審査の対象となる。

●本件処分の通知書の記載内容全体
⇒XがY市議会議員として行うべき法的義務のある公務を怠ったものと断定し、厳重注意しなければXが議員としての責務を全うしえない人物と評価・判断し、懲罰類似の処分に出されたことを示すものといえる。
⇒Xの議員としての社会的評価の低下をもたらすものとみとめられる。 

議長の多数の新聞記者に対する前記処分の公表は、Xの社会的評価を低下させる事実を伝播する可能性があり、かつ、多数の新聞報道により実際に伝播した⇒Xの社会的評価が低下した。

Xに対する名誉毀損の成立を認め、原判決を取り消し、Yに対して50万円の慰謝料の支払を求める限度で、請求認容
 
<解説>
裁判所法3条1項の「法律上jの争訟」とは、
法主体者間の具体的権利義務に関する争いであって、法令の適用により終局的に解決しうべきものをいう(最高裁昭和29.2.11)。

最高裁昭和52.3.15:
特殊な部分社会である大学における法律上の争訟のすべてが当然に裁判所の司法審査の対象になるものではなく、
一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題は、司法審査の対象から除かれるべきものである。

判例時報2354

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2018年2月11日 (日)

会社における弁護士・依頼者秘匿特権(米国判例)

Upjohn Co. v. United States
      
  <控訴審>
弁護士と、その法的助言に従って会社の方針を決定できる立場にあるコントロールグループの間の通信のみが秘匿特権によって保護されるというコントロールグループテストを採用。

弁護士とコントロールグループ以外との従業員との間の通信に関しては、弁護士・依頼者間の通信とは認められないから、秘匿特権の適用はない。
 
<争点>
会社の弁護士と、会社のコントロールグループ以外の従業員との間の通信に秘匿特権の適用を認めるか? 
 
<判断> 

①弁護士が依頼者に対して十分な法的助言や弁護を行うことは、法の遵守や正義の実現といった公共の利益に資する。
②このような助言や弁護は、弁護士が依頼者から全部の情報を得ることによって可能になる

弁護士と依頼者との間の全面的で率直な通信を保護することが秘匿特権の目的
 

秘匿特権は、
①弁護士が専門的な助言をすることを保護するだけでなく、弁護士が法的助言をするために必要な情報を収集することをも保護するためのもの。
②会社関係においては、弁護士が必要とする情報を持っているのは、コントロールグループではなく中級以下の従業員であることも多い。⇒そうした従業員との通信が保護されなければ、弁護士が会社に対して法的助言をするにあたって必要な情報を十分に収集することができなくなる

コントロールグループテストは、秘匿特権の目的を妨げるもの。

コントロールグループテストは、依頼者たる会社の方針を実行に移す非コントロールグループの従業員に対して、全面的で率直な法的助言を伝えることを難しくする。

現代の企業が直面する複雑で広範な規制
⇒会社は個人と異なり、何らかの法的問題が起きたときだけでなく、日常業務において法令を遵守するためにも不断に弁護士に相談する必要。
コントロールグループテストを採用し、秘匿特権の範囲を狭く解釈することは、会社の弁護士が、依頼者たる会社に対して確実に法令を遵守させるために有益な活動を行うことを制限することにつながる

コントロールグループテストは、適用される者の範囲が不明確で、弁護士と依頼者が、自分たちの間の議論が保護されるかどうか予見することが困難。

コントロールグループテストを採用せず、秘匿特権の適用範囲はケースバイケースで判断されるべき。
 

本件会社の従業員と弁護士との間の通信が、
①従業員が、会社の上層部の指示に従って行ったものであること、
法令遵守や、訴訟の可能性を考慮した法的助言のために必要であったこと、
会社における従業員の職務の範囲に属する事項に関するものであること、
法的な目的で行うことが明示されており、従業員もそれを認識していたこと、
秘密扱いとされていたこと

本件の従業員と弁護士の間の通信は秘匿特権によって保護されるべき
 

秘匿特権によって開示から保護されるのは通信に限られ、弁護士と通信を行った者が、その前提となる事実について開示することを妨げるものではない。

本件のような通信に秘匿特権を適用しなかったとしても、紛争の相手方にとっては通信自体がなされなかった場合と同じ状況になるに過ぎない。 
本件においても、IRSは法務部長や外部の弁護士と通信を行った従業員に対して、本件会社の提供したリストに基づいて、自由に質問をすることができる。
実際にIRSはそのうち25名に対して面接調査を行っている。
 

①従業員と弁護士の間の通信のみならず、
②法務部長が法的助言や訴訟の準備のために作成したメモ等に対してもIRSから提出命令

職務活動の成果の法理(work product doctrine)の適否が問題。 

会社:これらの文書は訴訟準備のために弁護士が作成した職務活動の成果(work product)に該当するとして開示を拒む。

判断:
IRSの提出命令に対しても職務活動の成果の法理の適用がある。
証人の供述に基づくメモは弁護士の思考過程を明らかにする職務活動の成果として、特別な保護が与えられるべき

控訴審判決を破棄し、職務活動の成果の法理についてさらに審理の必要があるとして、控訴裁判所に差し戻した。

アメリカ法百選

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2018年2月 9日 (金)

諫早湾干拓地潮受堤防排水門開放差止請求事件第1審判決

長崎地裁H29.4.17    

<事案>

国営諫早湾土地改良事業において、諫早湾干拓地潮受堤防が設置され、それにより締め切られた奥部を調整池とし、その内部に干拓地が形成された。
Y(国)は当該潮受堤防の北部及び南部に排水門を設置し、その開門権限を有している。
福岡高裁H22.12.6は、Yに対し、判決確定の日から3年を経過する日までに、防災上やむを得ない場合を除き、本件各排水門を開放し、以後5年間にわたって開放を継続することを命じ、同判決は同月21日に確定。

本件:
Xら(諫早湾付近の干拓地を所有又は賃借し農業を営むという者、諫早湾内に漁業権を有する漁業協同組合の組合員として漁業を営むという者及び諫早湾付近に居住する者など)が、Yは本件各排水門を開放し、以後5年間にわたってその開放を継続する義務を負っており、地元関係者の同意と協力なしに開門をする可能性があって、Xらは開門により被害を受けるおそれがあるなどと主張

所有権、賃借権、漁業行使権、人格権又は環境権・自然享有権に基づく妨害予防請求として、Yに対し、
・・・・開門の開門の各差止めを求めた。

 
<Yの主張>
事前対策を実施することによって、本件開門によるXらの被害は回避され、
本件開門によって漁業環境が改善する可能性があり、
開門調査を実施し、調査結果を公表することに公共性ないし公益上の必要性がある。 
 
<判断>
●Yが本件開門をする蓋然性 
ある者に対して一定の作為をしないことを求める給付訴訟においては、その者によって当該「一定の作為」がなされる蓋然性のあることが、訴えの利益として必要
Yがケース1~3開門をする蓋然性はあるが、その余の開門をする蓋然性はない。
 
●ケース3-2開門、ケース1開門およびケース3-1開門に差止請求を認容すべき違法性があるか

◎ 差止請求を認容すべき違法性があるかを判断するにあたっては、
侵害行為の態様と侵害の程度、
被侵害利益の性質と内容、
侵害行為の持つ公共性ないし公益上の必要性の内容と程度
等を比較検討
するほか、
被害の防止に関する措置の有無及びその内容、効果等
の事情を考慮
してこれを決すべき。

前記被侵害利益の性質と内容については、個々のXの被侵害利益を考慮すべきであるが、
多数の当事者の権利について妨害のおそれがあることは、公共性ないし公益上の必要性の程度を減殺する事情として考慮することができる

◎ ケース3-2開門は、本件各排水門の管理水位を維持したまま5年間の比較的長期にわたり、調整値に海水を導入するもの

これにより各X農業者の所有又は賃借に係る農地には塩害、潮風害又は農業用水の一部喪失の発生する高度の蓋然性があり、これらにより農業被害の発生するおそれがある
これらの農業被害は、財産的権利に関するものであるが、各X農業者の生活等の基盤に直接関わるものであり、重大

他方で、ケース3-2開門がなされても、Yが主張する諫早湾及び有明海の漁業環境が改善する可能性及び改善の効果はいずれも高くない

ケース3-2開門による開門調査を実施し、本件事業と漁獲量減少との関連性等の調査結果を公表することには一定の公共性ないし公益上の必要性はあるが、解明の見込みは不明である上、ケース3-2開門がなされた場合に、多数のXが土地所有権ないし賃借権の行使として営む農業に前記被害を受けるおそれが生じる
ケース3-2開門の公共性ないし公益上の必要性は相当減殺される

Yの予定する事前対策は、その実効性に疑問があり、これによって、Xらの妨害のおそれは否定されない

ケース3-2開門によって侵害を受けるおそれのある各Xの被侵害利益ケース3-2開門の公共性ないし公益上の必要性とを比較し、各事情を総合的に考慮すれば、ケース3-2開門については、差止請求を認容すべき違法性がある
同様に、ケース1開門、ケース3-1開門についても、差止請求を認容すべき違法性がある。

●ケース2開門について 
ケース2開門は、5年間の開門をするものであり、
第1段階としてケース3-2開門を行い、
第2段階としてケース3-1開門を行い、
第3段階としてケース1開門を行うという開門方法。

ケース2開門の差止めを求める訴えは、訴えの利益を欠き、不適法⇒却下。

判例時報2353

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2018年2月 8日 (木)

強盗の犯意の認定、殺人の中止未遂の認定、強盗殺人での死刑選択の基準

名古屋高裁H27.10.14      
 
<事案>
被告人が、金品窃取の目的で民家に侵入し、家人に発見された
⇒居直り強盗を決意して、家人2名を殺害し、1名に重傷を負わせ、現金等を奪った住居侵入、強盗殺人及び強盗殺人未遂。

被告人が以前に在籍していた大学の更衣室で携帯電話機1台を盗み、民家の駐車場に駐車していあった普通乗用自動車1台及びその積載品2点を盗んだ各窃盗。 
 
<原審>
死刑 
 
<判断・解説>
●強盗の犯意の認定
◎原審:
検察官による被告人の取調状況を録音・録画した記録媒体や被告人との接見時の供述内容を取りまとめた弁護人作成の供述録取書を取調べ

検察官の取調べ時の被告人の供述態度や供述内容から、被告人の検察官調書の信用性は高く、弁護人作成の供述録取書やこれに沿う被告人の公判供述のうち、被告人の検察官調書と整合しない部分は信用できない
⇒強盗の犯意を認定。

◎判断:
検察官調書のうち、最初に遭遇した家人に暴行を加えた際に強盗の犯意を有していた旨述べる部分は、被告人が進んで心理状態を振り返った上、自発的に不利な内容を述べたものとは評価できず、むしろ、反省していないと受け取られるのを恐れるなどした結果、検察官の推測内容をもって自己の供述内容とすることを受け入れたものである可能性を否定できない
それ自体に十分な証拠価値を認め得る性質のものとはいえないとして、被告人の検察官調書の信用性に関する原判決の判断を否定

本件の事実関係

被告人は、侵入前の時点で、家人と遭遇して騒がれたり抵抗にあったりする事態を予想し、その場合にあらかじめ用意していたモンキーレンチやクラフトナイフを用いて暴行を加え、反抗を抑圧して金品を奪い取ることになるかもしれないことを考えていたと推認でき、このような事前の不確定な意思内容が、家人との遭遇時に確定的な強盗の犯意となって現れ、ここにおいて金品を強奪することを決意し、家人に暴行を加えたと推認できる。
強盗の犯意を認定
 
◎解説 
本判決は、自白の信用性の判断手法に対して消極的な評価。

録音・録画は、
自白の任意性の効果的な立証という観点のほか、
氷見事件、志布志事件、足利事件など冤罪問題の顕在化によって活性化した取調べの可視化の議論、特に、無罪となった障害者郵便割引制度不正利用事件の捜査の在り方を契機として、平成22年に法務省が設置した「検察の在り方検討会議」の提言の中で、「取調べや供述調書に過度に依存した捜査・公判からの脱却」という提言等を受けて導入されたもの。
but
その後、録音・録画が補助証拠として自白の信用性判断のために利用されるようになっただけでなく、
さらに、検察官の側から、録音・録画を、実質証拠として活用する方法が積極的に主張されるようになった。

弁護人の側からは、
従前、録音・録画を補助証拠として利用できることは前提にした上で実質証拠としての利用の可否が議論されることが多かったが、
自白の任意性・信用性判断として取り調べた録音・録画が実質証拠として機能したといわれる今市事件を契機として、
録音・録画の実質証拠化に反対する主張が多くみられるようになった

学説:
録音・録画の実質証拠としての利用に積極的な見解もみられるが、
多くの学説は消極的な見解に立っている。

録音・録画を実質証拠として用いることには慎重な検討が必要である旨判示した裁判例として東京高裁H28.8.10があり、同判決においても、捜査機関の管理下で行われた取調べにおける被告人の供述から、供述態度による信用性の判断は困難である旨指摘。
本件は、その具体例の1つ。
 
●中止未遂の成否と中止行為 
   
刑法 第43条(未遂減免) 
犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
 
◎原審:
刑法43条ただし書の「犯罪を中止したとき」に当たるかどうかの判断において、
「客観的に人を死亡させる危険性の高い行為、すなわち、殺人罪に該当する行為を行うことにより、そのまま放置すれば犯罪の結果が生じかねない状況を作出した場合は、この結果の発生を防止する措置を行ったかどうかを検討すべきである」旨の解釈を示し、
「本件は結果が生じかねない状況を作出した場合に当たるのに、被告人は結果の発生を防止する措置を行わなかった」と判示。
 
◎判断:
原判決の解釈を前提としつつも、
「本件は、被告人が被害者に暴行を加え、これにより殺人罪に該当する行為を行ったものの、そのまま放置すれば犯罪の結果が生じかねない状況を作出した場合には当たらない」旨判示。 
 
◎現在は、実行行為の終了時期の議論を経ることなく、端的に中止行為に該当するためには何が必要かを考えれば足りるとするのが通説。
この場合、因果関係を遮断しなければ結果が発生してしまう状態が生じたかどうかによって、中止行為に作為が必要か、不作為で足りるかを区別する見解が多い。 
 
●強盗殺人罪を含む事案における死刑の選択の基準 
   
刑法 第240条(強盗致死傷)
強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。
 
◎原審:
強盗殺人罪の法定刑は死刑又は無期懲役
⇒2名を殺害していながら無期懲役が選択されるのは、死刑を回避する特別な事情がある場合だえると認められる。 
 
◎判断
刑法240条後段の法定刑の内容から直ちに、殺害の被害者が2名であれば原則として死刑を選択すべきである旨の解釈を導くことができるとは考えられない。

殺害された被害者が2名の事案の場合に、死刑を選択するのが原則的であるとか、無期懲役を選択するのは特別な事情が存在する例外的な場合であるなどといえるような量刑傾向ないし量刑状況があるとは考えられない。

むしろ、2名が殺害されるという重大な結果が生じていることを念頭に置きつつも、改めて、当該事案の内容を踏まえながらそのような結果が生じた経緯等について吟味し、罪を犯した者に最大限の非難を向けることが疑問なくできるかどうか、できるとすればその合理的な根拠は何かについて、可能な限り慎重に検討を進めるべきである。

結論としては、原審の死刑の選択を維持したが、強盗殺人における死刑選択の基準については原判決と異なる基準を示した。
 
◎解説 
氷山事件判決(最高裁昭和58.7.8):
犯行の罪質、動機、態様ことに殺害手段方法の執拗性・残虐性、結果の重大性ことに殺害された被害者の数、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等各般の情状を併せて考慮し、と判示。

統計的に最も大きな要素となっているのは死亡した被疑者の数であり、
死亡被害者が2名の強盗殺人事件では、約66%について死刑が宣告され、無期懲役が宣告されたのは34%。

裁判員裁判の評議に当たっては、これまでのおおまかな量刑の傾向を裁判体の共通認識とした上で、これを出発点として当該事案にふさわしい評議を深めていくことが求められ、この傾向を踏み出す量刑をすることについては、具体的、説得的論拠が示される必要がある(最高裁H26.7.24)。

判例時報2352

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2018年2月 7日 (水)

対象会社による公告後の譲受者による売買価格の決定の申立ての可否

最高裁H29.8.30      
 
<事案>
Aは、振替株式を発行しているB(「本件対象会社」)の株式を公開買付けにより取得⇒会社法179条1項の特別支配株主となり、
平成27年12月、
本件対象会社に対し、
同項の規定による株式売渡請求をしようとする旨、
株式売渡請求によりその有する株式を売り渡す株主(「売渡株主」)に対して、その株式(「売渡株式」)の対価として交付する金銭の額(「対価の額」)等、
法179条の2第1項各号に掲げる事項を通知。 

本件対象会社は、上記の通知に係る株式売渡請求を承認し、法179条の4第1項1号及び社債、株式等の振替に関する法律161条2項に基づき、上記の承認をした旨、対価の額等、法179条の4第1項1号に定める事項について公告をした。

抗告人は、本件公告後に、本件対象会社の売渡株式のうち3000株(「本件株式」)を譲り受けた。

Xが本件株式について法179条の8第1項に基づく売買価格の決定の申立てをすることができるか否かが争われた。
 
<判断>
法179条の4第1項1号の通知又は同号及び社債振替法161条2項の公告がされた後に法179条の2第1項2号に規定する売渡株式を譲り受けた者は、
法179条の8第1項の売買価格の決定の申立てをすることができない
。 
 
<解説> 
●問題の所在 
特別支配株主による株式等売渡請求の制度:
特別支配株主において、株式等売渡請求に係る株式を発行している対象会社の株主総会の決議を要することなくキャッシュ・アウトを行うことを可能とする制度。

株式等売渡請求⇒売渡株主等は、裁判所に対し、その有する売渡株式等について売買価格決定の申立てをすることができる(法179条の8第1項)。
but
本件のXように対象会社による売渡株主への通知又は公告後に売渡株式を譲り受けた者が上記の申立てをすることができるか?
 
●株式売渡請求の制度について
◎ 従前の実務:
キャッシュ・アウトの手法として全部取得条項付種類株式の取得(法171条1項)の方法
vs.
これによる場合は、常に対象会社の株主総会の特別決議を要する
⇒キャッシュ・アウトの完了までに長時間を要し、時間的・手続的コストが大きい。

機動的なキャッシュ・アウトを可能とするため、
平成26年改正において、
対象会社の総株主の議決権の10分の9以上を有する特別支配株主が、対象会社の株主総会決議を要することなく少数株主に対してその保有する対象会社の株式を売り渡すよう請求することができる、株式売渡請求の制度
 
◎株式売渡請求は、一種の形成権の行使。
対象会社の承認(法179条の3第1項)を経て、対象会社から少数株主(売渡株主)に対し、株式売渡請求に関する所定事項についての通知又は公告(法179条の4第1項1号、社債振替法161条2項)
特別支配株主から売渡株主に対して株式売渡請求がされたものとみなされ(法179条の4第3項)、これにより、売渡株主の個別の承諾を要することなく、特別支配株主と売渡株主との間に売渡株式についての売買契約が成立したと同様の法律関係が生じる。

特別支配株主が定めた取得日(法179条の2第1項5号)に、法律上当然に、売渡株主から特別支配株主への売渡株式の譲渡の効力が生じ、特別支配株主が売渡株式の全部を取得(法179条の9第1項)。 

株式売渡請求がされることにより、対象会社の少数株主は、その意思にかかわらず自らの有する対象会社の株式を売り渡すことになる。

売渡株主の利益を保護するため、
(1)株式売渡請求には対象会社の承認を要すること(法179条の3)等とされ、
(2)売渡株主がその利益を確保する方法として、
①売渡株式の取得の差止請求(法179条の7)
②売買価格決定の申立て及び
③売渡株式の取得の無効の訴え(法846条の2)
が規定。
 
対象会社による売渡株主への通知又は公告後に売渡株式を譲り受けた者が売買価格決定の申立てをすることの可否 

株式売渡請求の手続において基本的に保護の対象として想定されている株主は、対象会社の通知又は公告によって、自らの意思にかかわらず特別支配株主に株式を売り渡す立場に置かれることになる株主(=対象会社の通知又は公告の時点における株主)
②裁判所による価格決定の効力は申立てに係る売渡株式についてのみ生ずると解されている⇒売渡株式の売買価格の適正を一般的に図るために申立権をより広く認めるべきとの要請があるとは考え難い
③対象会社の通知又は公告によって株式売渡請求の事実や具体的な対価の額等が対外的にも明らかになった後にあえて売渡株式を譲り受けた者に、当該対価の額に関して不服をいう機会を与える必要はない。

売買価格決定の申立てをすることができる株主は、通知又は公告の時点における株主であるとするのが相当であり、通知又は公告後に売渡株式を譲り受けた者は、売買価格決定の申立てによる保護の対象として想定されておらず、同申立てをすることができないと解するのが相当。

判例時報2352

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2018年2月 5日 (月)

保険金等請求訴訟で火災事故が保険契約者の故意によるもので免責されるとされた事例

福島地裁いわき支部H28.10.27      
 
<事案>
XとY1の間の火災共済契約等並びにXとY2との間の火災保険契約の目的物である建物及びその内部の家財が火災により焼失
⇒XがYらに対し、これらの契約に基づく共済金及び保険金を請求。 
 
<争点>
各契約に係る約款のいわゆる故意免責条項が、本件火災に適用されるか? 
 
<判断>
●消防署の判定結果(仏壇から出火)と私的鑑定(仏壇に隣接する押入れ内部からの出火)を詳細に検討し
前者については火災現場の客観的状況につき誤認があるため、出火場所の判定が誤っている疑いがある
⇒後者の信用性が前者にそれに上回る
⇒通常火のない押入れ内部からの出火である可能性が高く、本件火災が放火によるものであることが強く疑われる客観的状況にある。


経済的に困窮していたXが合理的必要性のない保険契約を締結した翌日に、いずれの主張を前提としても通常は火の気のない部屋にたまたま発生した火気が原因で本件火災が生じ
Xが建物所有者でないのに建物が係る火災保険金を請求したという一連の事実経過

本件火災がXの保険金目的の放火によるものであることに対する相応に強い推認力

同時期にXが保険金取得目的で入院⇒Xの保険金の不正取得の意図を認めた。

Xが保険金詐取の目的で本件火災を故意に惹起したことが強く推認できるとして、消極方向の間接事実を排斥して、故意免責を認めた。
 
<解説>
火災保険契約に基づく保険金請求事件におけるいわゆる故意免責の立証責任は、保険者が負う。 

保険者が直接証拠を入手することは困難⇒複数の間接事実を組み合わせた立証によるほかない場合が多い。
(1)火災原因が放火であることを推認させる間接事実:
①出火場所
②出火態様
③出火時刻
④失火等の原因となる他の火源の有無
⑤助燃剤の有無


(2)放火に対する保健金請求者の関与を推認させる間接事実:
①第三者の出火場所への侵入可能性
②被保険者等の動機・属性を示す事情
③被保険者等の火災発生前後の言動
④保険契約締結に関する事情等

判例時報2352

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2018年2月 4日 (日)

部活中の負傷による後遺症障害⇒顧問の安全配慮義務違反(肯定)

大阪地裁H29.2.15      
 
<事案>
Yの設置運営するB高校(「本件高校」)の日本拳法部の新入部員であったX1が、同部の練習中に、後頭蓋窩急性硬膜下血腫等を負った
⇒X1及びその両親が、同部の顧問であり、Yの被用者であったAには本件事故を未然に防止すべき指導上の注意義務があったのにこれを怠ったと主張し損害賠償請求 
 
<判断>
●本件事故の態様(争点①)
本件事故当時、一緒に活動していた部員の供述や対戦相手の供述
⇒対戦相手が、X1が蹴り上げた左足をつかみ、X1の右足を払ったことから、X1が点灯し、本件事故に至った。
 
●顧問Aの安全配慮義務違反の有無(争点②) 
初心者と上級者と対戦させるに当たっては、上級者に対し、蹴り足をつかみ、他方の足を払うなどといった危険な技をかけないように指導するとともに、X1とその対戦相手との動向に注視し、できる限りそばに付き添って指導し、X1が対戦相手から危険な技をかけられそうになった場合には、対戦相手に対し、当該技をかけるのを止めるように指導する安全配慮義務があったのにこれを怠った。
   
Yは、X1に対し、158万円余、
父親であるX2に対し30万円
母親であるX3に対し61万円余
を支払うよう命じた。
 
<解説>
顧問(教師)の安全配慮義務について、
担当教諭(顧問)は、練習によって生ずるおそれのある危険から生徒を保護するために常に安全面に十分な配慮をし、できる限り生徒の安全に関わる事故の危険性を具体的に予見し、その予見に基づいて事故の発生を未然に防止する措置を執り、クラブ活動(部活動)中の生徒を保護すべき注意義務を負っている。 

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2018年2月 3日 (土)

公正証書遺言の方式違背等(肯定)

東京高裁H27.8.27      
 
<事案>
共同相続人であるXらが、共同相続人であるYらに対して、被相続人Aによる公正証書遺言には方式違背がある等として、公正証書遺言の無効の確認を求めるともに、
公正証書遺言に基づきされた被相続人A所有の不動産に係る登記の更正又は抹消の登記や手続を求め、
あわせて公正証書遺言の前に作成された自筆証書遺言についても、遺言意思がなかったとして無効確認を求めた事案。 
 
<判断>
●公正証書遺言
①被相続人Aは、公証役場訪問前には高度の意識障害によりコミュニケーションが困難な状態になることがあり、公証役場訪問後には救急外来を受診し意識障害を生じ、肝性昏睡と診断されるなど、被相続人Aの意識状態や身体状態には一定の変動があり、具体的な応答をし得る程度の意識状態や身体状態にあったとみるには相当の疑義が存する
②被相続人Aは公証人に対し、「Y1に全部。」、「Y2にも。」と述べる以外は何も言わず、証人Bらもこれらの発言以外は見聞きしていなかった
but公証人の作成した遺言案には、Y1に10分の5、Y2及びXらに各10分の1とするもので、公証人が被相続人Aの意思を忖度、整理し、内容を補充して作成したと考えられる。
公証人が遺言案を読み上げて内容の確認をしたところ、被相続人Aは頷くのみで何ら具体的発言をすることはなかった

遺言者の遺言の趣旨を理解できるように口授したものとは認められない

●自筆証書遺言 
①被相続人Aは、自筆証書遺言の作成を試みて、何枚か作成したものの、いずれもうまく書けず、Y1が4か所に訂正印を押さなければならないような不出来なものであった。
②被相続人Aは、作成したものを持ち帰らず、また作成に立ち会ったAの兄嫁であるBに保管等を託すこともしなかった
Bから遺言書として通らないと言われて公正証書遺言を作成することを勧められ公証役場を訪問して本件公正証書遺言を作成している。

公正証書遺言の作成を勧められた時点で本件自筆証書遺言をもって遺言書とする意思を失っていた本件自筆証書遺言は遺言意思がなく無効
 
<規定> 
民法 第969条(公正証書遺言)
公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 証人二人以上の立会いがあること。
二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。

民法 第969条の2(公正証書遺言の方式の特則)
口がきけない者が公正証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述し、又は自書して、前条第二号の口授に代えなければならない。この場合における同条第三号の規定の適用については、同号中「口述」とあるのは、「通訳人の通訳による申述又は自書」とする。
2 前条の遺言者又は証人が耳が聞こえない者である場合には、公証人は、同条第三号に規定する筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝えて、同号の読み聞かせに代えることができる。
3 公証人は、前二項に定める方式に従って公正証書を作ったときは、その旨をその証書に付記しなければならない。
 
<解説> 
民法969条2号の趣旨について、遺言書の財産を誰に対してどのように処分するかといった遺言の具体的な内容を遺言の趣旨として、公証人に対して自らの言葉で語ることを必要とするということ。

言葉によらない表示は口授とはいえない

首を振る程度の返事をした場合や肯定又は否定の挙動を示したにすぎない場合に口授があったとはいえない(最高裁)。

自筆証書遺言のために複数書き直しがされ、結局持ち帰りも保管等を託すこともしていないのは、このとき作成されたものを最終意思とすることをしなかったということができる。⇒遺言意思を認めなかった判断は相当

判例時報2352

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2018年2月 1日 (木)

分担金を定めた条例の規定の適法性(適法)

津地裁H29.6.22      
 
<事案>
地方公共団体の実施する下水道整備事業に伴う分担金の負担について、その適法性が争われた事案。

Y(三重県名張市)においては、市全域下水道化基本構想の下に、住宅団地の下水道整備を進め、住宅団地の合併浄化槽及び汚水処理施設をYが公共管理することが構想。
Yは、同構想のもと、Xらの居住する区域においては、新設する汚水処理施設に接続することを前提に、既存の汚水処理施設(「本件処理施設」)を公共管理に移管し、本件処理施設を耐用年数が過ぎた後に撤去するという事業(「本件事業」)を実施することにし、地自法224条、228条1項に基づき名張市住宅地汚水処理施設分担金条例(「本件条例」)を定め、同条例に基づき、同事業の分担金を同区域の住民に賦課。

Xらは、同分担金の賦課決定を受けたため、本件各処分が違法であると主張して、その取消しを求めた。
 
<争点>
本件各処分が分担金(=地方公共団体が行う特定の事件に要する経費に充てるため、その事件に特別の関係のある者に対して課する金銭)について定めた地自法224条に違反するか否か。 
 
<規定>
地自法 第224条(分担金)
普通地方公共団体は、政令で定める場合を除くほか、数人又は普通地方公共団体の一部に対し利益のある事件に関し、その必要な費用に充てるため、当該事件により特に利益を受ける者から、その受益の限度において、分担金を徴収することができる。
 
<判断>
●地自法224条に反して違法であるとは認められない⇒請求棄却。

●地自法224条の解釈 
同条の「利益」とは、必ずしも金銭に見積もり得る経済的利益に限らず、当該事業により生じる利便性や快適性といった生活上の利益を含む

分担金が同条の「受益の限度」を越えないものか否かは、事業の性質、必要性、事業費、受益の性質及び程度等を考慮して衡平の観点から社会通念に基づき判断されるべきであり、
受益の限度を越えない範囲について、どのような算定方法を採るかは、普通地方公共団体の合理的な裁量に委ねられている


①本件事業は、Xらが居住する区域の住民が、安定的に下水道サービスを受ける上で、重要な施策であって、合理性を有するもので、Xらは、本件事業により、他の住民ないし土地所有者には利益のない本件処理施設による汚水処理の利便性の向上及び資産価値の増加といった「利益」を受ける
②本件事業に係る分担金も事業費総額の約5.8%に止まるものであり、その割合がXら住民にとって課題な負担とまではいえず分担金の算定方法に関しても、Yに認められた合理的裁量の範囲を逸脱するものではない

事業の必要性、受益の重要性及び分担金が合理的に算定されていることを総合すると、本件条例による分担金の定めは、地自法224条に反して違法であるとは認められない。 
 
<解説>
①特定の事件に関し特に利益を受けるものから徴収される者である点、
②報償的性格を有する点
③一般収入ではなく当該事件の費用に充てるため徴収される点
等で分担金と税は異なる。 

公共下水道事業のように、市町村が、都道府県知事の認可を受けて施行する事業(都市計画法59条1項)においては、同法75条1項が、都市計画事業によって著しく利益を受ける者がある場合における受益者負担金について規定。
but
本件事業は、都道府県知事の認可を受けて施行された事業ではなかった⇒地自法224条に基づいて実施。

判例時報2352

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